【ルール】納得のあるルールは守られる

晋子(しんこ)@思想家・哲学者

ダメなものはダメ、では伝わらない

ルールは人を守るために存在する。そう教わるし、実際、多くのルールにはその役割がある。たとえば、未成年がお酒を飲んではいけないというルール。これは決して大人が子どもを抑圧するためのものではない。体の発達が未熟なうちにアルコールを摂取すると、健康を害したり、依存症に陥ったりする危険がある。そのため、社会はルールという形で「未成年の君たちを守っている」のだ。しかし、現実には未成年がルールを破って酒を飲むことがある。わざわざ身を守るためのルールを、自ら破ってしまう。そこに矛盾があるように思える。


なぜ、人は守られているにもかかわらず、それを破りたくなるのだろうか。それは、ルールというものが「恩恵」としてではなく「束縛」として感じられるとき、人はそれに反発するからだ。特に若者は、「自由」を強く求める。自分で選びたい、自分で決めたい、そして自分の人生を自分の手でコントロールしたい。そこに、「未成年はダメ」と一律で禁止されると、「自分を信じてもらっていない」「子ども扱いされている」と感じる。守られているのではなく、管理されていると感じた瞬間、そのルールは「ありがたいもの」から「邪魔なもの」に変わってしまう。


一方で、保険制度や交通ルールのように、自分が明らかに「得をしている」「助かっている」と感じられるルールに対して、人はあまり反発しない。病気になったときに医療費が安く済む。事故にあったときに補償が受けられる。これらは目に見える形で「守ってくれている」と実感できる。だから、誰も「保険に入るのはうざい」なんて言わないし、むしろ進んで活用しようとする。ルールに従うことが「損」ではなく「得」と感じられる場合、人は自然とそのルールを守る。


つまり、人がルールを守るかどうかは、そのルールが「自分を守ってくれている」と実感できるかどうかにかかっている。どんなに善意から作られたルールでも、それが上から目線で与えられると、人は反発する。逆に、どんなに厳しくても、「これがあるから安心できる」「守られている」と感じられれば、人はそのルールを大切にする。問題はルールそのものではなく、その伝え方と受け取り方にある。


だからこそ、ルールを作る側、守らせる側は、「なぜこのルールがあるのか」「どのように君たちを守っているのか」を丁寧に伝えなければならない。ただ「ダメだからダメ」ではなく、「これを守れば、こういう未来が待っている」と希望を語ることが必要なのだ。納得のないルールは、どんなに正しくても破られる。納得のあるルールは、たとえ面倒でも守られる。


ルールを守らせるために必要なのは、力ではない。理解と共感である。子どもであっても、大人であっても、自分にとって意味のあるルールなら、ちゃんと守ろうとする。ルールを破るのは、ルールに反発しているのではなく、自分を理解してくれない社会に対して、無言の抵抗をしているだけなのかもしれない。


だから、ルールを作るときは、ただ「正しさ」を押しつけるのではなく、「誰をどう守りたいのか」「なぜ必要なのか」を言葉にしよう。その言葉が伝わったとき、ルールは束縛ではなく、信頼のしるしになる。人は信頼されていると感じたとき、初めて自分からルールを守るようになる。守ってあげる、ではなく、一緒に守っていく。それが、本当に人を守るルールの姿ではないだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【ルール】納得のあるルールは守られる 晋子(しんこ)@思想家・哲学者 @shinko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ