できそこないの恋

一閃

第1話

「今はひとりぼっちかもしれないけれど 実はひとりぼっちじゃないのかもね」と

キミがポツリと呟いた

「だって…誰かと待ち合わせをしているのかもしれないじゃない?」と

小さく笑った


「ひとりぼっちの時って…意外と寂しいって思ってないのかもね」と

キミは 夕焼けに染まるオレンジ色の空を見上げた

「誰かと一緒に居て さよならを言う時の方が寂しいじゃない?」と

キミが小さく手をふって

ボクに背を向け歩いて行く


そんなキミを呼び止めることもできずに ボクは途方に暮れている


キミの名前を口にするだけでいいのに

そんな簡単なこともできずにいる


寂しいココロを埋めるのはだと知っているから

中途半端な優しさは

寂しいココロをなぐさめる

それ以上でも以下でもない

なぐさめるだけで

到底 愛にならないことも経験わかっているから

ボクはキミの名前を言いあぐねている


今夜も

きっと キミも ボクも

ひとりで星空を見上げるのかな

その時 キミに逢いたいと思ったら

キミの名前を呼ぶから

その時は 愛だの恋だの言わないで


「逢いたかったよ」と抱きしめ合おう


映画や小説のラブストーリーみたいに

スマートでもない 洒落たセリフもない

周りから見たら できそこないの恋かもしれないけれど

少し弱気なボクと 少し強がりなキミにとっては極上の「運命」かもしれない


なんて…キミに伝えることができたとき

キミが笑いながら うなずいてくれたら…


できそこないの恋は始まったばかりなのかもしれない


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