4話

◆知る

 それから、数日後の事だった。勇は夕飯をテレビのニュースを見ながら食べていた。すると、男性アナウンサーがこんなニュースを読む。


「無免許業務を行ったなど、弁護士法違反の疑いで、自称弁護士の倍賞充容疑者と、事務長時任彩容疑者を逮捕しました」


 勇は、ふと目線を上げた。すると、テレビ画面にバイオレットとオレンジの「地球人」としての姿を見た。


「ええっ?」


 勇は、思わず大きな声を上げてしまった。それを受け、父親が言った。


「どうした?知ってる人か?」

「えっと、ち、違う」


 勇は知った。バイオレットは倍賞充として、オレンジは時任彩としてこの地球に潜伏していた事を。しかし、こうも思った。「警察に捕まっているんだったら、しばらくカラミティは出てこない。よかった」と。


 更に数日後の朝だった。勇は登校前の朝食も、テレビのニュースをお供に食べていたが、ニュースはとある話題で持ちきりだった。警察署が破壊され、警察官らが死傷したと。


「確か、この警察署は」


 そう、充と彩が捕まっていた所だった。


「まずい、逃げた」


 再び、バイオレットとオレンジとの戦いが待っている事を意味した。


 登校すると、早速涼と晴に勇は言った。


「知ってる?バイオレットとオレンジが警察に捕まってたの。それで、昨日、その警察署が壊されちゃったって」


 晴は苦々しそうに言った。


「ああ、それは知ってる」


 涼も返す。


「警察には手に負えないよ。あの2人は」


 勇はうなだれた。そして、こう言った。


「また、カラミティを使ってくるよ。あの2人。今度はどこに来るんだろう」


 そんな様子を愛は見て、話しかけてくる。


「朝から、どうしたの?」


 勇は慌てたように言った。


「えっ!えっとね?」


 涼がそれに返した。


「僕たちの『敵』の事だよ」


 晴は言った。


「まあ、来たら来たで、やるだけだ」


 勇は言った。


「うー、頑張るっ」


 愛の心配そうな声が勇に届く。


「また、あの怪物と戦うの?大丈夫?」


 勇はこう返す。


「うん、僕も『ヒーロー』だもんね!カラミティが来たら、やるっ」


 愛は、こう言ったが、始業を知らせるチャイムが鳴り、話はそこで終わった。


「無茶しないでね?」


◆警戒の日々の中で

 それからと言うものの、勇たちは、カラミティの出没に意識を研ぎ澄ます日々を過ごす事になる。今までカラミティが出た所に度々足を運ぶ。


 そんなある日、過去出没した所ではない道端で勇たちは充と彩に遭遇。勇は言った。


「ば、倍賞充!それに、時任彩!」


 彩は言った。


「どうしてその名前を?」


 充は鼻で笑いながら言った。


「おおかた、『あの情報』を見たんだろ?」


 そして、充はバイオレットに彩はオレンジに変身した。


「プラネットクラッシャーアースバイオレット」

「プラネットクラッシャーアースオレンジ」


 勇は気合いを入れ、言った。


「涼!晴!」

「うん!」

「ああ!」


3人の揃った声が響く。


「解き放て!守りの力!!」


 赤、白、黄色の戦士が名乗る。


「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」

「流るる水は大いなる癒し。アースセイバーウォーター」

「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」


 再び3人の声が響く。


「レッツ!セイブ!!」


 それと同時にバイオレットとオレンジの揃った声が。


「カラミティ!」


 と。ウイングは問うた。


「そうやって、警察署も壊したのっ?警察官たちを殺したのっ?」


 オレンジは無表情でウイングを見つめる。バイオレットは笑って言った。


「俺様たちを拘束しやがった奴らに『カラミティなんて甘い制裁』加えるとでも思ってるのか?」


 ウォーターとファイアの顔が引きつった。ウォーターは、言った。


「ウイング!それは!!」


 ファイアは言った。


「おい、バイオレットさんよ!聞かなかった事にしろよ?ウイングの言葉」


 オレンジがバイオレットに代わって言った。


「聞いちゃったわよ?」


 ウイングはカラミティと戦いながらもウォーターとファイアの慌てぶりに疑問の目を向けた。そして、呟いた。


「え?僕、変な事言った?」


 その瞬間、オレンジが言った。


「カラミティ、下がれ!」


 そして、バイオレットが言った。


「警察署を壊した方法、見せてやろう。俺様がな」


 その言葉に、オレンジの口角が上がる。そして、バイオレットは声を上げた。


「ターゲット・デモリッション!」


 紫の塊がバイオレットから発射された。それは、広がりながらウイング、ウォーター、ファイアを包んだ。そして、一瞬にしてウォーターとファイアは意識不明になり、倒れた。一方、ウイングは無傷であった。


「ウォーターっ!!ファイアっ!!」


 ウイングの焦りの声が響く。しかし、その2人には届かない。オレンジはそれを見て言った。


「やっぱり、地球の守護者には、簡単には効かないわね」


 ウイングは、バイオレットとオレンジの元に走り寄る。


「よくも!ウォーターとファイアをーっ!!」


 オレンジは引き続き笑った。


「私たちを責めるの?あなたが見たいって言ったのよ?警察署を壊した方法を、ね?」


 バイオレットも続く。


「見せてやったぞ?満足だろ?」

「そんな、そんな事は、言ってないっ!!」


 ウイングはでたらめなパンチをバイオレットとオレンジに浴びせかけた。


「うあああっ!!」


 しかし、そのパンチはバイオレットとオレンジを倒すには至らない。オレンジが言った。


「いいマッサージねぇ」


 バイオレットが笑いながら言った。


「痒いぞ!!」


 ウイングは再び声を上げる。


「僕の!僕のせいで!ウォーターとファイアがーっ!!」


 バイオレットの笑いは、オレンジにもうつる。オレンジはその中で言った。


「あーあ、『かわいそう』やめてあげましょうねー、坊や」


 バイオレットは返した。


「そうだな」


 そして、バイオレットはウイングの右手の拳を掴み、そのまま、地面に体ごと叩きつけた。そして、2人は充と彩になり、去って行った。脅威は去った。ウイングの変身は解ける。


「涼!晴!」


 しかし、未だに涼はウォーターのままで、晴はファイアのままだった。


「ごめん!ごめん!ウォーター!!ファイア!!」


 勇の目に涙が浮かびそうになった。その瞬間、ウォーターとファイアは目を開けた。そして、すぐに涼と晴に戻った。勇は再び叫んだ。


「ごめん!ごめん!涼!!晴!!」


 涼は微笑んだ。


「勇が無事なら、いいんだよ」


 晴は安堵のため息をつき言った。


「気にすんな。よかったぜ、勇が何とも無くて」

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