第8話『お家デート?②』

 お姫様がまだ続けると言うので、俺はそれに従って同じクエストを受注する。

 諦めが悪いのか負けず嫌いなのか、どちらにせよ俺の選択肢は『YES』しかない。


「ふー…。ホント暑いわねこの部屋」


 Yシャツをパタパタさせながら藍田萌香は呟く。

 気温のせいではあるが、多分ゲームに夢中だったから身体が火照ったのだと思う。

 それだけ真剣にプレイして、この結果とは……。何も言わないでおこう。


「あっつ……パチッ」

「!?」


 おいおいおい。暑いからってそれは流石にヤバいって。

 藍田萌香はいきなり、Yシャツの第一から第三までボタンを開けた。

 

「ちょっ! 早く隠せって!」

「隠すって、なにを?」

「だからそれは──」

「クエスト始まるわよ。ほら、コントローラー握って」


 あかん。マジであかん。

 男子なら第三まで開けても問題ないが、女子は違う。

 女子が開けることによって、塩分を含んだ水滴が終着する場所、すなわち『黄金の隙間』がもろに見えしてしまう。

 それにこの女の果実はかなり実っているで、黄金の隙間も一級品である。


「さあ、倒すわよ」

 

 なんでそんな平然といられるんだよ。俺はめちゃくちゃ気ますいんですけど!

 そのあと俺は横を見ないよう顔面を固定し、目が真っ赤になるぐらいゲームに集中した。



    ☆☆☆



 それから俺たちは3回も挑み、計7回のチャレンジで低難易度のボスを討伐できた。センスがないとはいえ、成長したのは確かだ。

 だが残念なことに、俺は1乙してしまった。

 普段んならあり得ないことだが、今回は状況が違う。


 眼球から血が噴き出すほどモニターを見つめていたが、頭では理性と欲望が領土争いを繰り広げていたので、全くゲームに集中できなかった。


「見て、倒せた! やっと倒せたわ!」

「良かったな」

「うんっ!」


 お姫様は笑顔を見せる。

 時間が掛かったものの、本人がとても喜んでいるので付き合った甲斐があったな。

 は〜疲れた疲れた。まさか女子を家に呼ぶだけで体力が80%も削られるとは。今日は少し早めに寝るか。


 時刻は午後6時前。

 母さんがもうじき帰って来る頃なので、俺はお姫様は家に帰す。


「忘れものねえか?」

「ええ、大丈夫よ」


 1階に降り、帰りを見送る。


「今日はありがとう。良い息抜きになったわ」

「せっかくのオフに、俺の家なんかに来て良かったもかよ」

「他に行くとこもないし、それに楽しかったから良いのよ」

「そうか……」


 まさかこの俺が学校一の美少女、白銀の氷姫を楽しませれたとは。

 やっぱり俺、ナイスガイなのか?


「それじゃあまた学校でね」

「おう」

「時間がある日、またお家にお邪魔するわ」

「え、それはちょっと……」

「なによ、ダメなの?」

「ダメではねえけど……」

「なら良いじゃない」

「へいへい」


 正直疲れるから、来るのはこれっきりにしてほしのだが……。

 挨拶を終え、藍田萌香は玄関のドアを開けて帰宅した。


 ……なんていうか、色々驚かされたな。

 隠しているはずなのに普通に本性を見せてるし、露出するのも全然躊躇しねえし、会話も結構フレンドリーで慣れ慣れしい。まるで友達みたいだった。

 ギャップというのは、人によってふり幅が凄いんだな。

 これでアイツのことがまた一つ分かった気がする。



   ☆☆☆



 外に出た藍田は、カチッと鳴るまで水城家のドアをゆっくり閉めた。

 やがて閉め終わり、帰路に就く。


「意外と器が大きいのね、水城君……」


 藍田はそうボソッと呟く。

 ゲームをプレイしている時、藍田は考えていた。申し訳ないと。

 急に押しかけ、宿主を置いて猫と戯れ、挙句の果てにゲームをしたいと我がままを言ってしまったこと。


 そんなことをされれば誰だって困惑し、鬱陶しがるはず。

 だが水城は嫌な顔一つせず、自分の我がままに付き合ってくれた。水城自身がやりたいことを置いてまで……。

 

 藍田は今日、人生で初めて嫌悪感を抱かない男子に出会ったのであった。


「次はいつ行こうかしら」

『ヒュー…』


 自宅のドアを開けると、肌寒い夜風が吹く。

 中に入り、玄関で靴を脱ぐ。


「さむっ……早くお風呂に──!?」


 ふと、藍田は姿見を見る。

 そこには、雪のような真っ白な生足と、胸の隙間が見えている自分が映っていた。


「私、なにやってるの!?」


 藍田は我に返る。

 男子の部屋で、なぜあんな行動をしたのか。

 記憶が蘇った藍田はその場で身体を丸め、真っ赤な顔を両手で隠し、自分の行動に反省した。



 

 

 

 

 

 

  

 


 










 

 


 

 

 

 

 

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