第7話

『お目当ての娘がいねぇな。途中で降ろしたのか。ボスの家まで送った善人なんじゃねぇのかな。善良な市民を撃っちゃまともに生きていけねぇよおれ。』


毒島が、とぼとぼと歩いてきた。


『人質をとるやつのどこが善良なんだ。とりあえず、娘の場所を聞いて、あの女の子を返さねぇとな。警察に渡すとめんどくさいからな、マクドナルドまで送ってポテトと一緒におさらばしようぜ。』


桃が提案し、あそこに行けばきっとスマイルになるな。と毒島が同意する。

林檎が質問をする。質問の前に指を折っていたため、すでに拷問になっていた。


『お前らが攫ったもう一人の子はどこだ。あの女の子はなんだ。』


簡潔に冷淡に伝える。


『命令があって途中で降ろしたんだよ!あの女は俺たちが攫ってるのを目撃したから始末しようとしたんだよ。言指示されただけで、これしか知らねぇ。なぁ喋ったから助けてくれよ!』


死が近づいた途端に醜く屈服し、こんなにおしゃべりだったのかと知って、林檎は吹き出しそうになる。


『降ろした後は知らねぇ。おれは、指定されたビルにあいつを送るまでが仕事だったんだ。』


聞いてもないのにべらべら喋るのを見て、桃は微笑むように嘲笑う。

林檎は、桃からジャックナイフを借り、男の右手小指の爪を荒く切り取り、右のふくらはぎにナイフを突き刺す。赤黒い血が垂れ、呻き声が響く。毒島は、マクドナルドでなにを頼もうか楽しみにしていたところでそれを見て、いちごのシェイクも付けてやるよ。と女の子に伝えた。


『どこで降ろして、どこへ向かった。』


ふくらはぎに刺さったナイフを捻りながら聞く。

男は、泣きながら降ろしたビルの場所を叫び、降ろしたあとはほんとに知らねえ。と命乞いの代わりに、情報を吐き出す。林檎は、音もなく男の首に刃を通し、温かい血が道路の端に隙間なく敷き詰められ、日光が軽く照らした。


『俺は、チーズバーガーとナゲットにしよう。』


男の服でナイフを拭いている林檎を見送りながら桃が言う。


『私はいらない。』


林檎が呟き、運転席に戻ってエンジンをかける。女の子は、自分の名前は柚子、と警戒しながら毒島に名前を伝えた。


『あ、あと、私はバニラシェイクの方がいいんだけど。』


救ってやったのに、シェイクの融通が効かないのか、と毒島はむすっとし、空のペットボトルで柚子の頭を軽く叩いた。


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