第5話
ナオがまた背中に乗るように伏せたけど、ナオも走り回ってるだろうし、私もこの体重と力の関係に慣れたい。少し考えたいこともあるし、一緒に歩くのもいいだろう?
ナオは顔をすり寄せる。その大きさだと迫力あるけどな。
考えたい事、とはゴブリンの数だ。
ダンジョン一層のゴブリンの数はそのダンジョンの大きさを暗示していると言う。
私たちはかなりのゴブリンを倒したよな。倒しても倒してちょいと移動したらまだまだゴブリンは見つかった。
つまり、このダンジョンは見かけによらずディープなダンジョンなのかも知れない。
やがてダンジョンの門の向こうの明かりが見える。
無双していたとは言え、やはりホッとする。
ダンジョンから出て見上げると上に白い大きなパンティーが見える。
その上には可愛い少女が。思わず目を合わせると「キャッ」と声を上げてスカートを押さえる。その途端にマールの縮小も切れて大きくなる。
少女はびっくりして尻餅をついてしまう。だからまた下着がみえてるって。
私は彼女に手を貸して立ち上がらせながら「す、済みません。不可抗力とは言え」
「いえ、わたしも勝手にこちらに入ってきてましたし、お互い様と言うことにしませんか」
私はほっとしながら彼女の事を聞く事にした。
「あらためまして、わたくしは桜川瑞穂と申します。実は姉からこの街にもダンジョンが出来たと聞きまして」
どうも彼女はあの役場の受付の妹さんらしい。
受付さんもここの事は広がらないようにしてたらしいが、何しろダンジョンは街の財政を左右するかも知れない財産だ。それがハズレだったことに愚痴が出てしまったらしい。
地方財政なんてどこも火の車だからなぁ。
「私はこの街にある私立の高校生なんですが、ずっとダンジョンの冒険に憧れてて5つ隣の町のダンジョンまで通ったりしてたんです」
そう言えばこの付近には不思議とダンジョンは無かった。ダンジョンの無い町は多いが一番近いダンジョンまで50キロも離れてる不思議な地帯だ。
あの受付さんもせめて隣町ならおこぼれもあるのに、とか言っていたな。
「学校があるので土日しかダンジョンに行けないし、行っても人気のあるから土日には余計に混んでてモンスターより人が多いからバス代ごと赤字になるんですよ。
それでも実績を造って我が校にもダンジョン部を造ろうとしてるんです!」
「お、おう」私は勢いに押されっぱなしだ。
昨今は学校でも防災訓練の一種としてダンジョン体験なども行い、ダンジョンの現実と自分との相性を早くから知らしめる様にしているだった。
そうすることで興味本位とか一攫千金を夢見て突っ走る事のないように、という意味もあるらしい。
学校によってはダンジョン専門養成科のある高校も増えているらしい。
「と、言ってもわたしのところは3年程前まではお嬢様学校だったのですが、昨今の少子化で共学になって男性もいるようになったんですが、お嬢様学校だったせいか男の子もなんか覇気がなくて。
友達にも話してみてるんですが、冒険者の活躍とかは興味があるんですが、実際に自分がやってみることに興味をもってくれる人がいないので、まだ私ひとりなんですけどね」
お嬢様学校に行ってるのにダンジョン探検なんて家が許してるんだろうか。
「家にはもちろん許しを貰ってますよ。むしろ、銃後を護るのは女の務めとして武芸を嗜むように、と言われてるくらいです」
銃後っていつの戦時中だよ。
「私もこのダンジョン使わせて貰えませんか」優しげに微笑んで小首をかしげる。とても可愛い。
「それで、その猫ちゃんと。そちらはスライムちゃん?」
スライムのマールは瑞穂ちゃんが微笑むと、ぴょんっと飛び跳ねて彼女の胸の谷間に。
「きゃっ」と思わず声を上げたけど相好を崩して「カワイイっ」と。
ナオも彼女にすり寄って行く。膝を折ってしゃがむと彼女の膝と胸の間に。
こ、このやろうどもーーー。
「でも、マールの力で小さくなったらこのダンジョンに入れるとは言えマールは一人しか縮小化できませんし、瑞穂さんを一人でダンジョンに行かせる事は出来ません」
彼女は悲しげに。「だめですかねぇ」
その時、マールが彼女の胸から飛び出して着地すると横にぶんぶん震えだし、二つに分かれた。そういえば、ステータスを開いてマールを見るとスキルに分裂が増えていた。
「これで私もダンジョンに入れますね。よろしくお願いしますっ」
私は彼女の勢いに押されて思わず頷いてしまった。「お、おう」
その時、ピコンとステータスボードに明かりが灯った。
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