登場人物(第一巻)とあらすじ


アキレウス (Achilles)

ペレウスの子、アカイア軍最強の英雄。物語の中心人物で、怒りが物語を駆動する。アガメムノンに捕虜ブリセイスを奪われ、戦いから撤退を宣言。母テティスにゼウスへの介入を依頼し、名誉の回復を求める。激しい感情と高潔な誇りが強調され、戦争の運命を左右する存在。


アガメムノン (Agamemnon)

アトレウスの子、アカイア軍の総大将。傲慢な指導者として、クリュセスの懇願を拒み、アポロンの疫病を招く。クリュセイスを返還する代わりにアキレウスのブリセイスを奪い、対立を深める。権力と欲が性格を形作り、軍の危機を招く。


クリュセス (Chryses)

アポロンの祭司。娘クリュセイスを解放すべく身代金と神の笏を持ってアカイア軍に懇願するが、アガメムノンに侮辱される。アポロンに祈り、疫病を招く。悲しむ父としての姿と神への信仰が強調される。


クリュセイス (Chryseis)

クリュセスの娘、アガメムノンの捕虜。物語の火種として登場し、解放のために父が奔走。アガメムノンの返還命令でクリュセに送られるが、台詞や行動はなく、名誉を巡る争いの象徴。


カルカス (Calchas)

テストルの子、アカイア軍の予言者。過去・現在・未来を見通し、アポロンの疫病の原因をクリュセスの侮辱と指摘。アキレウスの保護下で真実を語り、アガメムノンの怒りを買う。賢明さと勇気が描かれる。


パトロクロス (Patroclus)

メノイティオスの子、アキレウスの親友。アキレウスの天幕で彼を支え、ブリセイスをアガメムノンの使者に渡す。台詞は少ないが、忠誠心と友情が示唆される。


ネストル (Nestor)

ピュロスの王、老練な指導者。滑らかな弁舌でアキレウスとアガメムノンの争いを仲裁しようとするが失敗。過去の英雄との交流を語り、調和と知恵を象徴する。


オデュッセウス (Odysseus)

イタカの王、知略に優れた英雄。クリュセイスをクリュセに送る船の指揮官として登場。直接の台詞は少ないが、冷静な行動力でアガメムノンの命令を遂行。


タルテュビオス (Talthybius)

アガメムノンの使者。アキレウスの天幕にブリセイスを奪うためにエウリュバテスと共に行く。恐れと敬意を持ち、任務を遂行するが台詞はない。


エウリュバテス (Eurybates)

アガメムノンの使者。タルテュビオスと共にブリセイスを奪う任務に就く。アキレウスに敬意を示すが、台詞や個別の行動は描かれない。


テティス (Thetis)

海の女神、アキレウスの母。息子の懇願を受け、ゼウスにトロイ人の援護を願い出る。オリンポスでゼウスに膝を抱き、哀願する姿が描かれ、母の愛と神聖な力が強調される。


ゼウス (Zeus)

神々の王、雷鳴の主。テティスの願いを聞き、トロイ人を援護すると約束。ヘラとの対立を招き、オリンポスの秩序を保つ。絶対的な権威と神々の調停者としての役割。


ヘラ (Hera)

ゼウスの妻、オリンポスの女王。アカイア軍を支持し、ゼウスのトロイ支援に激しく反対。夫を非難し、神々の対立を引き起こす。嫉妬深さと権力への執着が描かれる。


アテナ (Athena/Minerva)

知恵と戦いの女神。ヘラに促され、アキレウスを抑えてアガメムノンとの直接対決を防ぐ。アキレウスの髪をつかみ、怒りを口で発散させ、将来の報酬を約束。神の介入者として重要。


ヘパイストス (Hephaestus)

鍛冶の神、ヘラとゼウスの子。両親の争いを仲裁し、宴を和ませる。母への愛とユーモラスな振る舞いで神々の緊張を緩和。職人としての役割も示唆される。



ブリセイス (Briseis)

アキレウスの捕虜。アガメムノンが奪うことで争いの原因となる。アキレウスの名誉と感情の象徴だが、台詞や行動はなく、物語の背景として言及。


メネラオス (Menelaus)

アガメムノンの弟、スパルタの王。クリュセスがアトレウスの子らとして言及。アキレウスがヘレネを巡る戦争の動機として彼を挙げるが、直接登場しない。


ヘレネ (Helen)

メネラオスの妻、トロイ戦争の原因。アキレウスがアガメムノンのために戦ったと語るが、登場せず背景として言及。


ポイボス・アポロン (Phoebus Apollo)

銀の弓の神。クリュセスの祈りを受け、アカイア軍に疫病を送る。クリュセイスを巡る争いの引き金となり、物語の展開を左右する神。


レト (Leto)

アポロンの母。クリュセスが祈りで言及。神聖な母として、アポロンの力を背景づける。


クリュテメストラ (Clytemnestra)

アガメムノンの妻。アガメムノンがクリュセイスを彼女と比較し、愛を語る。物語の背景として言及。


プリヤモス (Priam)

トロイの王。クリュセスが彼の都の攻略を祈る際に言及。トロイ軍の指導者として背景に存在。


ピリトオス (Pirithous)

ネストルが語る過去の英雄。ラピタイ族の王で、テセウスらと共に戦ったとされる。


ドリュアス (Dryas)

ネストルが語る過去の英雄。人民の牧者として言及され、ネストルの経験の深さを示す。


カエネウス (Caeneus)

ネストルが語る過去の英雄。ラピタイ族の一人で、神話的な戦士として言及。


エクサディオス (Exadius)

ネストルが語る過去の英雄。詳細は不明だが、ネストルの過去の戦友。


ポリペモス (Polyphemus)

神のごとき英雄。ネストルが語るラピタイ族の戦士で、野蛮部族との戦いに参加。


テセウス (Theseus)

アイゲウスの子、ネストルの戦友。不死者に匹敵する英雄として言及。


アイガイオン (Aegaeon)

テティスが語る百の腕を持つ怪物(ブリャレウス)。ゼウスを救った存在として、テティスの影響力を示す。


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 アカイア軍の総大将アガメムノンと英雄アキレウスの対立が物語の火種となる。アポロンの祭司クリュセスが、捕虜の娘クリュセイスを解放すべく身代金を携えて懇願するが、アガメムノンは彼を侮辱し追い返す。怒ったアポロンが疫病を送り、アカイア軍が苦しむ。予言者カルカスが原因をアポロンの怒りと指摘し、クリュセイスを返すよう進言。アガメムノンは同意するが、代わりにアキレウスの捕虜ブリセイスを奪うと宣言。アキレウスは激怒し、戦いからの撤退を決め、母テティスにゼウスへ介入を頼む。テティスはゼウスにトロイ人の援護を願い、ゼウスは承諾するが、妻ヘラとの対立を招く。ヘラはゼウスを非難し、オリンポスは騒然となる。ヘパイストスが仲裁し、神々の宴が続く。アキレウスの怒りと名誉の喪失が物語の中心となり、神々の介入が戦争を左右する。

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