桜の木の下で

@kiz4649

【桜の木の下で】 2人用声劇

エピソード0:『モノローグ』


ゆき「この木があったからこそ、君と出会えた。そして楽しく過ごすことができた。本当にありがとう。」


陽斗「ゆき…。」


ゆき「では、また会おう!」




ゆき【桜の木の下で】





エピソード1:『出会い』


桜の木を眺める陽斗


陽斗「はぁ…。」


少女「少年…少年!……少年!!」


陽斗「んえ?!ぼ、僕ですか?」


少女「そうだよ。君以外に少年がどこにいるというのだね?」


陽斗「いや、少年って言うけど、君もまだ少女って言われるタイプじゃ…」


少女「ところで少年!!」


陽斗「………。な、なんですか?」


少女「ここで何をしている?」


陽斗「別に。」


少女「……。失恋でもし…」


陽斗「してないです!そもそも僕、彼女いたことない=年齢なので。」


少女「それ、自分で言ってて痛くないのか?」


陽斗「別にいいじゃないですか。モテないんですから。」


少女「あははは…君は面白いな!」


陽斗「どこがです?てか、嫌味に聞こえますけど?」


少女「おっと、すまない。すまない。」


陽斗「………。」


少女「君は、なぜここに?」


陽斗「ただ、この桜の木を見に来ただけです。」


少女「そうか。」


陽斗「あの…聞きたいんですけど?」


少女「なんだい?少年。」


陽斗「………。あの、少年呼びをやめてもらっていいですか?」


少女「では、なんと呼べばいい?名前は?」


陽斗「え!?な、名前?」


少女「そうだ!君のことを少年呼びすると嫌がるから名前の方がいいだろう?」


陽斗「まぁ、そうですけど…」


少女「で、名前はなんという?」


陽斗「陽斗です。」


少女「ほう、はると…か。漢字はなんと書く?」


陽斗「え?陽斗の陽(はる)は太陽の陽(よう)で、斗(と)は北斗の斗(と)です。」


少女「そうか。いい名前だな!」


陽斗「そう…ですかね?」


少女「うむ。」


陽斗「えっと…君の名前は?」


少女「ん?私か?私は、ゆきだ。」


陽斗「ゆ、ゆきさん。」


ゆき「あぁ。ちなみにゆきでいい。ゆきと呼んでくれ。」


陽斗「え?じゃあ、ゆき…。」


ゆき「なにを照れている?」


陽斗「しょうがないだろ!女の子の名前、呼び捨てするの初めてなんだから。」


ゆき「ふふふ。そうか、可愛いな。」


陽斗「からかってます?」


ゆき「からかってはいない。だが、君は面白いからな。」


陽斗「絶対からかってるよな…」


ゆき「何か言ったか?」


陽斗「いいえ。」


ゆき「そうか。」


陽斗「あ、聞きたい事なんですけど…」


ゆき「おっと、すまない!時間だ。また明日、この時間帯に会おう。」


陽斗「えっ!?」


ゆき「では、またな!」


陽斗「あっ!え!ちょ、ちょっと!!」


ゆきはその場を去る


陽斗「…はぁ、行っちゃったよ。なんなんだ、あの人?さて、僕も帰るとするか。」







エピソード2: 『驚き』


桜の木を眺めるゆき。


陽斗「あ、いた。」


ゆき「あぁ、君か。昨日ぶりだな。」


陽斗「君が昨日、この時間帯に会おうって言ったから来ただけだよ!」


ゆき「そうか。来てくれて嬉しい。」


陽斗「え!?」


ゆき「来てくれないのかと思っていた。」


陽斗「約束したのは、そっちですけど?!」


ゆき「あぁ。だが、大抵約束をすっぽかされることが多い。だから、来てくれて驚いた。」


陽斗「驚いたようにはみえませんけど?」


ゆき「では、こうしよう!」


陽斗「?」


ゆき「………!!」


驚いた表情をするゆき


陽斗「え?」


ゆき「どうだ?驚いた顔をしただろ?」


陽斗「はいぃぃぃ!?それ、驚いた表情なの?……っぷ、あははははは。いやいやいや、驚き方!!」


ゆき「…ちゃんと驚いたつもりだったんだが。」


陽斗「にしては、癖がすごすぎ!あははは…」


ゆき「ふふっ。君は笑うと可愛いいな。」


陽斗「…!?か、からかわないでください。」


ゆき「本心だ。」


陽斗「だとしたら悪い人ですね。」


ゆき「私がか?…そうかもしれないな。」


陽斗「ちなみに、なんで君はここにいるの?」


ゆき「ん?君とは誰のことだい?」


陽斗「…ゆ、ゆき。」


ゆき「ん?聞こえないなぁ~」


陽斗「ゆき!!」


ゆき「あははは…そんなに大きな声を出さなくても。」


陽斗「言わせたのはそっちじゃん。」


ゆき「ふふふ…。」


陽斗「で、ゆきに聞きたいことがあって、昨日はなんでここに来て、どうして僕に話しかけてきたの?」


ゆき「なんで…か。君はこの桜の木を眺めながら、すごく悲しい顔をしていた。だから話しかけた。」


陽斗「え!?そんな顔してました?」


ゆき「あぁ、していたぞ。」


陽斗「そうだったんですね。」


ゆき「何かあったか?」


陽斗「………。」


ゆき「答えたくないなら、答えなくていい。」


陽斗「質問したのに、結構バッサリ言うんですね。」


ゆき「そうか?」


陽斗「はい。」


ゆき「だが、その方が君にとっては助かるだろう?」


陽斗「いや、その…」


ゆき「なんだ?聞いて欲しかったのか?」


陽斗「いや、そうでは無いですけど…」


ゆき「であれば、私は聞かない。」


陽斗「………!」


ゆき「おっと、もうこんな時間か。また明日、会おう。」


陽斗「え!?」


ゆき「ではな!」


ゆきはその場を去る


陽斗「あ、行っちゃったよ。さて、僕も帰るか。」







エピソード3:『桜の木』


桜の木に寄りかかり空を眺めるゆき


陽斗「あ、ゆき!早いね」


ゆき「おぉ!!君か少年。」


陽斗「少年じゃなくて、陽斗です。」


ゆき「すまない、すまない。許してくれ。」


陽斗「まったく~」


ゆき「で、なにか用か?」


陽斗「また明日って言ったのは、ゆきですよね?」


ゆき「そうだな。あははは…君はからかいがあるから。」


陽斗「からかわないでください。」


ゆき「あぁ、すまない。」


陽斗「まぁ、別にいいですけど。」


ゆき「ありがとう」


陽斗「ちなみに、なんでゆきはいつもこの桜の木の下にいるの?」


ゆき「ん?あぁ、私はいつもこの辺をよく散歩していてな。」


陽斗「散歩?」


ゆき「そうだ。それで散歩中にこの桜の木を見つけてな。それ以来この桜の木が好きでな。いつもここに来て、見つめている。」


陽斗「そうだったんですね。」


ゆき「あぁ。この桜を見ていると、全てを忘れさせてくれうように思える。」


陽斗「わかります。」


ゆき「わかってもらえるとは、嬉しいな。ちなみに君はなんで昨日この桜の木にいた?」


陽斗「え?あぁ、過去のことを思い出していたんですよ。」


ゆき「過去?」


陽斗「はい。」


遠くを見つめる陽斗


ゆき「………。」


陽斗「今日はこの辺で失礼しますね。」


ゆき「あ、あぁ。」


陽斗「………。」


その場を去ろうとする陽斗


ゆき「陽斗!また明日、この場所で会おう!」


陽斗「うん!また明日」






エピソード4:『優しさ』


悲しい表情で桜の木を眺めるゆき


陽斗「あ、ゆき!今日も早いね。」


ゆき「おぉ、君か。」


陽斗「昨日はごめんね?」


ゆき「あぁ、大丈夫だ。」


陽斗「…ゆき、何かあった?」


ゆき「…?どうしてだ?」


陽斗「え?悲しそうな表情してたから。」


ゆき「ふふ。君はすごいな。」


陽斗「え?」


ゆき「ちょっとな。」


陽斗「そうだったんですね。」


ゆき「あぁ。」


陽斗「………。」


ゆき「君は優しいな。」


陽斗「え?」


ゆき「普通だったら、「なにがあったの?」などと聞くだろう?それを君は聞かない。」


陽斗「だって、聞かれたくなさそうだったから。」


ゆき「そうか…ありがとう。やっぱり君は優しいな。」


陽斗「そうですかね?」


ゆき「あぁ、優しいよ。」


陽斗「ありがとう。」


ゆき「時に君は…」


陽斗、電話がかかってくる


陽斗「あ、ちょっとごめん。」


ゆき「あぁ。」


電話に出る陽斗。


陽斗「もしもし。………はい、大丈夫です。………はい。………え!?いや、悪いですって……分かりました。今から行きます。はい、ではまた。」


陽斗「ごめん!急用できちゃって…」


ゆき「あぁ、大丈夫だ。」


陽斗「また明日ここで!」


ゆき「あぁ、またな。」






エピソード5:『一人暮らし』


木の枝で地面に落書きをするゆき


陽斗「お待たせ!何してたの?」


ゆき「おう、君か。ただ、地面に絵を描いていただけだよ。」


陽斗「そうなんだ。どんな絵?」


ゆき「見せない。」


ゆき、地面の落書きを消す


陽斗「えー!!」


ゆき「ふふっ。」


陽斗「そういえば、昨日僕に何か言いかけましたよね?」


ゆき「え?あぁ。そうだな。」


陽斗「なんですか?」


ゆき「なぜ君は私に付き合ってくれる?」


陽斗「あぁ~。まぁ、ゆきと話してると楽しいし、落ち着くんですよね。」


ゆき「………。」


陽斗「ゆき?」


ゆき「え!?」


陽斗「大丈夫?」


ゆき「あ、ああ。君からそう思われてると思ってなくて、驚いた。」


陽斗「ふぅん。そうなんだ。まぁ、確かにこんなこと言ったことなかったですからね。」


ゆき「あぁ。ところで、昨日の電話は親からか?」


陽斗「いえ、親戚です。」


ゆき「そうか。だからよそよそしかったのか。」


陽斗「そうですね…」


ゆき「一人暮らしをしているのか?」


陽斗「えぇ、まぁ。」


ゆき「一人暮らしとか偉いな。」


陽斗「好きで一人暮らししてる訳じゃないんですけどね。」


ゆき「どういうことだ?」


陽斗「1年前、旅行中に事故にあったんです。」


ゆき「……!?」


陽斗「それで、親は僕を庇って両親とも亡くなってるんですよ。」


ゆき「………。」


陽斗「それで、実家から離れなきゃいけなくて…親戚が預かってくれるって話になったんですけど、なんか、気まづくて、『一人暮らしするので大丈夫です!』って思い切って言っちゃったんだよね。」


ゆき「そう…だったんだのか。」


陽斗「はい。最初は周りの方々に猛反対されたんですけど、親戚が『君が決めたならそれでいいんじゃない?』って言ってくれて。」


ゆき「優しい親戚だな。」


陽斗「はい。とっても…」


ゆき「支えてくれる家庭がいるっていいな。」


陽斗「そうですね。」


ゆき「………。」


陽斗「ゆき?」


ゆき「ん?あぁ、すまない。もうこんな時間か。また明日会おう!ではな!」


陽斗「あ、まって、ゆき!!」


ゆきはその場を去る







エピソード6:『進展』


桜の木の下で鼻歌を歌うゆき


陽斗「ゆき…。」


ゆき「なんだ?浮かない顔をして?」


陽斗「昨日、ゆきがあんな悲しい表情を見せてたから。」


ゆき「そうか?」


陽斗「そうだよ!でも、ゆきは多分聞いても、何も答えてくれないと思うから。」


ゆき「そうだな。いずれ話す!その時まで待っててくれ。」


陽斗「その言葉、本当に信じていいの?」


ゆき「あぁ、信じてくれ。」


陽斗「わかった!信じる!」


ゆき「陽斗はすごいな。」


陽斗「なにが?」


ゆき「そうやって、私を信じてくれるから。」


陽斗「『信じろ』って言われたら、信じるしかないでしょ?」


ゆき「まぁ、たしかにな。」


陽斗「それだけだよ。」


ゆき「そうか。」


陽斗「うん。」


ゆき「なんか、すまないな。」


陽斗「え?なんで?」


ゆき「暗い感じになってしまって。」


陽斗「あ、いえ。元はといえば、僕がこんな話をしたから…」


ゆき「そんなことはない。」


陽斗「………。」


ゆき「時に陽斗、何か困ってることあるか?あるならお姉さんが相談に乗ってあげようか??」


陽斗「唐突に!?それにお姉さんって。ゆきは歳いくつ?見た目は僕より下に見えるけど?」


ゆき「女性に年齢を聞くのは失礼だぞ?」


陽斗「あぁ、ごめん。」


ゆき「真剣に謝らないでくれ、冗談で言ったから。」


陽斗「え、そうなの?」


ゆき「そうだよ。ちなみに君はいくつだ?」


陽斗「僕ですか?僕は16ですけど?」


ゆき「そうか、やはり私の方がお姉さんだな。」


陽斗「じゃあ、いくつなんだよ!」


ゆき「教えない。」


陽斗「は?なんで?」


ゆき「謎多き女性は素敵だろ?」


陽斗「何言ってんだよ!で、いくつ?」


ゆき「そんなに知りたいのか?」


陽斗「焦らさないで教えてよ。」


ゆき「わかったよ。年齢は17だ。」


陽斗「え!?一つ上!!意外…」


ゆき「だからお姉さんと言っただろ?」


陽斗「いや、もしかしたら学年が一緒かもしれないだろ?」


ゆき「学年か~。」


陽斗「そうそう!」


ゆき「………。」


陽斗「なんで黙るの?」


ゆき「すまない。もう時間だ。また会おう!」


陽斗「うん。またね!」






エピソード7:『予定』


はにかむように桜の木を眺めるゆき


陽斗「ゆき~」


ゆき「おう、陽斗か。」


陽斗「なんか今日は清々しい表情だね」


ゆき「そうか?そうかもしれないな。」


陽斗「何かいいことあった?」


ゆき「まぁ、そうだな。」


陽斗「そっか。よかったね!」


ゆき「うん。さて、陽斗。」


陽斗「ん?なに?」


ゆき「明日、暇か?」


陽斗「暇といえば、暇だけど…」


ゆき「ならば明日、出かけてくれないか?」


陽斗「いいけど…どこに?」


ゆき「遊園地だ。」


陽斗「遊園地!?なんで?」


ゆき「行ったことがなかったからな。」


陽斗「そう…だったんだね。」


ゆき「あぁ、だから行ってほしい。」


陽斗「僕でいいの?」


ゆき「うん。陽斗がいい。」


陽斗「わかった!じゃあ、行こう!」


ゆき「ありがとう。」


陽斗「どういたしまして」


ゆき「今日はここまでにしよう。」


陽斗「え?」


ゆき「遊園地の準備のために」


陽斗「あぁ、そうだね。」


ゆき「では、また明日の朝、ここで会おう。」


陽斗「うん、わかった!また明日ね!」






エピソード8:『遊園地』


桜の木でゆきが来るのを待つ陽斗


ゆき「おはよ、陽斗。待たせたか?」


陽斗「おはよ!ううん、待ってないよ。今来たところ。」


ゆき「そっか。」


陽斗「うん。というか、遊園地なんて久々だから、うまく眠れなかったんだよね。」


ゆき「小学生かっ!」


陽斗「しょうがないだろ!楽しみだったんだから」


ゆき「あはははは。」


陽斗「笑うなって!」


ゆき「面白いなぁ。陽斗は」


陽斗「うるさいなぁ…」


ゆき「照れてるのか?」


陽斗「照れてるよ!悪いか」


ゆき「そっか。可愛いな。」


陽斗「からかうなよ。」


ゆき「はいはい。」


陽斗「ほら、いくよ!」


遊園地に到着する


陽斗「到着だぁ~」


ゆき「遊園地、来たな。」


陽斗「まずどこから回る?」


ゆき「そうだな、観覧車から。」


陽斗「観覧車?わかった!じゃあ、行こう!!」


観覧車に乗る2人


ゆき「ゆっくり進むんだな。」


陽斗「そうだね。」


ゆき「だんだんといろんなものが小さくなってきている」


陽斗「上から眺める景色、綺麗だな。」


ゆき「あぁ、綺麗だ!」


陽斗「久々に来たけど、楽しいな!」


ゆき「陽斗のおかげだ。」


陽斗「僕は、なにもしてないよ。」


ゆき「一緒に来てくれたじゃないか。」


陽斗「それは、ゆきが誘ってくれたからでしょ?」


ゆき「そうだが、こうやって一緒に回ってくれる人がいなかったからな」


陽斗「そっか。」


ゆき「うん。」


2人観覧車から降りる


陽斗「次はどこに行きたい?」


ゆき「ん~、そうだな~。あそこに行ってみたいな。」


陽斗「お!いいね~行こうよ!!」


いろんなアトラクションを楽しむ2人


ゆき「楽しかったな。」


陽斗「うん。楽しかった!また来ようね!!」


ゆき「あぁ、そうだな。」


陽斗「うん。」


ゆき「さて、そろそろ帰らないと…」


陽斗「もうそんな時間?」


ゆき「あぁ。帰らないと」


陽斗「じゃあ、帰ろっか」


ゆき「あぁ…」


ゆき、倒れる。


陽斗「おい、ゆき?ゆき!!」






エピソード9:『真実』


陽斗、桜の木を眺める


ゆき「陽斗。」


陽斗「あ、ゆき。久しぶりだね。」


ゆき「この間は、すまなかったな。」


陽斗「ううん。それより体調は大丈夫なの?」


ゆき「………。」


陽斗「ゆき?」


ゆき「陽斗、君に黙っていたことがある。」


陽斗「え?なに急に。」


ゆき「私はゆきであって、ゆきじゃない。」


陽斗「は?」


ゆき「………。」


陽斗「え?なに?なぞなぞ?」


ゆき「違う。」


陽斗「急に冗談なんか言っちゃって、どうしたの?」


ゆき「冗談なんかじゃない!」


陽斗「どういうこと?」


ゆき「………。」


陽斗「いや、だって、ゆきはゆきだろ?なに急に訳のわかんないこと言ってんだよ!」


ゆき「……。」


陽斗「なんとか言えよ!」


ゆき「…陽斗、これで君と会うのは最期だ。」


陽斗「はあ!?どうして?」


ゆき「春菜が、目覚めようとしてる。」


陽斗「どういうことだよ!?春菜って、誰だよ!!」


ゆき「春菜は、私の本当の名前。」


陽斗「は?」


ゆき「私は、解離性同一性障害。」


陽斗「え?解離性同一性障害?」


ゆき「そうだ。私は親に身体的、精神的虐待を受けていた。」


陽斗「………!?」


ゆき「それで私は生まれた。目覚めた時はびっくりした。獣(けだもの)が、私を襲ってきた。私はどうしようもできず、されるがままだった。」


陽斗「………。」


ゆき「その獣が父親だということを知った時、絶望的だった。」


ゆき「耐えればなんとかなると思い、ずっと過ごして来た。」


ゆき「そんなある日、警察が現れ、私は保護された。そして、それからは病院で過ごすようになっていた。」


陽斗「そう…だったんだね。」


ゆき「病院で過ごすようになってから、春菜が回復するために、私は協力して行っていた。」


ゆき「それで散歩中に、この桜の木を見つけた。」


ゆき「そんなある日、君と出会い話しかけた。」


陽斗「………。」


ゆき「この木があったからこそ、君と出会えた。そして楽しく過ごすことができた。本当にありがとう。」


陽斗「ゆき…。」


ゆき「おっと、もうこんな時間か。」


陽斗「もうそんな時間なの?」


ゆき「あぁ。」


陽斗「そっか。」


ゆき「では、また会おう!」


ゆき「この『桜の木の下で』」


陽斗「うん、またね。ゆき…」


ゆき「あぁ、またな。」








エピソード10:『前へ』


ゆき、桜の木で陽斗を待つ


陽斗「お待たせ!」


ゆき「おう、陽斗か。」


陽斗「え?ゆき!?」


ゆき「ん?」


ゆき、目から涙が流れる


陽斗「なにがあったの?!」


ゆき「私は、もう消えなければならない。」


陽斗「はぁ?なんだよそれ!」


ゆき「春菜が完全に回復したんだ。だから…」


陽斗「そんなの嫌だよ!」


ゆき「わがまま言わないでくれ。」


陽斗「だって、ゆきは…ゆきは!!」


ゆき「あぁ、消える。」


陽斗「どうして平気でいられるんだよ!!」


ゆき「平気なわけないだろ!!」


陽斗「………!!」


ゆき「私だって、私だって消えたくない!!でも、春菜には大きくなってほしいから。」


陽斗「………。」


ゆき「………。」


ゆき「さよならだ、陽斗。君に会えて良かった。」


陽斗「………。」


ゆき「そんな悲しい表情をするな。こっちが悲しくなる。」


陽斗「ごめん…」


ゆき「謝らないでくれ。謝るのはこっちのほうだ。」


陽斗「ゆきのせいでもないだろう。」


ゆき「………。」


陽斗「例え…」


ゆき「ん?」


陽斗「例え、誰もがゆきのことを忘れたとしても、僕は忘れないよ!」


ゆき「うん、ありがとう…。」


陽斗「うん。」


ゆき「そうだ、陽斗。」


陽斗「ん?」


ゆき「春奈と友だちになってやってくれ!それが、私の最期の願いだ。」


陽斗「わかったよ。」






エピソード11:『桜の木の下で』


春菜ベットから目覚め、手紙を見つける。


春菜「ん?手紙?」


春菜「君の大切な人が『桜の木の下で』待っている。」


春菜「なにこれ。誰が書いたのかな?桜の木ってどこなんだろう?」


春菜「それに、ゆき?いったい誰だろう?…思い出せない。」


春菜「とにかく、行ってみよう!」


春菜は桜の木へ向かう


春菜「うわぁ、綺麗!!」


春菜「この桜の木で本当に合ってるのかな?」


春菜、桜の木の下に到着し桜を眺める


春菜「それにしても、綺麗だな~。もう桜が満開だ。」


陽斗「そこの少女。…少女!!」


春菜「え?!わ、私ですか?」


陽斗「そうだよ。君以外に少女がどこにいるというのかね?」


春菜「ふふ、変な人。でも、なんだか…懐かしいな。」


陽斗「え?」


春菜「どこかで、このやり取りをやったことあるような…」


陽斗「………!!」


春菜「あなたとは初めてなのに…不思議。」


陽斗「それは、初めてじゃないからかもよ?」


春菜「なにそれ?変なの。あはははは…」


陽斗「僕の名前は陽斗(はると)。君は?」


春菜「私は春菜(はるな)。」


陽斗「よろしくね。」


春菜「うん。よろしくね。」


陽斗(M)「雪が溶けて、春になる。」


陽斗(M)「芽吹く季節の物語。」


陽斗(M)「さぁ、新たな君と始めていこう!」


陽斗(M)「この『桜の木の下で』」








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