第31話:星晶を求めて、アルネアの決意

夕暮れの研究所で、アルネアは小さな前足をぎゅっと握りしめ、サリウスの前にぴょんと跳び出した。


「キューッ!(サリウス!相談があるの!)」


「……む?どうしました、アルネア。」


「キュキュキュー!(人型になりたいの!カノンと……その、結婚とか……)」


「……は? け、結婚……?」


サリウスの目がぱちぱちと瞬く。


俺も横で思わず吹き出しそうになったが、アルネアの真剣な目を見て、ぐっとこらえた。


「……お、おう?サリウス、伝承とかに……ないのか、そういうの。」


「……いや……ない、とは言い切れません。困りましたね……」


サリウスは棚から分厚い本を何冊も引っ張り出し、ぱらぱらとめくる。


「……あった……これです。」


ページに描かれていたのは、かつて星を宿したモンスターが人型に姿を変えたとされる古代の伝承。


『魂が満ちし時、星晶を抱き、真名と共に祈ることで、モンスターは人の姿を得る』


「……星晶……?」


「星片の塊、伝説の中では“星晶”と呼ばれています。

真名解放のさらに先……魂の器を変える力を秘めているとか。」


「キューッ!(じゃあ、それを探せばいいのね!)」


「お、おいおい、そんな簡単に――」


「キューッ!!(探す!ぜったい見つける!)」


アルネアは目を輝かせ、尾を揺らした。



---


翌日から、アルネアの“人型進化計画”が始まった。


俺たちが遺跡や古文書を調べ、サリウスが魔術式を検証し、ディルとニールも訓練相手として協力する。


「キューーーッ!(もっと強くなるの!)」


「お、おう……アルネア、動きが早すぎ……!」


「グォォ!(こっちだ!)」


ヴァルがアルネアと模擬戦を繰り広げ、フェリアが補助魔法で支援する。


「キュッ!(ありがと!)」


ディルが笑う。


「やるじゃん、アルネア。人型になる日も近いんじゃないか?」


ニールも肩をすくめる。


「そのときはカノン、覚悟決めとけよ?」


「やめろよ……俺はまだ……いや、俺も……がんばるか……。」



---


ある夜、サリウスがふと呟いた。


「星晶……かつてこの地方では、山脈の奥、星の落ちた跡地で見つかると伝わっています。しかし危険な場所です……」


「キュー……!(行く!)」


「……わかった。俺たちも行くさ。」

俺はアルネアの頭をそっと撫でる。


「キュッ……(約束だよ、カノン……)」


「約束だ。」


風が夜の草原を吹き抜け、遠くで村の灯りが揺れていた。


アルネアの星晶探し――今、始まる。

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