苦手なものだってある

悪戯道化様のリクエストより「リオンが教えた凧揚げか鯉のぼりイベントや大会」からヒントを得まして、女の子の遊びを考えるというネタにしてみました

以前にもリオンが子供たちにどう思われているのか知りたいというリクエストを頂いていたので、その一部でも垣間見れたらよいなと思います

リクエストどうもありがとうございました!(*'ω'*)


――――――――――――――――――――――――



「おんなのこの、あそび……?」


 けん玉やヨーヨーに続いて、竹馬や凧揚げを流行らせていたところ。

 もっと女の子でも楽しめる玩具や遊び方はないのかと聞かれた。

 凧揚げは風の流れを掴むのにいい教材だし、竹馬は熱砂から離れることが出来て体幹も鍛えられる。なので別に男の子の遊びではない。女の子だって楽しく遊びながら学べると思うのだけど。


「男の子ばっかり楽しそうで、面白くないもん!」

「それにかわいくないし!」

 

 ふと手にしたヨーヨーに視線を落とす。これをカスタマイズすれば、可愛くデザインすることだってできる。犬の散歩という技も可愛いと言えば可愛い。でもそう言う事じゃないのだろう。


「お、おままごと……とか、おにんぎょうあそびは?」


 そう答えれば、既に存在している遊びだと切り捨てられた。

 しかも最近は俺の玩具で遊び始めた所為で、男の子たちがおままごとに付き合ってくれなくなったそうだ。

 俺だっておままごとには付き合いたくない。

 アレは各ご家庭の縮図である。しかも役割分担に失敗すれば、ペットの犬や猫扱いにもされる危険な遊びだった。

 そして何が楽しいのか全然判らないというのが、正直な気持ちだ。


「ねぇねぇ、リオン君。あたしたちでも楽しめるおもちゃはないの?」

「男の子ばっかり楽しそうでずるい~!」

「キラキラしてるのがいいの~!」


 キラキラなら鉱石があるだろう。綺麗な鉱石採取。それでいいじゃないか。楽しいよ、石集め。


「そういうことじゃないぃ~!」

「だってそれ、おしごとだもん!」


 クズ魔晶石集めが子供のお小遣い稼ぎだからだろう。

 石拾いに楽しさを見い出せないらしい。とっくの昔に珍しい石への興味が薄れているようだ。

 これだから恵まれた環境で育つと、石拾いの楽しさが判らないのだなと俺は思った。


「みんなで遊べるおもちゃがいい~!」

「なにか出してよ~!」


 あばばばば。

 助けてド〇えも~ん!

 いや助けを求められているのは俺の方だった。 

 そんなことを言われても、俺の持ち物に女の子用の玩具なんて入ってない。

 せいぜいがゲーセンでゲットしたぬいぐるみだ。それもアマンダ姉さんやチェリッシュに捧げものとして献上している。

 大体女の子の遊びってなんだよ。わかんないよ!


「う~んう~ん」

「なにかおもいうかばない?」

「ねぇねぇ、リオンく~ん」


 考えている振りして時間を稼ぐ。

 女の子の遊びといえば、羽子板とか? でもそんなの俺は持っていない。

 作れば良いけど時間がかかるし、お手軽さがなかった。


 考えれば考える程ドツボに嵌る。

 どこかに俺を助けてくれるド〇えもんはいないものか。

 でもド〇えもんも性別的には男みたいなものだし、こういう時に妹のド〇ミちゃんが現れる気がするのだけれど。

 兄のピンチになると颯爽と現れる賢い妹。

 だがその救世主である妹のド〇ミちゃんは、意外なところから現れることになる。



◇◇◇



「あらあら。リオンってば女の子にモテモテねぇ」

「……そういう状態じゃねぇだろ、アレは」


 微笑ましく子供のやり取りを見ていたアマンダは、女の子たちに群がられているリオンをモテていると揶揄う。だがギガンにしてみれば、無理難題を押し付けられているようにしか見えなかった。

 事実無理なお願いをされているのだけれど。


「でも意外だね。リオっちにも苦手なものがあるんだ」


 珍しいものを見たとばかりに、チェリッシュは呟いた。

 リオンは大抵の問題や悩みには対応できるし、解決策やその後のアフターケアも万全だ。相手が理解力の高い大人相手に限るからだけれど。

 子供相手は難しそうだなと、リオンにも苦手なものがあることを知った。


「でもアレ放っといて良いんすか? リオリオがぶちぎれたりしないっすかね?」

「そうだな。そろそろ限界がきそうな、嫌な予感がする」


 楽しく遊んでいるだけならいいが、どうやら雲行きが怪しくなっているとテオとディエゴは不安になった。

 リオンは男の子の中では遊びの天才としてヒーローのように扱われているが、女の子の間ではそうでもないらしい。

 提案する遊びの殆どが、女の子受けが悪いというのもある。

 それを見ながらチェリッシュは、日頃自分がリオンに助けてもらっている立場なので、どうにか出来ないものかと考えた。


「よし。それじゃぁ、ここはアタシが一肌脱いであげよう!」


 すっくと立ちあがったチェリッシュが、女の子の遊びを考えてあげると宣言した。


「女の子には女の子の遊び方があるもん!」

「なんかあるんすかチェリッシュ?」

「ほら、アンタたちがトレーニングって言って、なわとびしてるじゃない」


 心肺機能の向上、体幹の強化、下半身の筋力アップ等。リオンから狭い場所でもできると勧められた、縄一本で出来るお手軽トレーニングである。

 リオンは仲間の身体強化に余念がない。本人が周りより肉体面で恵まれていないからだけれど。


「それの危なくない遊び方を、アタシ、思い付いちゃったの!」

「トレーニングで遊び……?」


 訝しそうな表情で、テオがチェリッシュを見る。

 彼女は腰に付けていたポシェットから、髪を結ぶゴムを沢山取り出した。


「……無限に出てくるっすね」


 カラフルなゴムバンドが大量に出てくるのを見て、テオが呆れたように呟く。


「沢山ある方がいいって、リオっちがいうからね~」


 気付けばどこに行ったか判らなくなる、紛失物ベスト10に入るゴムバンドである。

 なのでチェリッシュは常に沢山持つようにした。サヘールではゴムの生産もあり、比較的安価で手に入りやすいというのもあるからだ。

 地味な色ではなく、カラフルなのは見つけやすくするためである。


「身近なもので手軽に遊べて、みんなで楽しくでいいんだよねぇ~」


 そう言いながらチェリッシュがゴムバンドを繋げていく。チェーン状態にして長くなるゴムバンドがどういう遊びになるのか皆目わからない。


「よっし、でーきた!」


 適当に繋げたので、色はバラバラだ。でもカラフルなので見た目も可愛い。

 それを持ってチェリッシュは、女の子に集られているリオン目掛けて走って行った。


「アレで、なにするんすかね?」

「さぁ? チェリッシュもたまに訳が判らない行動を取るものねぇ」

「ディエゴ、お前さん判るか?」

「危なくない遊び……ゴムだしな。捕獲遊びか?」

「ああ、狩猟や盗賊の捕獲について学ぶのにちょうどいいなソレ!」

「何よそれ。全然楽しい遊びじゃないでしょ!」


 男の子であれば楽しそうだが、女の子だったら絶対楽しくない。

 それに女の子たちに求められているキラキラして可愛い遊びではないと思う。


「アンタたちは、そういう野蛮な発想しか出ないの?」


 アマンダが呆れて二人を叱る。そうこうしている間にも、チェリッシュがリオンに何事かを話し、リオンもそれだ! とばかりに手を叩いていた。


「あ、なんか俺呼ばれてるっす」


 見ればテオに向かって手招きをするリオンとチェリッシュ。

 それに気付いたテオは、行ってくるっすねと一言告げると、大人組が騒いでいるのを置いて子供たちの輪に加わりに行ってしまった。

 リオンとチェリッシュの元へ行ったテオが、説明を受けてうんうんと頷いている。

 そして夫々がゴムの端を持ち、一定の距離で止まる。ピンと張りつめさせず、ゴム縄はたるんだままだ。


「ん? テオとチェリッシュが、ゴムの両端を持って回し始めてんぞ?」

「リオンがタイミングを見計らってるな」

「どういう遊びなの?」


 長く結ばれたカラフルなゴム縄をゆっくりと回し始めるテオとチェリッシュ。

 そのタイミングに合わせて、リオンがぴょんと回転するゴム縄へと飛び込んだ。


「おお~、引っ掛からずに上手く中に入ったな」

「やだ。ぴょんぴょん跳ねてて可愛いわ~」


 回るゴム縄に引っ掛からないよう、ぴょこぴょこ飛び跳ねている姿が可愛いとアマンダは瞳を輝かせる。ウサミミ帽子を被っているので、本当にウサギのようだ。


「なるほど。跳躍力、柔軟性、バランス感覚、リズム感……それらが養われる遊びということか」

「ディエゴが言うと、ちっとも楽しそうに聞こえないわ。見た目で可愛い遊びだって素直に見れないの?」


 そうこうしている間にもリオンがその縄から上手く飛び出て、今度はぴょんぴょんと縄から出たり入ったりを繰り返し始めた。

 一見すると反復横跳びである。

 たまに引っ掛かってしまうが、ゴムなので痛くはないと説明しているようだ。


「あら、女の子達も始めたようよ」

「ほう、楽しそうじゃねぇか」


 当たっても痛くないゴムなので、安心して始めたようだ。

 中には怖がっている子もいたが、手を繋いで一緒に入ろうと誘う優しい女の子もいて、仲良く飛び込んでいた。


「あんな楽しそうな遊びを思い付くなんて、やるなチェリッシュ」

「協調性も養われるのがいいな」

「やっぱり女の子なのねぇ。可愛い遊びを思い付くじゃない」

「…………」

「…………」

「何よアンタたち。急に黙り込まないでよ」


 余計なことを口にして、殴られたくなくてギガンとディエゴは黙っただけだ。

 そうして暫く無言で子供たちのゴム飛びを眺めていると、チェリッシュたちが戻ってきた。

 その向こうでは、他の子も集まり、持参したゴムを繋げて遊び始めている。


「チェリッシュ、ありがとー」

「どういたしまして~」


 朗らかな笑顔で屋台まで戻って来た二人は、爽やかな汗をかいて輝いていた。

 その後ろには、縄回しを他の子に引き渡したテオが、続いて声をかけてきた。


「でもほんと流石っすね。こんな遊び方が思いつくなんて、見直したっす」

「見直したってことは、普段は見下してるってこと?」

「え。いや、ソンナコトハナイッス」


 チェリッシュにツンツンと胸を突かれて、テオはたじろいだ。

 だが同じようにリオンもチェリッシュを見直していた。

 そして今や尊敬の眼差しに変わっている。


「でもいつもリオっちにはお世話になってるし、役に立てて良かったよ~」

「うん。ありがとー。たすかったよー」


 女の子の間で一時的に流行るゴム飛びは知っていたが、基本ボッチ遊びだったので思いつかなかったリオンである。

 女の子の持ち物で手軽にしかもみんなで遊べるようにという発想は、誰とでも気軽に仲良くなれるチェリッシュだからこそだろう。


「すごいよねー」

「え? な、何? もしかしてアタシ、リオっちに、尊敬の眼差しで見られてるのかな?!」

「うん。チェリッシュは、すごい」

「やだも~! そんなに褒められると、照れちゃうよ~!」

「たよりになる」

「止めて止めて! あれぐらいで頼られたら困っちゃう~!」


 恥ずかしそうに照れるチェリッシュを褒め称えるリオン。その眼差しは本気で、嘘がなかった。


 その後チェリッシュは、彼女がリオンに飛び付いてハグをしてきても、仕方がないなぁと受け入れられるようになる。

 今まで心を開かなかった動物が、やっと心を開いたと言えばいいだろうか?

 それを見たスプリガンのメンバーは、リオンが苦手とするものに対して手助けをすると、距離感がグッと近付くことを知るのであった。


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