第二十五話 『キメラの核と、王国の嘘』──少女女王と造られた災厄。

 遠くから現れたそのモンスターは猛獣のような体頭は三つ、とかげ、ヤギ、ライオン、羽が生えていた。


「なんか三つの顔があって生物が複数、混ざったような姿だな。 あれかルードリヒ?」


「ああ、外見がすこし違うが、騎士団がであったのとほぼおなじ姿だ間違いない。 そいつは魔法があまりきかない。 物理的な攻撃しかない」


(やはり、セリエスがいれば......)


「おれとルードリヒがいく。 ミリアとディムリアは蒸気をたのむ。 奴らにもしられたくないしな」


「わかった」


「はいですわ」


 ディムリアの魔法で炎をはなち、ミリアの水で蒸気が発生する。


「ルードリヒ、おれの指示で動いてくれ」


「わかった」


 おれたちはキメラに近づき、攻撃をしかける。 しかし攻撃は空を切る。


「かわされた!? ルードリヒ右だ!」


「だめだ! 切ろうにもここにはいない!」


「今移動してかわした!」


 炎がこちらに向かう。


「ぐっ!」


「私の後ろに!」


 炎をルードリヒの盾で防いでもらう。


(なんだこの蒸気の中でも姿が見えてるのか!)


「ミリア風で蒸気を消してくれ!」


「は、はいですわ!!」


 風でキメラの姿があらわれた。



 キメラは左右に俊敏に動くとその牙で噛みつこうと向かってくる。 それをルルードリヒは盾で防ぐ。


「魔法も使えないですわ! どうするですわ!?」


「ふむ、我らは魔法が使えねば戦闘力が皆無じゃ」


「わかった。 とりあえず二人は囮になってくれ、骨は拾う」


「ふざけるなですわ!」


「誰かが犠牲となり、ほかをいかすしかあるまい!」


「お前が犠牲になれ!」


「三人とも争ってる場合じゃない!」


「ルードリヒ、あいつをまえに倒したんだよな。 弱点とかないのかよ!」


「そうだ。 かなりのかたさを誇ったが、胸のしたあたりを槍で突くと倒せた。 そのとき、なにかが砕ける音がしたような......」


(なにかが砕ける...... 骨、いや、とにかく今はそこを狙うしかないな!)


 おれは剣をキメラに投げつけた。


「なにをするんじゃ!?」


 キメラはそれを避けもせず、当たるが気にせず口を開けた、そこは赤く光っている。


「炎がくる!! これ以上はかれると焼け死ぬぞ!」


「【第二の器官】二層、腕!」


「ギャウッ!! ウウ......」


 なにかが砕ける音がするとキメラは横倒しになった。


「なっ......」


「なにをしたのですわ?」


 倒れたキメラの胸に剣が深々と刺さっている。


「見えない腕で地面から胸をさした」


「なるほど、それで剣を投げたのか。 なにをしておる?」


 刺さった剣をぬくと、キメラから砕けた赤い結晶がポロポロとおちてきた。


「これは...... デザートワームの研究所でみた」


「そうですわ。 魔力の塊ですわ」


「うむ、間違いはなかろう」


「そんなものが......」

 

 ルードリヒは怪訝な顔をした。


「ああ、こいつで操ってたんだろう。 もしくはこの体を維持するために必要なものなのかも」


(そうなると、おれが持ち帰ったものを調べる必要があるな。 こっちをみていたあいつらももういなくなった)


「だが、これで女王にあいにいける」


「ああ、そして真意をきき、これからなにをするか考えよう」


 ルードリヒはそういい、おれたちは森をでた。



「あなた方が指定災害モンスターを倒してくださった。 シュンさまたちですね」


 そう王座には似つかわしくない、おとなしげな少女がそういう。


(彼女がメーレ女王か...... なにかおどおどしているな)


「はい、彼らの協力でなんとかモンスターを倒すことができました」

 

 そうルードリヒは答えた。


「なれば、そなたらに報奨をあたえよう。 さあ下がるがよい」


「おまちくださいませ大臣。 我が家、リンドール家は代々この国に仕える貴族。 女王に拝謁するのは栄誉なこと、しばしの歓談をお願い致します」


「ならぬ。 女王は政務でおつかれだ」


 ルードリヒのほうを女王はみつめる。


「......いいえ、お茶ぐらいならばできます。 私の部屋へ」


 そう静かに女王は答えた。   

 

(女王もはなしたがっている......)


「......わかりました」


 大臣は渋々引き下がった。


 おれたちは女王の部屋に招かれる。


 女王は部屋にはいるとそわそわしている。


(警戒しているのか)


 第二の器官セカンドオーガンの目で部屋の周囲を確認すると、外に兵士とは思えないものが聞き耳を立てていた。


(こいつら監視してやがる)


 おれは紙を取りとりだすと、ルードリヒにそれをつたえる。


「......女王さまにおかれましては、すこしやつれておいでのようす」


 そういうと、ルードリヒは女王に紙になにか書いてわたした。


 女王は顔色を変え、同じように紙になにか書く。


「ええ、大丈夫です。 すこしつかれているだけ......」 


 そういって紙をみせた。


『私は今軟禁状態にあります。 城には大臣を始め、私の意見をきくものはほとんどいません。 私に忠誠があったものはほぼ追放されました』

 

 そう書いてある。


(なるほど、実権を奪われているのか)  


 表向きの他愛のない談笑をしながら筆談を続ける。 ディムリアはバカ笑いしながらお茶菓子をくいまくっている。


『女王は、モンスターをの製造に関与していますか?』 


『モンスターを製造、いいえ。 ですがあの錬金術師のグアレナというものが、大臣とモンスターについてはなしているのをききました。 どうやらなにかをたくらんでいる様子』


『どうやら、やつらは隣国を攻めるためにモンスターをつくっているようなのです』


『やはり、その事がきになり誰かに相談したく思っていました。 ただ監視もきつくてどうすることもできません』 

 

(かなり聡明な子のようだな。 さてどうする?)


『誰か頼れるものはいませんか?』


『ハルメシア卿ならば、力となってくれるかもしれません』


『ハルメシア...... 確かに中央には従わない豪胆な方とはきいています』


『ハルメシア卿にお会いしてなんとかこの事をお伝え願いませんか』


 そうやって女王からの手紙をあずかりおれたちは城をでた。 追跡してくるものがいたので宿に泊まることにした。


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