第3話 『ねぇ、いつ着くの…?』

キャラクター

莉子(Riko):20代女性。几帳面で完璧主義。

悠人(Yuto):20代男性。莉子の彼氏。穏やかで優しい。


場所

高速道路を走行中の車内(渋滞中)


SE:車のエンジン音が重々しく響き渡る。

遠くで救急車のサイレンが微かに聞こえ、すぐに遠ざかる。

渋滞でイライラした車のクラクションが、短く、鋭く連続して鳴る。


莉子「(浅く、苦しげな呼吸音。口元は引きつり、額には脂汗)

はぁ……はぁ……っ……うぅ……

もう、ダメかもしれない……。」


ト書き:莉子は前屈みになり、下腹部を両手で強く押さえつけている。

顔色は青ざめ、視線は一点に定まらず、かすかに震えている。

体は鉛のように重く、意識が朦朧とし始める。

膀胱の切迫感が、波のように何度も押し寄せ、

激しい痛みに変わっていく。

全身に、鳥肌が立つような不快感が広がる。


悠人「莉子、さっきから落ち着かないけど、何かあったの?

顔色も、なんかあんまり良くないよ?

無理してるんじゃないか?

俺に何か言いたいことでもあるのか?」


莉子「悠人の言葉にびくりと肩を震わせる。

焦りの息が漏れる。視線を泳がせ、どう答えるか迷う。

顔が熱くなる。羞恥心から悠人の耳元にそっと顔を寄せ、

誰にも聞かれないように、消え入りそうなほど小さな声で囁くように。

ねぇ……悠人、あとどれくらいで……っ、次……

止まるとこある……?はやく……もう、お腹が……

パンパンで、痛い……っ。」


SE:数秒の沈黙。車内の空気がピンと張り詰める。

莉子の心臓の鼓動が、微かに「ドクン、ドクン」と大きく、

そして早く聞こえるような緊迫感。

莉子の荒い呼吸音がマイクに近づく。

莉子の太ももが、小刻みに震え始める衣擦れの音。

汗が額からこめかみに伝い、シートに落ちる微かな音。

シートをぎゅっと握りしめる音、爪が食い込む音。


悠人「莉子の顔色を改めて見て、戸惑いの色が混じる。

息を吸い込む微かな音。

え、大丈夫なのか?……何かあったんなら、俺に言ってみ?

全部聞くから。俺、莉子のことなら何でも知りたいし、

助けてあげたいんだよ?

だから、一人で抱え込まないでくれ。」


莉子「悠人の手が頬に触れて、びくりと体が震える。

声のトーンが少し切れかかり、半ば泣き言のように、

か細く、焦燥感に満ちて。声が震え、今にも泣き出しそう。

……やばいかも……行きたくなってきた……っ、うぅ……

もう、無理かもしれない……っ、本当に……

お腹パンパン…、もうはち切れそう…っ。」


SE:莉子が腹部を両手でぎゅっと押さえる衣擦れの音。

シートの上でモゾモゾと小さく身動ぎする音。

莉子の荒い息遣いが混じる。

その息遣いは、徐々に喘ぎに変わっていく。

莉子の足が、無意識に内股になる。

莉子の喉の奥から、「ヒュッ」「キュッ」といった、

膀胱が収縮しようとするような、かすかな音が聞こえる。

ズボンが擦れる、微かな音。

足の組み替えが激しくなり、シートが大きく軋む。


莉子「そんなこと言わないで!意識しちゃうじゃない!

…もう、どうしよう、本当に…っ、どうしたらいいの…?

助けて…っ、悠人…もう、出そうでやばい…!

もう、これ以上は無理…お願い…っ。」


SE:莉子が我慢に耐える、小さく喉を鳴らす「ごくり」という音。

莉子の呼吸が徐々に荒くなり、浅くなる。

その呼吸音は、まるで絞り出すような苦しさを伴う。

莉子の体が、小刻みに震え続ける。

莉子自身の心臓の鼓動が、自分にすらうるさいくらいに響く。

股間を両手で強く押さえつけ、さらに深く膝を揃える。


莉子「心の声:なんで…悠人くんばっかり平然としてるの…?

私はこんなに必死なのに…なんで気づいてくれないの…!

黙ってたら、我慢できると思ったのに。

なんでバレるの?もうやめて、見ないで…

なんでこんな時に限って、こんなことになるの…

もう、終わりだ…私、もうダメ…

こんな姿、悠人くんに見せたくなかったのに…

完璧な私でいたかったのに…

もう無理だ…お願い、早く…この膀胱、もう爆発しそう…

体が熱いのに、手足は冷たい…変な感じ…。」


悠人「わかったわかった。すぐ調べるから。

次のPAまでどれくらいかな…

焦らないで、ゆっくり深呼吸しようか?俺と一緒に、ね?

大丈夫、俺がついてるから。」


SE:カーナビが起動する電子音。直後に「ピッ」という操作音。

音声案内が小さく流れ始める。

「次のサービスエリアまで、約20キロです。

この区間は渋滞中です」

ナビの声は、機械的で冷たく、莉子の焦燥と対比される。

外部の車の音(クラクション、エンジン音のうねりなど)が、

莉子には嫌なプレッシャーとして聞こえる。

密室の圧迫感が、ヒロインを追い詰めていく。


莉子「急に不安そうな声で、視線を合わせられない。

イライラが募り、語尾が乱れる。

え、次のSA…あと何分だっけ?…遠い?近い?

嘘でしょ?無理…無理無理無理…もう、押し込みたい…でも…

もう、どうにもならない…っ。」


ト書き:莉子の視線が、ナビの画面と悠人の顔の間を何度も往復する。

焦りと羞恥で、顔が真っ赤になっている。

莉子、無意識にシートの端をぎゅっと掴み、指の関節が白くなる。

鈴のキーホルダーが、莉子の手の震えに合わせて、

チリン、チリンと悲しげに鳴る。

悠人の優しい言葉が、莉子の心に届いているようで、

しかし、その優しさが、今の莉子には逆にプレッシャーとなる。

下腹部にじんわりとした痛みと、さらに強まる圧迫感が襲いかかる。

莉子、無意識に腰を浮かせ、シートから体を離そうとする。

視線を合わせられない。

莉子の体が小刻みに震え、制御不能に近づく。


莉子「心の声:悠人くんは優しいのに、私がこんなんじゃ…

こんな情けない姿、見せたくない…もうやめて、見ないで…

でも、もう限界…

どうしよう…どうしたらいいの…

下腹がパンパンになってきた…股間がズキズキする…

もう、出そうで…震える…お願い、早く終わって…。」


ト書き:莉子の体が、さらに前屈みになり、下腹部を抱え込むようにする。

その瞳には、今にも溢れそうな涙が溜まっている。

車内の空気は、莉子の苦しみに合わせて、

どんどん重く、息苦しくなっていく。

悠人が莉子の手をそっと握る。

その温かさに、莉子の体がわずかに反応する。

しかし、その手も小刻みに震え、汗ばんでいるのがわかる。

莉子の顔色が、一層青ざめていく。

瞬きの回数が明らかに減り、焦点が合わなくなっていく。

心臓の鼓動が、莉子自身の耳に、うるさいくらいに響く。

莉子の口から、「黙ってて!」と、

イライラと焦燥が混じった、とげとげしい言葉が漏れる。


SE:莉子の下腹部が、微かに「ギュルッ…」と音を立てて痙攣する。

その音は、まるで中から膀胱が悲鳴をあげるような、生々しい圧迫感だった。


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