第4話 『……もう、やだ……』

キャラクター

莉子(Riko):20代女性。几帳面で完璧主義。

悠人(Yuto):20代男性。莉子の彼氏。穏やかで優しい。


場所

高速道路を走行中の車内(渋滞中)


SE:車内の空気がピンと張り詰める重苦しい無音。

遠くから車のクラクションが、断続的に、

まるで莉子の焦燥を煽るように鳴り響く。

莉子の荒い呼吸音が、マイクに近づくように大きく聞こえる。


莉子「(浅く、苦しげな喘ぎが漏れる。顔は青ざめ、唇は血の気を失い、震える)

はぁ……はぁ……っ、うぅ……

もう、ダメ……。本当に……。」


ト書き:莉子は前屈みになり、下腹部を両手で強く押さえつけている。

全身の力が、ゆっくりと抜けていくような感覚に襲われる。

視界が白んでいき、悠人の顔が、まるで深い霧の向こうにあるかのように

ぼんやりと霞んで見える。

呼吸をするのが苦しく、肺が締め付けられるようだ。

全身を支配する膀胱の極度の切迫感と、

下腹部を襲う激しい痛みが、波のように次々と押し寄せる。

頭が重く、意識が浮遊しているかのようだ。

窓の外の景色が、まるで悪夢のように歪んで見え始める。

莉子の口元から、苦しげな喘ぎが、徐々に声にならない呻きに変わっていく。

莉子の足が、激しく小刻みに震え始める。


悠人「莉子、大丈夫。俺がいるから。なんとかするからね。

絶対、莉子のこと守るから。

だから、もうちょっとだけ頑張って…。」


SE:莉子の震える呼吸音。

窓の外を通過する他の車のドライバーが、

莉子の方を一瞥するような、無関心な視線を感じさせる環境音。

その視線が、莉子の羞恥心をさらに刺激する。

莉子の太ももが、小刻みに、そして激しく震え続ける。

下腹部の痛みと圧迫感が、波のように押し寄せる。

莉子の口から、小さく舌打ちが漏れる。

足が組んだまま、膝がガクガクと震え、制御が効かない。


莉子「心の声:どうして自分だけがこんな目に…

周りの人らは普通なのに…

なんで…っ、なんでなの…!

こんな恥ずかしい姿、悠人くんに見られたくないのに…

もう、限界…膀胱が、もう破裂しそう…!

体が、勝手に震える…助けて…

もう、出そう…本当に出そう…このままじゃ…っ。」


悠人「莉子、何かあったんなら、無理しないでいいからね。

俺に全部任せて。ね?俺は莉子の味方だから。

だから、一人で抱え込まないでくれ…。」


ト書き:莉子、悠人が何かを言おうと口を開いたが、その声が届かない。

まるで、水中にいるかのように、全ての音が遠い。

体が、鉛のように重い。

莉子の心の中の最後のプライドが、

薄れゆく意識の中で必死に抵抗する。

必死で目を見開こうとするが、まぶたが重い。

瞼の裏に、真っ赤な警告色が点滅しているように感じられた。

その点滅は、莉子の心臓の鼓動と同期しているかのようだ。

莉子の体が、さらに硬直し、脚の震えが止まらない。

手足が冷たくなり、指先がピクピクと痙攣する。

時間感覚が曖昧になってくる。

莉子の額から大量の冷や汗が流れ落ち、頬を伝う。


莉子「荒い呼吸の合間、低い声で、かすかに、しかし荒々しく。

はぁ……はぁ……っ、うぅ……

もう、やばい……。」


悠人「えっ…トイレって……じゃあさ、次のPA、もう少しで――

(悠人の声が焦り混じりになる。莉子の異変にようやく本気で気づき始める)」


莉子「もういいって言ってるでしょ!!」


SE:莉子の怒声が車内に響き渡り、直後に沈黙が訪れる。

莉子の荒い息遣いが、マイクに近づく。

莉子が助手席で体を丸めて、小刻みに震える。

その震えは、羞恥と苦痛が混じり合ったものだ。

車のハンドルを、悠人がぎゅっと握り直す、革の擦れる音がする。

悠人がナビのボタンを叩く音。


莉子「心の声:なんでこんなことに…もう嫌だ…恥ずかしい…

こんなこと言うつもりなかったのに…最低な私…

なんでこんなこと言っちゃったんだろう…でも無理なんだもん…

ごめん…ごめんなさい…

悠人くん、嫌いにならないで…

でも、もう、本当に限界…このままじゃ、本当に…

あと何分?遠い?近い?嘘でしょ?無理…無理無理無理…

お願い…助けて…。

1分が長すぎる……秒針が止まってるんじゃないの……?

音だけがうるさくて、時間が進まない……」


SE:遠くで、車のクラクションが断続的に鳴り響く。

その音が、莉子の精神をさらに追い詰める。

悠人が急ブレーキを踏むような、キィッと短く鋭い音。

車内のドアが微かに「ドクン」と鳴るようなSE。


悠人「莉子、大丈夫だよ。あと少しだからね…俺がちゃんと守ってあげるから。

だから、もうちょっとだけ頑張って…!

俺は、莉子の味方だから。信じてくれ。」


ト書き:莉子、その手のひらの温かさに、わずかな希望を感じる。

だが、体は相変わらずの膀胱の切迫感と痛みに襲われ続けていた。

目の前が真っ暗になる。

視界の端で、ナビの画面がチカチカと点滅しているのが見えた。

その点滅が、莉子の意識の明滅と同期しているかのようだ。

「お願いだから気づかないで」という思いが強まる。

声や動作が乱れ始める。

莉子の下腹部が、目に見えて膨らんでいるような描写。

莉子の体が、激しく小刻みに震え続け、股間を強く押さえつける。

その瞳には、絶望と羞恥が入り混じった涙が溜まっている。

「押さえても止まらない」感覚が強まる。


莉子「心の声:完璧でいたかった。でも、もう無理…

助けて…っ、悠人…もう、出ちゃう…。」


SE:莉子の下腹部が、微かに「ギュルッ…」と音を立てて痙攣する。

その音は、まるで中から膀胱が悲鳴をあげるような、生々しい圧迫感だった。

下腹部が震え、シートに微かに「ピチ…」という音が……

莉子の息が、一瞬、止まる。


(フェードアウト)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る