第2話 木戸孝允の独り言②
中岡慎太郎の場合。
奴は高杉ような派手な騒ぎ方はしないが、その場の雰囲気をじっくりと観察するだろうな。
そして、俺と高杉、龍馬のやり取りを見てるんだろうな…。
内心では苦笑いしつつも、龍馬さんの「桂さん!」呼びには「龍馬らしいのう…」って小さく頷いとるかもしれないな。
それでいて、もし誰かに話しかけられたら、鹿鳴館の華やかさの裏にある日本の課題について、穏やかながらも鋭い意見を述べそうだな。
ああ見えて、自分の意見は言う男だった。
「外国との付き合いも肝心じゃが、この国がどうあるべきか、もっと地に足のついた議論が必要ぜよ」って具合にな。
そして、高杉が、あの鹿鳴館の雰囲気と、そこに集まる長州の面々をひと目見たら、すぐに
「なるほど、こやつら、完全にイギリス寄りの路線じゃな…」
って察するだろうな。
高杉は昔、イギリス公使館焼き討ち事件にも関わっているから、イギリスに対する複雑な感情がある。
鹿鳴館で優雅にイギリス式のダンスやマナーを真似る長州藩出身の官僚たちを見ては。
「ふん、昔の気概はどこへ行ったんじゃい。まさか、おめおめとイギリスの真似ばかりしおって…」
って、内心では軽蔑の眼差しを向けつつ、昔の血が騒ぎ出すかもしれないな。
土方歳三の場合。
土方歳三のことだ、鹿鳴館に着くなり、その華美な内装や浮かれた雰囲気に眉間に深い皺を寄せるだろうな。
まず、「なんだ、この軟弱な空間は。規律も何もないのか!」
と一喝するのは分かっている。
龍馬、高杉らが俺を囲んでワーワー言っているのを見たら、
「貴様ら!何の騒ぎだ!公の場でみっともない真似は許さん!」
と、有無を言わさず、斬りかかる勢いで怒鳴りつけるか、そのまま遠慮なく斬りかかるだろうな。
そして、警備の兵が頼りない様子だと見るやいなや。
「なんだこの体たらくは!これでは警備とは言えん!まるで腑抜けどもばかりではないか!こんなんで国の要人を守れるとでも思っているのか!」
と、即座に政府の人間を捕まえて、
「おい、そこの役人!直ちに警備の人数を倍にしろ!いや、三倍だ!こんな手ぬるい警備では、いつ何時、不逞の輩が押し入ってきてもおかしくないわ!」
と、怒鳴り散らすに決まっている。
奴は…函館戦争以降、消息不明だそうだ。
何処にいるんだろうか?
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