第23話 遁走(ユキ視点)
お洒落カフェでパンケーキを食べても、ファンシーショップでかわいい雑貨を選んでみせても、タケルには気づいてもらえなかった。
これまでずっと堪えてきたけれど、いよいよ限界を迎えてしまった。
自分はこんなにタケルが好きなのに、彼はいつまでたっても私が女だと見抜けない。
それは好きな男の子から、女の子としての魅力がないと言われているようなもので――。
つまり私は、高校生になった今でも男友達のままだった。
もうこんな関係性は苦しい――。こんな気持ちでいなきゃいけないくらいなら、いっそタケルとの距離を置いてしまった方がいい。
そう考えて私は、逃げるようにして店を飛び出していた。
皮肉なことに、スカートでないから速く走ることができる。
中学時代はバレー部でエースを務めていた私。不意をつけば男の子だって撒けるのだ。
「……ここどこだろうう」
やみくもに走っていたので、気づけば土地勘のないところへ来てしまっていた。一度立ち止まって、あたりをキョロキョロと見回す。
待ち合わせ場所から移動する際には、手をつなぐために「タケルが迷子にならないように」なんて言ったが、本当は方向音痴は私の方だ。
あの時も山で迷子になったところを、タケルが助けてくれたっけな……。
(――って、もう忘れなきゃ!)
タケルと私はただの男友達。私に女としての魅力がない以上、彼氏と彼女といった関係にはどうあがいてもなれない。
彼を店に置いたまま、一人で家に帰ろうとする。が、困ったことに道が分からない。
あてどもなくさまよううちに、いつの間にか怪しい通りへ入ってしまった。
(なんか……怖いなこの辺……)
とりあえず引き返そう。むろん店まで戻るつもりはないが、私は来た道を辿ろうとした。
しかし……。
「よう姉ちゃん、ちょっと俺らと遊ばねえか?」
「え……」
見知らぬ男に話しかけられてしまう。ほかにも仲間がいるようで、大人の男性三人に取り囲まれてしまった。
「おほっ! すっげえ美人」
「胸でけーな。大学生か?」
男たちは露骨に私の身体を観察する。顔や胸、お尻などにいやらしい視線を感じて、私は小さく息をのんだ。
「あ……あの……」
抵抗しなければと思うが、蚊の鳴くような声しか出ない。恐怖に身体が硬直してしまい、助けを叫ぶことすらままならなかった。
「えひっ、かわいいねえ~。お人形さんみたいになっちゃって」
怯えている私の姿を、男たちは楽しんでいるようだった。にやにやとした笑みを浮かべて、目の奥に欲望をぎらつかせている。
「大丈夫だからね~。ちょっと遊んだらすぐに返してあげるから」
そう言って一人が私の腕を掴むと、力を込めて無理矢理歩かせた。
「は……離してください!」
これは絶対にまずい、と私の本能が叫んでいる。彼らの言動や態度などから、乱暴目的で連れ去ろうとしているのは明らかだった。
「暴れんじゃねえ! それとも、無理にでも喋れなくしてやろうか……」
抵抗すればどんな目に遭うか分からない。私はなすすべもなく、震える身体を引きずられていくしかなかった。
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胸糞展開にはしたくないです。最悪の事態にはなりませんとだけ、一応。
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