第31話 副団長の元に魔王来たる
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「……謝る!!」
魔王は玉座の上で立ち上がり、バサァッと外套を翻した。
その顔は決意に満ち、闇をまとったカリスマ――……のはずが。
「今すぐ人間界に行って、手土産持って、土下座して謝る!!! 今ならまだ間に合う!!」
――幹部たちの目には、ただのパニック親父にしか見えなかった。
「ま、魔王様ァァァァァァァ!!!」
「おやめくださいいいいいいい!!!!」
「プライドは!? 誇りは!? 魔族の未来はァァァ!!」
幹部たちが一斉に立ち上がり、玉座にしがみつく魔王を必死に押さえる。
「離せ!! 我は行く!! 命が惜しいんだよ!!」
「おちついてええええ!!!」
「そんなことしたら魔界の威信がァァァァ!!」
「威信より命ぃぃぃぃぃ!!!」
魔王の絶叫が洞窟に響き渡る。
その声は、地獄の叫びというより、ただの必死なオッサンであった。
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「で、でも魔王様……仮に、謝罪に行ったとして……」
「うむ、言え」
「……どうやって謝るんです?」
「え?」
魔王の動きが止まった。
「いや、え? 謝るって……普通に頭を下げて、『ごめんなさい』って言うだろ」
「いやいやいや!! 魔王様が!? あの、世界の頂点に立つ御方が!? 『ごめんなさい』!?!?」
「何が悪い!? 命が助かるなら、我は犬にだってなる!!」
「そんなこと軽々しく言うなぁぁぁぁ!!!」
幹部たちの悲鳴。
一方、魔王はもうノリノリである。
「よし、では謝罪の練習をする!!」
「練習!?」
「うむ、我が全力で誠意を見せる姿勢を確認せねばなるまい!」
魔王は玉座から飛び降り、ドォォン!と音を立てて膝を床についた。
周囲の魔族たちが「うわっ」と声を上げる。
「いくぞ!! レオン殿、お許しくださいませええええ!!!!」
――ガバァァァァァ!!!!
魔王、土下座。
その衝撃で床にクレーターができた。
「やめてぇぇぇぇ!!! 床が死んだぁぁぁぁ!!!」
「威厳どこいったんですか威厳んんん!!!」
「魔界のトップが膝擦りむいてるのおおおお!!」
魔王はなおも頭を地面にめり込ませながら叫ぶ。
「許してください! あの時のことは全部夢です!! 我はもう世界征服とか興味ありません!!」
「どこの小物だよおおおお!!!!」
---
「よし、形だけの謝罪ではダメだ。手土産だ、手土産が必要だ」
「いやもうやめてくれええええ!!!」
「何が良い!? 宝か!? 金か!? 我の右腕か!? いや、右腕だけで済むか!? 両腕か!?」
「切るなああああああああ!!!!」
「心臓もいるか!? あいつ、心臓好きそうな顔してただろ!!」
「どんな顔だよ!!!」
幹部たちが総ツッコミする中、魔王は真剣そのものだった。
「……いや、やはり菓子折りだな」
「お菓子!?」
「うむ、人間界では“手土産といえば菓子折り”と聞いた!!」
「どこ情報だそれぇぇぇぇぇ!!!」
---
幹部たちは必死に説得する。
「おやめください! そんなことをすれば魔族は笑い者です!!」
「笑い者でも生き残れるなら本望だろうがぁぁぁぁ!!!!」
魔王は完全に壊れていた。
次の瞬間――
「もう待てん!! 行くぞ!!!」
――ドゴォォォォォォォォン!!!
魔力が爆ぜ、巨大な転移陣が発動する。
幹部たちが吹き飛ばされる。
「止めろおおおおお!!!」
「無駄だ!! 我を止められると思うな!!」
「プライドは!? 誇りは!? 魔族の未来はァァァ!!!」
「プライドより命ぃぃぃぃぃ!!!!」
その叫びと共に、魔王の身体が光に包まれた。
――――
――そして次の瞬間、空気が変わった。
石畳、白壁、賑やかな声。
王都の大通り。
魔王は黒衣を翻し、ズシィィィンと地面に降り立った。
その圧倒的な威圧感に、周囲の人間たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。
「おおお……これが……人間界の……匂い……」
魔王は深呼吸し、ゴクリと唾を飲む。
そして――
「……よし、行くか」
王城へ向けて、堂々と歩き出した。
背後では、取り残された幹部たちが地面を這いながら叫んでいる。
「魔王様あああああ!! 戻ってきてええええええ!!!」
――こうして、“史上最強にして最小の外交作戦”が幕を開けた。
――王都の中心、大理石のように輝く城門前。
二人の衛兵が、のんきに世間話をしていた。
「いやぁ、今日も平和だなぁ」
「ほんとだな。こんな日が毎日続けばなぁ――」
――ズゥゥゥゥゥゥゥン……!!
地響き。
重く淀んだ“圧”が街を覆う。
衛兵たちは凍りついた。
「な、なに……この気配……」
「お、王……? いや、そんなレベルじゃ……」
視線の先に現れたのは、漆黒の外套を纏い、背に闇の翼を広げた男。
魔王であった。
彼は堂々と城門の前に立ち――
「…………」
(……笑え。我は外交に来たのだ。笑え。威厳は一旦しまえ。笑顔……そう、笑顔だ)
魔王は口角を引き上げた。
――ギギギギギギ……ッ!!
笑顔というより、顎が外れそうな不気味スマイルになった。
(ひぃぃぃ!! 何その顔!!!)
(絶対、殺しに来てる笑顔だろあれえええ!!)
「……レオン・アーディル様はいらっしゃいますでしょうか?」
――声、めちゃくちゃ低い。地獄の底から響いてくるやつ。
「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」
「ちょっ、ちょっと待ってください!! どちら様ですか!?」
(どちら様……!? 名乗れというのか!? 我が正体を……!?)
(いやダメだ、正直に言えば確実に戦争だ……!)
魔王は必死に考えた。
――数秒後。
「……旅の者です」
「嘘つけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「そのオーラで“旅の者”は無理あるだろおおおお!!!」
「いや、本当にただの旅人だ。我は……平和を愛する者である」
――ドゴォォォォォォォォォン!!!(無意識に放った闇のオーラで地面が陥没)
「どの口が言ってんだよおおおお!!!!」
「地面壊してるやつが平和愛すなああああ!!!」
---
「なに、とにかくレオン殿に用があるのだ。通せ」
「無理無理無理ィィィィ!!」
「ていうかお前、絶対魔族だろ!? 魔王か!? 魔王だろ!!」
「ち、違う! 魔王ではない!」
「その羽と角とオーラで誰が信じるかああああ!!!」
(まずい……完全に疑われている……! いや、そりゃそうだが!)
魔王は焦った。
そして――
「……頼む。我、どうしてもレオン殿に謝らねばならんのだ」
「謝る!? え!? 魔族が謝る!? 何それ!?」
「ていうかあんた、なんでそんな必死なの!?」
「我、命が惜しい!!」
「本音すぎるぅぅぅぅぅ!!!!」
---
そこに――
「な、何の騒ぎだ!」
騎士が駆けつける。
「何事だ!」
「し、城門前に……とんでもないやつが……!!」
騎士の視線が魔王を捉えた瞬間。
――空気が凍った。
「…………魔族……!?」
「ち、違う! 我は平和を愛する者だ!」
――ドゴォォォォォン!!!!
「どこがだあああああああ!!!」
---
魔王はついに両手を合わせ、頭を下げた。
「頼む!! レオン殿に会わせてくれ!! 我は謝りたいのだ!!」
――その瞬間。
衛兵たちと騎士の脳内に同じ言葉が浮かんだ。
(何この魔王、めちゃくちゃ必死……!?)
――そして次の瞬間、王都の鐘が鳴り響く。
「緊急警戒!! 魔王らしき存在、王城前に現る!!」
「は、はああああああああああ!?!?」
――事態は最悪の方向へ転がり始めた。
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