第31話 副団長の元に魔王来たる

本当にたくさんのフォローと♡ありがとうございます!このままランキング上位に行けるように頑張ってまいります!応援してくれる方!★などいただけたら泣いて喜びます。今後ともどうぞよろしくお願いします。次の話ですが、作者の仕事の都合で明日夜10時頃公開となります。

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「……謝る!!」


魔王は玉座の上で立ち上がり、バサァッと外套を翻した。

その顔は決意に満ち、闇をまとったカリスマ――……のはずが。


「今すぐ人間界に行って、手土産持って、土下座して謝る!!! 今ならまだ間に合う!!」


――幹部たちの目には、ただのパニック親父にしか見えなかった。


「ま、魔王様ァァァァァァァ!!!」

「おやめくださいいいいいいい!!!!」

「プライドは!? 誇りは!? 魔族の未来はァァァ!!」


幹部たちが一斉に立ち上がり、玉座にしがみつく魔王を必死に押さえる。


「離せ!! 我は行く!! 命が惜しいんだよ!!」

「おちついてええええ!!!」

「そんなことしたら魔界の威信がァァァァ!!」

「威信より命ぃぃぃぃぃ!!!」


魔王の絶叫が洞窟に響き渡る。

その声は、地獄の叫びというより、ただの必死なオッサンであった。



---


「で、でも魔王様……仮に、謝罪に行ったとして……」

「うむ、言え」

「……どうやって謝るんです?」

「え?」


魔王の動きが止まった。


「いや、え? 謝るって……普通に頭を下げて、『ごめんなさい』って言うだろ」

「いやいやいや!! 魔王様が!? あの、世界の頂点に立つ御方が!? 『ごめんなさい』!?!?」

「何が悪い!? 命が助かるなら、我は犬にだってなる!!」

「そんなこと軽々しく言うなぁぁぁぁ!!!」


幹部たちの悲鳴。

一方、魔王はもうノリノリである。


「よし、では謝罪の練習をする!!」

「練習!?」

「うむ、我が全力で誠意を見せる姿勢を確認せねばなるまい!」


 魔王は玉座から飛び降り、ドォォン!と音を立てて膝を床についた。

周囲の魔族たちが「うわっ」と声を上げる。


「いくぞ!! レオン殿、お許しくださいませええええ!!!!」

――ガバァァァァァ!!!!


魔王、土下座。

その衝撃で床にクレーターができた。


「やめてぇぇぇぇ!!! 床が死んだぁぁぁぁ!!!」

「威厳どこいったんですか威厳んんん!!!」

「魔界のトップが膝擦りむいてるのおおおお!!」


魔王はなおも頭を地面にめり込ませながら叫ぶ。

「許してください! あの時のことは全部夢です!! 我はもう世界征服とか興味ありません!!」


「どこの小物だよおおおお!!!!」



---

「よし、形だけの謝罪ではダメだ。手土産だ、手土産が必要だ」

「いやもうやめてくれええええ!!!」

「何が良い!? 宝か!? 金か!? 我の右腕か!? いや、右腕だけで済むか!? 両腕か!?」

「切るなああああああああ!!!!」

「心臓もいるか!? あいつ、心臓好きそうな顔してただろ!!」

「どんな顔だよ!!!」


幹部たちが総ツッコミする中、魔王は真剣そのものだった。


「……いや、やはり菓子折りだな」

「お菓子!?」

「うむ、人間界では“手土産といえば菓子折り”と聞いた!!」

「どこ情報だそれぇぇぇぇぇ!!!」



---


 幹部たちは必死に説得する。

「おやめください! そんなことをすれば魔族は笑い者です!!」

「笑い者でも生き残れるなら本望だろうがぁぁぁぁ!!!!」


魔王は完全に壊れていた。

次の瞬間――


「もう待てん!! 行くぞ!!!」

――ドゴォォォォォォォォン!!!


魔力が爆ぜ、巨大な転移陣が発動する。

幹部たちが吹き飛ばされる。


「止めろおおおおお!!!」

「無駄だ!! 我を止められると思うな!!」

「プライドは!? 誇りは!? 魔族の未来はァァァ!!!」

「プライドより命ぃぃぃぃぃ!!!!」


その叫びと共に、魔王の身体が光に包まれた。


――――

 

――そして次の瞬間、空気が変わった。

石畳、白壁、賑やかな声。

王都の大通り。


魔王は黒衣を翻し、ズシィィィンと地面に降り立った。

その圧倒的な威圧感に、周囲の人間たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。


「おおお……これが……人間界の……匂い……」

魔王は深呼吸し、ゴクリと唾を飲む。

そして――


「……よし、行くか」


王城へ向けて、堂々と歩き出した。

背後では、取り残された幹部たちが地面を這いながら叫んでいる。


「魔王様あああああ!! 戻ってきてええええええ!!!」


――こうして、“史上最強にして最小の外交作戦”が幕を開けた。


 ――王都の中心、大理石のように輝く城門前。

二人の衛兵が、のんきに世間話をしていた。


「いやぁ、今日も平和だなぁ」

「ほんとだな。こんな日が毎日続けばなぁ――」


――ズゥゥゥゥゥゥゥン……!!


地響き。

重く淀んだ“圧”が街を覆う。

衛兵たちは凍りついた。


「な、なに……この気配……」

「お、王……? いや、そんなレベルじゃ……」


視線の先に現れたのは、漆黒の外套を纏い、背に闇の翼を広げた男。

魔王であった。


彼は堂々と城門の前に立ち――


「…………」


(……笑え。我は外交に来たのだ。笑え。威厳は一旦しまえ。笑顔……そう、笑顔だ)


魔王は口角を引き上げた。

――ギギギギギギ……ッ!!

笑顔というより、顎が外れそうな不気味スマイルになった。


(ひぃぃぃ!! 何その顔!!!)

(絶対、殺しに来てる笑顔だろあれえええ!!)


「……レオン・アーディル様はいらっしゃいますでしょうか?」

――声、めちゃくちゃ低い。地獄の底から響いてくるやつ。


「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」

「ちょっ、ちょっと待ってください!! どちら様ですか!?」


(どちら様……!? 名乗れというのか!? 我が正体を……!?)

(いやダメだ、正直に言えば確実に戦争だ……!)


魔王は必死に考えた。

――数秒後。


「……旅の者です」

 「嘘つけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「そのオーラで“旅の者”は無理あるだろおおおお!!!」


「いや、本当にただの旅人だ。我は……平和を愛する者である」

――ドゴォォォォォォォォォン!!!(無意識に放った闇のオーラで地面が陥没)


「どの口が言ってんだよおおおお!!!!」

「地面壊してるやつが平和愛すなああああ!!!」



---


「なに、とにかくレオン殿に用があるのだ。通せ」

「無理無理無理ィィィィ!!」

「ていうかお前、絶対魔族だろ!? 魔王か!? 魔王だろ!!」

「ち、違う! 魔王ではない!」

「その羽と角とオーラで誰が信じるかああああ!!!」


(まずい……完全に疑われている……! いや、そりゃそうだが!)


魔王は焦った。

そして――


「……頼む。我、どうしてもレオン殿に謝らねばならんのだ」

 「謝る!? え!? 魔族が謝る!? 何それ!?」

「ていうかあんた、なんでそんな必死なの!?」


「我、命が惜しい!!」

「本音すぎるぅぅぅぅぅ!!!!」



---

そこに――

「な、何の騒ぎだ!」

騎士が駆けつける。


「何事だ!」

「し、城門前に……とんでもないやつが……!!」


騎士の視線が魔王を捉えた瞬間。

――空気が凍った。


「…………魔族……!?」

「ち、違う! 我は平和を愛する者だ!」

――ドゴォォォォォン!!!!


「どこがだあああああああ!!!」



---


魔王はついに両手を合わせ、頭を下げた。

「頼む!! レオン殿に会わせてくれ!! 我は謝りたいのだ!!」


――その瞬間。

衛兵たちと騎士の脳内に同じ言葉が浮かんだ。


(何この魔王、めちゃくちゃ必死……!?)


――そして次の瞬間、王都の鐘が鳴り響く。

「緊急警戒!! 魔王らしき存在、王城前に現る!!」

「は、はああああああああああ!?!?」


――事態は最悪の方向へ転がり始めた。

 

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