第二十七話 『刺客を退け、信頼を得たら、次は女王奪還らしいです ──怠け者、国家規模の面倒に巻き込まれる。
「あのおばちゃん...... おねえさんも簡単に教えてくれたな」
おれは店をでたあと、森にある小屋に向かった。
そこはすぐ見つかった。 ただ警備もなく、本当にただの小屋だった。
「まじで小屋だな...... 本当にこんなとこにいるのか? あの」
「なんだ?」
扉をノックすると剣を腰にさした鎧姿の女性がでてきた。
「あのハルメシアさまにお会いしたいんですけど」
「わたしにか」
女性の後ろからはおれより長身の女性があらわれる。
「えっ? まさかあなたが......」
「ああ、わたしだよ。 なんのようだ。 まさか中央のやつじゃないだろうね」
「本当に? いや本物じゃないなら、困るんですけど」
「失礼な!」
隣の女性がこちらを睨み付けた。
「まあ、落ち着けレイナ。 わたしは本物だ。 といっても君が信じるかはわからないが」
(わからん...... こんな小屋に領主がすむのも変だし、あのお姉さんが簡単に教えるのも妙だ。 もしかしたら大臣の手下の可能性も......)
「......なんのつもりだ」
そういってレイナと呼ばれた人は腰から剣をぬき、もう一人の女性も背丈ほどの大剣を女性はぬいた。
「いや、おれは別に戦いにきたわけじゃ......」
しかし、その目はおれの後ろに向けられていた。 振り向くと黒い装束のものが数人いた。
「なんだこいつら......」
黒装束は無言で短剣をだすと、左右に動きつつこちらに迫る。
(こいつら刺客!)
「どきなさい!」
おれの横をとおりレイナはその剣を振り下ろした。 二人ほど一瞬で切り裂く。
「すまないがすこし待っていてくれ」
長身の女性が大剣をふるうと、その衝撃が黒装束を吹き飛ばす。
「うおっ!」
「くっ......」
後ろにいて黒装束がナイフを投げようとした。
(あいつ!)
「第二の
そのナイフを取り上げる。
「なっ! どこに...... ぐはっ!!」
混乱している黒装束を、一瞬で近づいたレイナは剣のつかで殴り付けた。 黒装束は苦痛の声をあげ、木にぶつかり意識を失った。
「ふぅ...... これは、どうやら君の力か」
空中に浮かぶナイフをみて、長身の女性はこちらに聞いた。
「そうです。 どうやら本物みたいですね。 ハルメシアさま」
「......なるほど、そういうことか」
ハルメシアさまは手紙を読んでため息をついた。 小屋に招かれたおれは、女王の手紙をわたしていた。
「あいつらは、おれを狙ってたんですかね」
「多分両方だろうな。 わたしたちが出会うのを阻止できなかったため、命を狙ったのであろう」
「それでどうするんですか?」
「もちろん、女王を救出する」
「とはいえ、ハルメシアさま。 我が領地にはそれほどの兵はいません。 それにみなモンスターに警戒すべく、町の外を警護しています。 わたしたちがでればここが......」
レイナさんが眉をひそめる。
(ここの警護がいないのはそのためか...... 本人がこれほど強いなら、おねえさんも簡単に居場所を教えるわけだ。 ただ兵もなく王女の奪還は難しいな)
「そんなにここはモンスターが多いんですか?」
「いや、ほとんどいない。 ただ災害指定モンスターの【カイザーゴーレム】がサタリー山にいてな。 降りてこられるとかなりの被害がでる」
そうレイナさんがいった。
(サタリー山......)
「カイザーゴーレムって岩みたいな人型のモンスターですか?」
「ああ、しってるのか?」
「そいつかはわからないですが、サタリー山を登ってきたとき襲われました。 そいつは崖下に落としましたけど......」
「なに!? ほんとうか!」
「レイナ、ここはいい。 確認してくれ」
「はっ!」
そういってレイナさんは足早に外にでていった。
「それにしても何者だ君は...... この国のものじゃないだろ。 なぜ女王に関わっている。 手紙には信頼できるとあるが......」
「おれはシュン。 隣のタルシオンで冒険者ギルドをつくってるんですけど、そこにルードリヒを加えたいんです。 それでルードリヒが女王を助ける手伝いをしています」
「確か騎士団の元副団長だったリンドール家のお嬢さんか...... なるほどな仲間にするために彼女の願いを聞いたというわけか」
「それにどうやらグレンベル大臣が錬金術師のグアレナとモンスターを使って戦争をしようとしているからですね」
「なるほど、グアレナ...... あの胡散臭い仮面のやつか。 グレンベルは前王がなくなると女王の後見人となって、自分に逆らうものを追放したからな...... 充分にあり得る話だ......」
そうハルメシアさまは腕を組み、厳しい顔をした。
「ハルメシアさま!」
外からレイナさんが走って帰ってきた。
「どうだった?」
「はい、確かに山の下で砕けているカイザーゴーレムをみつけたとのこと」
「なるほど、どうやら君の話は本当のようだ」
「それでどうしますか?」
「むろん兵をむける」
「でも、ここの手勢だけじゃ、とても女王は助けられないのでは?」
「そうだな。 だが君かいる」
「えっ!?」
「すこし力を借りたい」
「えええええ!!!」
おれはハルメシアさまに頼まれ動くことになった。
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