第2話 こがね、家の中を探索?する

【朝】

「じゃ、こがね。今日はちゃんと家でお留守番しててよ。

外に出歩かない!玄関を開けない!家電をいじらない!って言ったよね?約束だよ?」


あかりは制服姿で、玄関から振り返る。


「うむ、任せておけ。我が名はこがね。静かに慎ましく、神殿(この家)を守りぬこうぞ」


「……その『神殿』って言い方やめて。普通に『家を守る』でいいから」


【あかり出発後・午前】

あかりが学校に出かけると、家の中はしんと静まった。


「ふむ……さて、まずは神殿(家)の中を探索であるな」


足音も静かに、こがねはリビングの中をグルっと見回す。


【文明との戦い①:電子レンジ】

「……これは昨日、あかりが『チン』と言わせていた謎の『神器』か」


前面のガラスに顔を寄せる。中は空っぽ。


「ほおぉ…!我の顔がガラスに映っておるぞ……!」


レンジのスイッチに手を伸ばす。ポチッ。

ボン! と大きな音を立てて中の皿が空回り。


「むむっ!?これは……封印を解く儀式だったのか!?」


【文明との戦い②:掃除機】

押し入れの奥にあった、長くてうねった機械。

「これは……蛇の機械か!?動くのか?」


スイッチ、オン。


「ヴゥゥゥゥゥン!!」


「おおおお!? 魔獣が目覚めたぁあ!!」


しっぽを巻き込まれそうになり、慌てて長くてうねった機会を引きはがす。


【文明との戦い③:冷蔵庫】

「この白き巨塔……そういや昨日、あかりが『アイス』なる秘宝をこの巨塔から取り出していたな」


こがね、そっと白い巨塔の扉を開ける。


ぶわっ。冷気。


「おお……これは聖域……」


そのまま15分。冷気を全身で受けて涼をとる。


「こたつとは逆の神器……!つめた~い!!」


【文明との戦い④:テレビ】

テレビに映る、戦隊アニメの再放送。


「ふむ……これは現代の闘争を記録した巻物か?」


(画面内の戦隊アニメ)「行くぞ、レッドよ!!」「おう、ブルー!!」


「ぬうっ……なんと見事な連携!」


こがね、テレビの前で正座して小さく拳を握る。


【しろう登場】

ふと、視線を感じて振り返ると――

棚の上に、猫のぬいぐるみ・しろう。


こがね:「そなたも……この時代に目覚める日が近いかもしれぬな」


「……(無言)」


「……ふっ、しろうは相変わらず寡黙なやつだな」


【夕方:帰宅】

ガチャッ――


あかり、帰宅。

「ただいまー……って、何これ!?

レンジの中悲惨なことになってるし、掃除機は出てるし、冷蔵庫の扉は開けっ放しで、誰も見ていないのにテレビつきっぱなし!?」


「うむ。我がひとつひとつ調べていたのだ。文明の力とは、実に奥深い……!」


「ふざけんな~~~!こがねぇぇえええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!いい加減にしろおおお~~~~!!!(怒)」


【夜】

「こがね!ほんっとに、一日でどんだけ家の中を荒らしてくれるの!?

こがねは『動くキツネぬいぐるみ(人間体)』ってだけでもいろいろな意味で大変なのに!」


「だがな、あかり。今日、我はひとつだけ学んだことがある」


「なに?」


「白い巨塔の中のアイスを食べると、幸せになれる」


「おい、しれっと他人わたしのアイスを食べてんじゃねーよ!!せっかく、楽しみに取っておいたのに!!(怒)」


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