第3話 咲くはずだった花
暗い部屋の中、僕は今日もディスプレイの光に包まれていた。周囲の喧騒は僕には関係がない。いや、あるかもしれないけれど、関係がないことにしている。だって、悪いのは全部、外の世界のせいだから。
バカみたいに土いじりしてる親父と妹の笑い声が、窓の外からうるさく響いてくる。あいつら、何もわかってない。僕がどれだけ苦しんできたか。ネットで叩かれて、晒されて、誹謗中傷を受けて。それを全部僕一人で背負ってきたっていうのに。
でも、誰もわかってくれなかった。あの時だって、全部周りが悪かった。企画が失敗したのも、視聴者が悪い。信じてた奴らが裏切ったのも、奴らが勝手に妬んで僕を陥れただけだ。僕はただ、自分の才能を信じて、前に進もうとしただけだったのに。
それを親父は「働け」だの「外に出ろ」だのと、うるさく言う。笑わせるなって。外に出たって、どうせまた誰かが僕を見つけて、馬鹿にするんだ。家にいたって、あの意味不明なハガキが来るんだ。ポストに勝手に差し込まれて、母さんが泣いてたのは、僕のせいじゃない。送った奴が悪い。僕を叩く奴が、悪いんだ。
俺は被害者だ。なにもかも、あいつらが悪い。
…それにしても、あの花壇、マジでキモい。花が咲けば何かが変わると思ってんのか? 土なんか触って、何になるんだよ。そもそも、あの家族はずっと僕を理解しようとしなかった。いつも期待だけ押しつけて、勝手にがっかりして、挙げ句の果てに僕を“間引こう”としてる。
「綺麗な花を咲かせるためには、しょうがない」?
その言葉を、親父が小声で繰り返してたのを、僕は聞いたんだ。あれは、絶対に僕のことだ。家の“恥”を、家の“汚点”を切り捨てる、そんなふうに思ってる。わかってるんだよ。だから僕は、家族なんて信じない。信じたって裏切られるだけだし、どうせ僕の才能を認められないやつに、価値なんかない。
本当に愚かだよ、あいつら。咲くはずだった花を、間引くなんて。
俺は、咲くべきだった。誰よりも眩しく、華やかに。世界に愛されて、称賛されて。だって、俺は他のやつらとは違うんだから。俺だけが、特別なんだから。
なのに、どうしてこうなったんだろうな……。
窓の外では、今日も笑い声が咲いている。僕にはもう、それが遠くのノイズにしか聞こえなかった。
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