第4話 こがね、学校について行きたい!
朝の支度をしていると、突然、制服姿のあかりの後ろから、こがねが元気よく声をかけてきた。
「あかり、学校に……行くの?ぼくも学校に行ってみたい!!」
「……えっ!?いや、行くって……学校に!?」
「うん!ぼく、あかりのことを知りたいし、知らない場所を探検するのもしてみたいし!」
こがねはすっかり『人間になったぬいぐるみ』としての生活を満喫しているらしく、何かと理由をつけてはあかりにピッタリとくっついてくる。
「でもなあ、うちの学校、ぬいぐるみの持ち込みは確か…校則で禁止されているから無理だと思うんだけどなあ……学業とは関係のない持ち物だし……」
「……違うもん!ぼく、もう『ぬいぐるみ』じゃないもん。今は正真正銘の『人間』だもん!」
「……いや、そういう問題じゃないんだけどな……!(それに耳とかしっぽとか生えているし……)」
あかりがそう突っ込む間にも、こがねはすでに玄関に向かってスタンバイ。なんと、あかりのサブバッグに自ら潜り込むという大胆な手段に出た。
「それ、バレたら職員室直行案件だからね!?それに、怒られるの私だし……」
「シーッ!あかり、学校では『無口なマスコット』ってことにしておいて!動かないように頑張るからさ!」
教室に着いたあかりは、できるだけ自然を装いながら席についた。しかし、サブバッグの中でうずくまる
(こがね、頼むから静かにしててよ……)
だが、事件は起きた。
「ねえ、あかり。そのサブバッグ、なんか動いてない?」
「えっ!? き、気のせいじゃないかなーー!(棒)」
隣の席のクラスメイトに怪しまれ、あかりは冷や汗ダラダラ。こがねも察してか、バッグの中でじっとしている──かと思いきや、
「むぐぐっ……せ、せまい……く、苦しい……!!」
バッグの中から小さな声が漏れる。
(おい、バカ!しゃべるな!!バレちゃうって……!)
慌てて、机の下でごそごそとこがねの口を押さえるあかり。怪しまれながらも、なんとかその場はやり過ごした。
放課後、校門の裏手に隠れて出てきたこがねは、むくれた顔で言った。
「せまかったー。あと、理科の授業、外からこっそり見てたけど、すごく面白そうだったよ!人間って、あんなことまで勉強するんだね!」
「勝手についてきたくせに、感想だけは一丁前だな……」
「また行っていい?」
「ダメに決まってるでしょ!!!……ってかもう、学校に同行は本当にやめてくれ!」
でも――こがねと一緒なら、少しだけ毎日が楽しくなる気がして。
あかりはバッグを開いて、そっとこがねの頭をなでた。
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