第1話 TS病で女の子になった日
突発性性転換症候群――通称:TS病。
原因の分からない未知の病、奇病。
そう医者たちが言ってた気がする。
過去には従来の性転換手術を用いて治療を試みたらしいが、どうやら失敗したみたいで、未だにコレ!といった方法が確率してないので、もうなったら諦めろという状態。
そんな奇病にかかった僕――
時期はちょうど例の病で女の子になった直後。
朝、目が覚めたら女の子になってただからあらびっくり。
どうしたこうしたと悩んでいる。
だって勝手が分からないし、そもそも着る服がない。
元々小柄な身長が女の子になったことで、より細く、より小さくなったのだから彼シャツに近い状態で今はリビングにいる。
僕の親は基本的仕事でいないので病院に行こうにもこんな格好じゃ不用意に外にも行けず、どうしたもんかと悩んでいる。
\ピンポーン/
(こんな時間に誰だろう……)
玄関のチャイムがなったのでカメラごしに外を見ると銀色の長い髪を持つ少女……美少女が立っていた。
瑠璃ヶ丘高等学院に入学直前に隣に引越して来た娘で、どうやら親元を離れて一人で暮らすためにここにやってきたみたい。
ちなみに隣なのは偶然。偶然のはず。偶然だよね?。
《姫野さん。いますか?》
「はい……」
《あら、可愛い声。もしかして妹さん?。(でも彼に妹はいなかったはず)》
「いえ、違います。僕です。結斗……」
《そう……でしたか。すみません》
「こちらこそ、混乱させてすみません」
少し会話に重ねた結果、どうやら剣崎さんはいつまでも登校しない僕を心配して声をかけたようだ。
嬉しい……。嬉しいなのだが……、少し怖い。
とりあえず、ずっと外にいるのもアレなので家の中に招こう。
『今』頼れるのは彼女しかいないのだから……。
♡♡♡
彼女――
「本当に女の子になってる」
「あの……剣崎さん」
「あっ、うん。ごめんね」
「まあ、別にいいだけど……」
「病院だよね」
「そうなの。だからh」
「服ね。今すぐ合うの取ってくるから」
「あっ、うん。ありがとう……。行っちゃった」
そう言って、剣崎さんは隣の自分の家から僕に合う衣装を持ってくるみたい。
結構体格差あるからなるべく無難なのがほしい(例えばワンピースとか)。
あと、さっきの会話で「えっ、いいの」って小声で聞こえてた気がするけど。
気のせいだよね。
「はぁ……、はぁ……。お待たせ」
「ありがとう……。そんなに急がなくていいのに」
「そりゃあ、急ぐよ。一大事だもん」
「それは……、そうなんだけどね」
剣崎さんには言語化しにくい恐怖がある。
男の時からそうだが、流石に女の子になったら大丈夫よね。
少し落ち着いて彼女を見ると、白い布のようなものが見える。
おそらく衣装……だと思う。
「ごめんね。簡単な合わせしかできなくて」
「大丈夫です。衣装貸してくれる上に合わせて貰えるなんて」
「別に構いませんよ。それに一人じゃ不安でしょ」
「そう、ですけど……。学校とかは……」
「休みます」
「えっ」
「隣人が困ってるのに休むほど私は悪い子ではないので」
「それだと勉強とかは……」
「それは後でどうにでもなります。ですので」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
こうして押し切られる形で僕は剣崎さんと一緒に病院へ向かうことになった。
衣装はもちろん彼女が用意した白いワンピース。
僕に合わせて肩の紐とか腰にリボンを結んで調整したりとかして、最低限の見栄えを整えて貰った上で、である。
♡♡♡
人間ドックのような検査を終えた僕は外で待ってた剣崎さんと合流した。
「本日はありがとうございます」
「いえ、私も病気の時は一人で心細いの知ってますから」
「はい」
「それでこれからどうするのですか?」
「これからとは?」
「普段着る私服とか、新しい制服とか、下着とか」
「うっ、そうだった。忘れてた……」
「ならこれから行きましょう」
「はい?」
「ちょうど機会です。女の子の楽しさを教えます」
「…………。お手柔らかにお願いします」
僕はこれからどうなってしまうのだろうか。
不安と恐怖と好奇心がせめぎ合う心のまま、僕は剣崎さんに引っ張られて買い物に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます