話の展開は王道のショートショート。しかし描いているのはかなり深い。ほぼ哲学を文学でやっている、そんな作品です。 個としての死、あるいは存在としての消滅。それがなくなってしまった時、意識は果たして「生きている」という概念をどう理解するのだろうか? そんなことを考えさせられる作品です。記憶の保管、バックアップ、そして復元。SFでは比較的扱われることのあるテーマではあるのですが、本作はそこから生じるオチまで掌編の中で見事にまとめており、完成度の高い一作だと思います。 お見事!