子育てをしながら主婦として一家を支える夏目さんは、筋金入りの万博ファン。大学時代の卒論テーマが『万博とジャポニズム』だったというから驚きです。そんな彼女が大阪・関西万博でボランティアとして働いた5日間の思い出を綴ったエッセイです。
ボランティアの視点からみた、来場客には明かされない万博の舞台裏が面白いです。
会場案内に立てば外国人も含めて多くの人に囲まれ、質問攻めで大忙し。逆に迷子センターでは仕事がなく、ずっと立ちっぱなし。毎日大屋根リングを東奔西走。シフトを終えて夕方になると一気にクタクタに。夜空を彩るドローンショーを見上げて帰路に着く──そんな非日常な体験が胸躍るのです。
毎日異なる場所に配属されて戸惑いや驚きもありながら、外国人観光客と写真を撮ったり、学生ボランティアとおしゃべりしたり、小さな触れ合いが温かく心に残るんですよ。
休憩時間には友人と海外のパビリオンを巡ったり、巨大なガンダムやミャクミャク像を眺め、キッチンカーの名物料理を味わう。働きながらも万博を楽しむ姿に、「こんな楽しみ方もあるんだ」と新しい発見をもらえます。
万博に行った人も、まだこれからの人も楽しめる体験記でした。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)