第14話:鍋と剣と、最高売上の日

鉱山の町に活気が戻ってしばらく。


町の市場には新たな店が並び始め、ライバルもちらほらと現れていた。


「……そろそろ潮時かもな。」


「……うん。次の町、行こう。」


そう決めたミツルとジャンクは、旅支度を始めた。


荷物をまとめ、鍋や剣を吟味しながら倉庫を整理していると――。


「見つけたぞ!」


嫌な声が響いた。


案の定、教会の使者が再び現れたのだ。


護衛を引き連れ、こちらへとずんずん歩いてくる。


「お前ら、また稼いでるそうじゃねえか。出すもん出しな!」


ジャンクが肩をすくめる。


「またかよ……。」


ミツルはにやりと笑った。


「……準備はできてる。」


この日のために、二人は市場で安い鍋や剣を大量に買い込んでおいた。


もちろん、【プラスアルファ】で強化済みだ。


ジャンクが鍋の蓋を構え、ミツルが剣を握る。


【鍋の蓋 +5 → 鉄壁の鍋蓋】

【剣 +10 → 無双の剣】


「……いくぞ!」


護衛が一斉に剣を抜き放った瞬間、ミツルの剣が閃いた。


金属音とともに敵の剣が――バラバラに崩れ落ちた。


「な、なんだと!?」


「こ、このガキの剣、化け物か!」


護衛たちは恐怖に顔を青ざめさせ、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。


後ろから怒鳴る使者がそれを追いかける。


「待て!戻れ!やれ!」


しかし、戻る者は誰もいなかった。


市場の人々はその光景に息をのんだが、やがて拍手と歓声が巻き起こった。


「すげぇ!あの坊っちゃんの剣、最強だ!」


「この鍋蓋、ほしい!」


その日、二人の店には鍋と剣を求める客が殺到した。


なんと、開店以来の最高売上を叩き出すこととなったのである。


その夜、ミツルは稼いだ金貨の半分を小さな袋に詰めて、故郷の実家へと送った。


「……これで少しは楽になるといいな。」


ジャンクが肩を叩く。


「よくやったな、坊っちゃん。」


「……まだまだ稼ぐよ。」


強化した鍋と剣を荷車に積み込み、二人は夜明けの道を歩き出した。


遠くで波の音が聞こえる気がする。


「次は……海だな。」


「……うん、行こう。」


夜明け前の空の下、二人は笑いながら新たな旅へと向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る