第6話 村から出られない

翌朝は、日曜日の為に学校がないのでゆっくりと起床した。布団の中でスマホを弄りSNS巡りをした。


都内にいる時にはインスタやXで紹介されたカフェ等は直ぐに行けたが今は観ているだけ。


(良いなぁ)


と思っても口に入る事は無い。そう思うと光輝が羨ましい。ただ彼は行かないけど。カフェ巡りに誘っても10回に1回しか来てはくれない。


(お前と違って忙しい。)


これが定番の断り文句。これの何処がデートする程仲が良いになるのか。奈緒の恋愛脳が偏っているとしか思えない。


(カフェ行きたい。)


とSNSにメッセを送った。忙しいと言う割に光輝からの返信は早い。


(村にはカフェないんじゃない?)

(無いから言ってんの!ここ良くない?)


インスタで見つけたカフェ情報を転送した。


(お前出て来られないだろう。)


確かに学校があるから中々行けないけど、全く無理と言う事は無いと思う。


(休みにそっちに行くよ。)


光輝が付き合ってくれるのかと期待をしながら返信を待っていると、予想もしない言葉が連なっていた。


(お前はもう村からは出られない。そんな事ないと思うなら試してみな。)


休みがあるのに出られない訳がない。光輝は何を言っているのか。理解に苦しむ。


(土日で行けば良いんじゃない?泊めてくれたら行けるし。)


ムキになって返信した。


(俺は村との制約で詳細を伝える事は出来ない。ただ俺の言う事が信じられないなら、今から村を出てみろ。)


光輝の返信に余計訳が解らなくなったが、百聞は一見に如かず。試して見る事にした。


駐在所を抜けて、舗装されていない土と草と小石が転がる道を歩いて行く。あの坂を超えて真っ直ぐ行くと隣町のバス停があり、それに乗ると駅へ向かう。


もう少し。と思うと楽しくなり歌を口ずさんでいた。さぁバス停だ。と思っていたら、和哉の家がある神社裏手の竹林にいた。


「なんで?」


余りにも不可思議過ぎて口を付いて出てしまった。

神社裏手なら、この道を行って。とまたバス停を目指すも、今度は神社前の鳥居に居た。


「嘘でしょ。」


段々と恐怖心が出て来て、身震いした。その後も柚月は何度も何度も試してみたが、どのルートも神社へ戻ってしまった。


「こんな事ある?」


柚月は疲れて鳥居の前に腰掛けてしまった。

光輝が言った様に村から出られない。高校や大学に通っていたのは夢だったのだろうか?

そんな気すらして来た。


「柚、何しているの?」


背中越しに和哉が声を掛けて来たが、柚月は振り向かなかった。今の柚月には和哉も信じられない存在になっていた。


「柚、立って。」


和哉が言うと従う気は無いに身体が反応した。和哉が神社に向かって歩き出すと自然と柚月も後を着いて歩き出した。

気が付くと和哉の部屋の中だった。


「柚、何していたの?」


和哉の問いに応える気は無かったのにまたもや柚月は当たり前の様に返答した。


「村の外に出られるか、確認、していたの。」


和哉は柚月の前に立ち目線を合わせて微笑んだ。


「光輝にでも言われたか?制約があるのに頑張ったな。アイツ。じゃぁ話しをしようか。ゆっくりと、ね。」

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狐の嫁様 朝霞 @haru3341

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