主従逆転現象~ディエゴとリオンの場合~
※このお話は、リオンとディエゴの不思議な主従関係を、傍から見ているギガン&アマンダ姉さん視点のお話しです。
判る人には判るおふざけネタ満載なので広い心でお読み頂けると幸いです。
(ツ〇ボーイさん好きなんです。ネタに使ってごめんなさい!!)
それでは、少しでも楽しんで頂ければ幸いでございます(*‘∀‘)
――――――――――――――――――
ブラウニーは働き者の妖精である。
家事が得意で美味しい物が好きな妖精という認識で間違いないだろう。
なのでリオンも当然のことながら働き者で美味しい物が好きである。
快適な住環境を整え、身体に良く美味しい料理を作るのが得意だ。
たまによく判らないモノを混入しているようだが、身体に異常がない限りは聞かない方が良いだろう。
アマンダやギガンは実年齢よりも若くなり、テオやチェリッシュは年齢の割に鍛えられすぎているような気もするけれど。
ディエゴに至ってはそんなに変わらないので気にすることでもないが。
何か変わった部分があるとすれば、綺麗好きになったぐらいだろうか? あの面倒臭がりが頻繁に身体を洗うようになった。
リオンが綺麗好きというか、不潔だと近付いてこないからでもあるが。
静かに距離を取るので、地味に傷つくらしい。
よってスプリガンのメンバーは、それを踏まえてみな清潔さを心掛けるようになっていた。
物語でよく聞く『妖精に嫌われたり、居なくなると不幸になる』という話もあるので、長く居て欲しい場合は扱いには十分心掛けなければならない。
基本的に好きなことをさせていていいが、目に余るようであればちゃんと叱らなければならないけれど。その匙加減が難しい。
しかしアマンダの言う事は素直に聞き入れるので、悪戯をした時のお小言担当はアマンダに一任している。
本来ならディエゴが妖精(ブラウニー)と契約した主人であるので、従魔と同じように言い聞かせればいいのだけれど。一緒になってやらかすのだから仕方がない。
今日は屋外での食事をしようと、バーベキューをすることになった。
相変わらず食に煩いリオンは、外食が苦手らしく自ら料理を振る舞ってくれる。
そして野外での食事も、パーティメンバーにリオンが加わったことで随分と豪勢なものが食べれるようになったもんだと改めて思うがしかし。
「おにいちゃん、ひをつけてー」
「了解した」
「そうじゃない」
「……ディエゴ、ファイヤー……だったか?」
「そうそれ」
そうして「ディエゴファイヤー」と言いながら、ディエゴはバーベキュー用の薪へと火を放った。
何が楽しいのか、たまにリオンはおかしな遊びを始める。
言われた通りにその遊びに付き合うディエゴもディエゴなのだけれど。
そんな二人を眺めながら、ギガンがぽつりと呟いた。
「なぁアマンダ」
「なにかしら」
「一応、ディエゴの奴は、リオンの主人だよな?」
「そうねぇ」
目の前でバーベキュー用の薪が赤く爆ぜている。
着火の際、妙な呪文を唱えさせられたディエゴだが、リオンが喜んでいるのでまんざらでもなさそうだ。
「たまに良いように使われているような気がしねぇ?」
「召喚士と従魔の主従関係については、私にはよく判らないわ」
「だけどよぉ、アレって正しいのか?」
リオンが妙な笛を取り出して、ピョロロ~と吹き始めている。
料理には関係なさそうだが、妖精の儀式の一つなのだろうか?
「正しいか正しくないかじゃなくて、お互いが納得していればそれで十分でしょ」
「それもそうなんだがなぁ……」
他の従魔に対してディエゴは命令をするが、リオンに対して命令しているところを見たことがなかった。
むしろ逆にお願い事をされているところしか見たことがない。
リオンがミンチにした肉を「パネパネ」と呪文を唱えながら形を整え、熱くなった鉄板に並べていく。
「主従が逆転してねぇか?」
「……命令はされてないから、そうとも言いきれないわ」
「だがほぼ言い成りじゃねぇか?」
「甘やかしてるんじゃない?」
私たちだって似たようなものでしょうと、アマンダは呆れたように溜息を吐いた。
「まぁリオンを見てるとたまに思うんだけど。妖精って猫みたいなものなのかもしれないわ」
「猫?」
「可愛いからつい甘やかしちゃうじゃない」
「……そうか?」
猫についてよく判らないギガンは、考え込むように暫し悩んだ。
「自由奔放で思った通りに出来ないのが玉に瑕だけど、それでも良いと思えてしまう存在って意味でね」
愛くるしい姿でそこに居るだけで和むし見ているだけで幸せになるが、気紛れで予測不能な行動をするし、悪戯好きで遊んでいても飽きるとどこかへ行ってしまうなど、飼い主を困らせる存在――――それがアマンダの知る猫のイメージである。
妖精も似たようなもので、リオンは予測不能な行動を取るし、遊んでいるかと思えば役に立つようなこともしていて、叱るタイミングがはかれないことがよくあった。
「リオンは猫じゃねぇぞ?」
「似たようなものでしょ。嫌われないように気を付けなきゃいけないって思わされている時点で」
「そりゃそうだが……」
リオンが酒の入ったボトルを取り出し、「ゴォエェファイヤー!」と、またもやおかしな呪文を唱えながらフランベしていた。
その立ち上る炎を見て、テオやチェリッシュがやんややんやと拍手をしている。
「なんつーか妖精ってやつは、繊細な生き物っていうイメージだったが、リオンを見てると考えを改めさせられるな……」
警戒心が強く人見知りだから気弱かと思えば平気で虫を掴むし、料理の仕方も時に豪快である。
「可愛い顔してヘビを捕まえてくるそうよ」
「……なにが?」
「猫よ」
「そ、そうか」
リオンがヘビを捕まえてきたことがあったのかと思えば猫の話だった。
「まぁ、似たようなことを仕出かすけどね」
「……誰が?」
「リオンよ」
「そ、そうか」
言われてみれば似たような行動をしている気がした。驚かせるという意味で。
「ソォルツ! くさども!」
鉄板の上でジュージューと香ばしく焼けるハンバーグに、リオンがおかしな呪文を唱えつつ調味料を振りかけている。楽しそうで何よりだ。
そして鉄板の空いたスペースでは、付け合わせの野菜を焼かされているディエゴの姿があった。
「アレはアレで、見ていて面白くていいわよね」
「……確かに」
「妖精と付き合うには、ディエゴぐらいが丁度良いのかもよ?」
「そうかもな」
奇妙な主従関係ではあるが、性格的に馬が合うようだし、逆転していても問題はないだろう。多分ディエゴは気付いていないようだし。リオンからお願いという形でナチュラルに使われていた。
お互い実験好きだし、研究に没頭し過ぎて何かを忘れることも多いけれど。
使われているのは主人であるディエゴだが、本人がそれで良いならば口を挟む必要はない。(気付いたとしてもどうにもならないからだ)
「できたよー!」
笑顔で手を振るリオンに応えて、二人は腰を上げる。
今日も美味しい食事にありつける幸福に感謝して。妖精のいる生活というのはこのようなものかと悩むが、他と比べる対象が居ないので判らない。
だが願わくばこの奇妙な主従関係が、長く続けばいいなと二人は思った。
おわり
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