第2話 下着と私服と制服

 どうも、僕です。姫野ひめの結斗ゆいとです。

今は街のショッピングモールで隣人の美少女――剣崎けんざき真依まいに着せ替え人形にされてます。

清楚なワンピース、カジュアルなフリルコーデ、何故かあるゴスロリドレス。

最終的にショートジャケットとジャンパースカートの私服になったのだけど、着せ替え中みんなにずっと注目されるのが大変に、大変恥ずかしかった。

まあ、下着を選ぶ時に比べれば幾分かマシだけれどね(何故かピッタリなサイズ持ってくる不思議)。


「じゃあ、会計してくるね」

「あっ、うん。ありがとう」

「別に。そこで待っててね」

「うん」


 今着ている衣装のタグとカゴに入れた衣装を持って会計に向かった剣崎さんを見送って、私はしばらく更衣室で待機することになった。

これから着ていく下着と私服。

結構な量買ったと思うのだけど、総額は考えないようにする。


「っ…………」


 ふと鏡に映る自分の姿を見る。

見た目だけなら小動物系の可愛い女の子。

こんな子が自分だとはまだ慣れない。

これから慣れていけばいいのだが、やはり現実感がない。

未だにこれが夢なんじゃないかと思うことがある。

別にルッキズムを崇拝するわけじゃないが、やはり容姿というのは幾分か効果あるようで、学校で人気の剣崎さんと一緒に歩いていても特に何も思われることが無くなった。

鏡合わせに僕は鏡の中の少女に手を合わせる。

向こう側に映る少女に私は手を合わせる。

僕は。私は。これから――――。


「お待たせっ」

「うわっ!?」

「もう、びっくりしちゃってどうしちゃったの?」

「ちょっと、自分の世界に入ってました」

「姫野さんって時々可愛いメルヘンなこと言うよね」

「ごめんなさい」

「私的には可愛いのでよし」

「そうですか……」


「それよりも、大事なことあるよね」

「なにかありましたっけ?」

「制服」

「あっ……」

「忘れたね」

「はい……」


 そうだった。

学校に通う以上、制服は絶対必要だ。

ただ……、うちの制服は……、うん。


♡♡♡


 中学から高校に進学する際に選ぶ候補地に偏差値、学科とあるが、もう1つに制服がある。

昨今は少子化も重なって可愛い制服にリニューアルしようとする学校も多いとか何とか。

 その中でもうちの学校――瑠璃ヶ丘高等学院は明治から続く元お嬢様学校だったらしく、制服の可愛さも1級品らしい……。(本当か?)

女子からの人気はもちろんのこと、男子からの人気も強い女生徒の制服。

何よりもハイウエストスカートから生み出される胸部、くびれの分かる引き締まったウエスト、見えそうで見えない際どい丈のスカート。

本当に元お嬢様学校ですか?。という感じだが、高度成長期からバブル景気と崩壊で行き乗っていくうちに共学化とともに変質した結果が今の制服らしい。

男子は普通のブレザーの制服なんよね……。


「よく似合ってますよ。姫野さん」

「そう……、ですか?」

「はい。とっても愛らしいです」

「うっ……」


 試着室で大まかなサイズで仮の合わせをしているのだが……。

この制服、割とウエスト部分が閉まる。

聞いた話によれば、最新の技術を使ってコルセットのように閉まるそうで、思った以上にくる。

これを毎日着てるってうちの学校の女子たち凄くね。

そりゃあ、容姿の偏差値上がるわけだよ。

うん。


「どうですか」

「少し、お腹の部分がキツイですね」

「そうですか。少し調整しますね」


 少し緩くなったとはいえキツイのはキツイ。

まあそこら辺は慣れで何とかするから問題ない。(慣れるキツさになった訳だし)

問題は……、そこで僕になんかとんでもない視線を向けてる隣人さん。

外面は平静を装ってるけど、色々と漏れてる。

もう少し抑えてください。


「姫野さん」

「はい」

「これから着ていく制服はどうですか?」

「うっ。可愛い……です」

「そうですよね」

「あの、剣崎さん?」

「なんですか?」

「その手の動きはやめてください」

「はて?。なんの事かしら」

「んぅ……」


 舐めまわすような手つきで肩とか腰とか触ってくる。

きっと気づかってくれてるのだろうけど。

気持ち悪いです。


「うん、問題なさそうね」

「うぅ……、とりあえず3着お願いします」


「はい、わかりました」


「あっ。私が会計します」

「えっ、それは……」

「いけませんか?」

「いやいや、下着とか私服とか買ってもらってるのに制服なんて」

「大丈夫です。既にあなたのお義母様とは話し合ってるので」

「えっ、そうなの!?」

(スマホでチャット画面を見せる剣崎さん)

「じゃあ……。お願いしようかな」

「はい」


 用意周到というか。

まるで謀ったように物事が上手く進み続けている。

これはまるで……。

「主人公補正……、だな」

 女の子になったことはさて置いても、剣崎さんがあそこまで僕に気を使ってるのが分からない。

「恩返し」と言っていたが、僕はそこまでの恩をやったつもりはないし、何よりそこまでしてもらうような人物になったつもりもない。

とはいえ、女性の先輩である剣崎さんに色々とサポートしてくれたおかげで初日は何とかなった。

 今日は僕のせいで学校を休ませてしまったが、明日からは普通に学校に通うはずだ。

通うよね……。通ってくれるよね!?。

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