第二十六話 『サタリー山突破! そして現れたのは岩の巨人』──スキル全開、領主に会うために。
「女王を助ける必要がある......」
ルードリヒがそういう。
「本気か! 城は全員敵だぞ! つまり国中敵ってことだ!」
「仕方あるまい。 このままだと戦争になるぞ」
「そうですわ! なんとかそれをとめないとですわ!」
「はぁ、なんでこんなことに...... それでそのハルメシア卿とやらに話をするのか、どんなやつだよ」
「ああ、元々貴族でありながら豪放磊落、型破りな方だ。 おそらく力を貸してくれるだろう」
「ということは、そいつは監視されてんじゃないのか。 俺たちみたいに」
宿の外に数人、こちらを監視しているやつがいた。
「おそらくな...... 会いに行けば、必ず我々の企みをしり、女王に危険が及ぶ可能性があるな」
「女王からもらった手紙はだせないのですわ?」
「検閲されるだろうな」
「それなら、ミリアに届けてもらえば、見つからんだろう?」
そうディムリアがいう。
「こちらに妖精がいることがばれているから、その可能性もつぶさられるだろうな」
「おいおい、じゃあ、どうやってばれずに接触するんだ?」
「すまないがシュンが一人で会いに行ってくれ。 君の能力なら追手をまける」
「そうなるのか......」
「この件がすんだら、君たちの仲間になろう」
「やるしかないですわ!」
「そうじゃな。 戦争を防がねばそなたの夢もなくなるじゃろう」
「確かにな、しかたない。 やるか」
おれは宿泊客に紛れて外にでて、森にはいると足をはやし追手を振り切った。
「ふぅ、やっと逃げられたな。 さてどうやってハルメシア卿とやらに会うかだが......」
ルードリヒの話では、ハルメシアのいる【グシェス】にむかう街道には関があり兵士がつめている。 唯一険しい山がある【サタリー山】だけは入ることができるらしい。
「サタリー山を越えればいいのか。 そこは外の道とは違い短時間で抜けられるらしいが......」
さっそくむかう。
「ここかよ」
かなり荒れた山で道もない。 岩がごろごろと足元にあり、歩きづらい。
「道もない、だから誰も通らず関もないのか」
遠くに見える山をみてためいきがでる。
「くそっ、やるしかないか」
おれは足を増やし、肺をつくると山を登り始めた。
「はぁはぁ、なるほどここはヤバイな。 高所で空気がうすい。 スキルを使わなかったらとても登れない。 そりゃ通行人も兵士もいないはずだ...... ただもう少しで越えられる」
ドガッ! ドガッ!! ドガッ!!!
「なんだ......」
山を越えようとしたとき、地鳴りがする。 頭上にある目でみると人型の岩のような巨大なモンスターがこちらに向かってくる。
「まさかここでモンスターかよ! しかも、なんてでかさだ!」
おれは近づいてくるモンスターに腕を増やして矢をはなつ。 その岩のような肌に刺さるが、モンスターはかまわずそのまま進んでくる。
「ウガアアアアーー」
「くそっ、体が全部岩できてんのか! 刺さっても効いていない! どうやってうごいてんだ!?」
おれは足を生やして逃げる。
「くそっ、あの巨体で悪路を無視して走ってくる!」
崖まで追い詰められた。
(やばい! あんなのに殴られたら終わりだ! 腕を複数目の前につくるか! いや吹き飛ばされて崖下におちる!)
「ガアアアア!!」
「やるしか! 第二の
おれは走ってくる岩巨人の目の前まできたとき、崖へと後ろにとんだ。
(よし、第二の
空中にだした腕を蹴り岩巨人の上を飛ぶとその後頭部を増やした足で何度も蹴った。
「ガガか...... ガ...... ガアアアアァァ......」
バランスを崩した岩巨人は崖下へと落ちていった。
「はぁ、助かった......」
おれは山を越え、グシェスへとはいった。 町を訪れると、そこは賑やかで驚いた。 だが城は見えない。
「なんだ...... 王都はみんなくらい顔をしていたのに、ここはみんな明るいし、人も多いな。 いや今はハルメシア卿に合わないと......」
近くの飯屋で食事をとりながらそれとなく話を聞く。
「おばちゃん、このまちなんかにぎわってんね」
「おねえさんな」
「おばちゃん、すごい人おおくない?」
「おねえさんな」
「おねえさん......」
「なんだい? どこからきたんだい?」
「隣のタルシオンだよ。 この国の王都に先にいったけど、あそこはみんな暗かったからさ」
「......ああ、そうだろうね。 あっちはかなり税金は高いのさ。 ここはハルメシアさまが中央の要求を突っぱねてるからね。 税金もやすくて、賄賂なんかも求められないから商売もやりやすいんで、商人が集まってくる」
(なるほど、確かに型破りな領主らしいな)
「それでハルメシアさまってどこにいるんだ? 城はないんだけど?」
「あの方は城を補修しなかったからね。 今は小さな小屋にいるんだよ」
(そんな領主がいるのか)
おれはその小屋の場所をそれとなく聞いた。
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