第二章:戦いの連鎖

 数週間が経ち、施設での生活が続いた。

 ウォーキングデッドの襲撃は頻繁で、佳輝は監視されながらも戦力として貢献した。


「俺、ちゃんと戦えてる?役に立ってるか?みんなに迷惑かけてないか?ごめん…」佳輝が尋ねると、蘭丸は「うん、すごいよ。ありがとう。君のおかげで持ちこたえられてる。信じててよかった。君は強いよ」と微笑んだ。


 彼女の声に力がこもった。「でも、時々おかしくなるのが怖いんだ。自分が…怪物みたいで…蘭丸、嫌いにならないか?離れたら…」佳輝が打ち明けると、悠斗が「気をつけろよ。危なくなったら縛るからな。冗談だけどな。頑張れよ、佳輝。俺も頼ってるよ」と笑いものにした。


 笑顔が一瞬だけ戻った。「縛るのは嫌だよ…頑張るから。蘭丸、信じてくれる?俺、ちゃんとしたい…君のために…」佳輝は苦笑いし、蘭丸は「大丈夫。一緒に乗り越えよう。絶対に。君は私の大事な人だよ。昔の約束、覚えててね」と手を握った。彼女の温かい手が、佳輝の冷たい手を包んだ。


 二人だけの時間が、ほんの一瞬あった。

 ペンダントが光った。ある夜、施設の奥で異音がした。

「何だ?また奴らか?毎晩うるさいな。寝かせてくれよ。疲れた…」悠斗が立ち上がり、懐中電灯を手に探りに行った。


 倉庫のような部屋を発見し、そこにはコールドスリープ搭載の宇宙探索円船が格納されていた。


「これで逃げられる!すごい発見だ!蘭丸、見てくれ!夢が叶うかも!」悠斗が叫び、興奮を隠せなかった。船の表面は埃に覆われていた。


 埃を払った。「本当に動くのか?古すぎるだろ。錆びてるじゃないか。こんなので飛べるのか?爆発したら終わりだ。」翔太が疑い、船の外観を点検した。


 手を叩くと、埃が舞った。

 咳き込んだ。

 蘭丸は「試すしかない。地球に希望はない。行こう。佳輝と一緒なら…」と決意を固めた。


 彼女は船のコンソールを調べ、電源を入れた。ランプが点滅した。ブザーが鳴った。「蘭丸、危なくないか?考え直せ。こんな賭けは危険すぎる。失敗したら死ぬぞ。君が死んだら佳輝も…」翔太が止めたが、彼女は「もう時間がない。信じて。データに書いてあるんだから。


 チャンスだよ。佳輝を救うために」と答えた。


 その瞬間、扉が破られ、数百のウォーキングデッドが押し寄せた。「くそっ!来るぞ!準備しろ!蘭丸、後ろだ!守れ!」翔太が盾となり、「蘭丸、行け!俺が時間を稼ぐ!後悔するなよ!生きろ!佳輝を頼む!」と叫びながら群れに飛び込んだ。血が飛び散った。


 叫び声が響いた。

「翔太!やめて!待って!お願い!帰ってきて!一人じゃ…!」蘭丸の叫びが響き、悠斗が足を掬われた。


「蘭丸、助けて…お願い…まだ…夢が…」彼の声が途切れ、蘭丸は涙を流した。


 佳輝が彼女の手を掴み、「早く!行こう!俺が守る!信じて!蘭丸、生きて!」と急かした。

 半ウォーキングデッドの彼は理性を振り絞り、宇宙船に導いた。

 蘭丸は涙を拭い、船に乗り込んだ。

 手が震えた。船に乗り込み、発射ボタンを押した。

「佳輝…ありがとう。生きててよかった。翔太や悠斗、ごめんね…。みんなの分まで生きるよ…。約束だよ…」蘭丸は彼に感謝を述べ、涙を拭った。


「俺も…蘭丸と一緒で良かった。みんな…ありがとうな。俺も頑張るよ…約束するよ…」佳輝が弱々しく答えた。


 地球は炎に包まれ、視界から消えた。静寂が船内に広がり、エンジンの振動だけが残った。


 涙が浮いた。


<つづく>


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