第8話

「腕を見てもいいか?」

 サウレさんが聞いてくる。俺はぱちくりと瞬きしてから、腕をサウレさんに見せた。

「なんで?」

「左の二の腕だ」

 サウレさんは左右の腕を確かめてから、俺の左の二の腕を凝視して、つぶやいた。

「封印の紋章がある」

「……ああ、それは」

 普段気に掛けないが、そう言えばと思い出す。

「俺がシュドムで、力を押さえられないといけないからって、エルドが少しだけ力を封印するって……」

「エルドというのは封印師でもあるのか?」

「あんま使わないけど、俺が魔術の練習中に威力が強かったとき封印の力も使ってたから、封印師でもあるんじゃない?」

「魔術師であり、封印師でもあるのか? ───それがただのこんな辺境な場所にいる魔術師か?」

「───それは」

 確かに魔術師であり、封印師なのは珍しい───。

 無名な魔術師ではあり得ない───。

 ───むくり、と疑惑が沸き起こる。

 いや、でも……。

「お前の封印は、まだ来ていない《変革期》の力を押さえるためで、力の暴発を防ぐためにこんな田舎にいるんじゃないか?」

「……………………」

 いや───違う、と思う。

 そんな作為的なやつじゃないのだ、エルドは───。

 そう思う反面サウレさんの言うことも否定できない。

 今まで不思議だったが、エルドはなんで俺と一緒に暮らしてきたのだろう……。

「───やはりエルドというのは、シュドムを滅ぼした魔術軍団長なんじゃないのか」

「……………………」

 サウレの言葉に、でも、と思う。

「ならなんでシュドムである俺を育ててきたのか……」

「お前の《変革期》の力を押さえられないからじゃないのか?」

「………………」

 俺は押し黙った。

 そうなのか……?

 いや、でも……。

 なんかぐるぐるしていると、横で大人しくしていたバンザが急に振り返って身を低くして警戒の体勢を取った。

「バンザ?」

 俺がどうしたんだろうとバンザを見ると、サウレさんも剣を抜いてバンザが見ている方向に身構えた。

「……なに?」

 なんなの? と思っていると頭上に影が出来た。

「っ!」

 ───魔獣だ。大型の……。

 翼が骨張った、爬虫類めいた大型の魔獣───。

 お腹に属性を表す紋様が浮かんでいる。


 ───封印の紋章……。


「……え?」

 珍しい魔獣───。

 そしてそんな魔獣がいることをさっき聞いたばかりだ───。

「なんでっ!」

 サウレさんが怒鳴った。

「なんでお前がその魔獣を手懐けてるんだっ! 

 ───ディアス=ルシャール!」

 魔獣にエルドが騎乗していた。

 だが、サウレさんは別の名前でエルドを呼ぶ。

「………………」

 俺は呆然とエルドを見上げた───。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔術師と封印師 @mitikotora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ