第6話 再会。そして……(タケル視点)
今日から俺の高校生活が始まる。これから毎日通うことになる学校への道を一人で歩いていた。
高校生にもなれば彼女とかできるのかな……とも思うが、どうせ何も起こりはしないだろう。魅力的なヒロインと出くわすなんて展開は漫画の中だけの話であり、実際は肩透かしを食うのがオチと決まっているのだ。
だから校門の前まで来たとき、超絶美少女に話しかけられた時は心臓が爆発するのではないかと思うくらい驚いた。
(え……? ていうかあいつって――!)
目と目が合った瞬間にそうだと確信していた。あの時はてっきり男だと思って遊んでいたが――間違いなくひと夏だけ遊んだ幼馴染、渚ユキの姿だった。
「あの、久し振り……。ボクのこと覚えてるかな」
女だったのか――! と、俺は5年越しに正しい性別を理解して度肝を抜かれていた。一人称は『ボク』だしなぜか男子の制服を着てはいたが……顔や髪質などの要素で自然と女の子と分かる美少女だった。
(綺麗になったなあ……)
昔は短パン穿いて野山を駆け回っていたユキが、こんなお嬢さんに成長してしまうとは……。おっぱいも男物シャツの下でパンパンになっているじゃないか。
しかしいきなりおっぱいの話に持っていっては、いくらなんでもデリカシーに欠けるというものだろう。
普通に再会の喜びも分かち合いたかったし、美しい双眸に吸い込まれるがままに俺は視線を上げていた。
「久し振りじゃんユキ! 同じ高校だったのか、ひょっとして家近所だったのか?」
あの夏の終わりとともに家族みんなで引っ越したと聞いていたが、まさか同じ高校に通うことになるとは。
俺が気づかなかっただけで、いつかニアミスしていたような時もあったのだろうか。
「うん。そうだったみたい」
「全然気づかなかったなあ~。じゃあこれからは、毎日一緒に登下校しようぜ!」
互いの住所や学校との位置関係を確認して、毎朝の合流地点などを決めておく。もう会えないと思っていた親友と毎日顔を合わせられると知って、俺の心はハッピーに躍った。
さてどうしたものか。再会できたことは素直に嬉しすぎるが、問題はユキのしている格好である。
女子用のスラックスというわけでもなく、俺が穿いているのと同じ男子用のズボン。またリボンではなくネクタイを締めている……。
この学校は男女どちらの制服を着てもいいというルールなので、校則違反とかではないが。喋る時の声も低めのトーンだったし、どうにも気になるな……。
「……」
……俺が昔ユキのことを男子だと思ってたから、今でも男子で通用するかどうか、ちょっとした遊び心で試している?
つまりこれは……俺が服装や声音などに惑わされず女子だと見破れるかどうかの、ドッキリだってことか――?
(って、まさかな~)
高校生にもなって、そんな子供じみた遊び考えるわけないって。
ないない。男の服着てミスリード誘うドッキリとか、そんなくだらないこといくらなんでもするわけねーよ。
じゃあどうしてズボン穿いてんだろ……。うーん……。
……もしかして……男子の格好に憧れている?
そうだ――。子供の頃の服装も男の子っぽかったし、スカートとか穿くのは嫌って子なんだ。
だったら――!
「似合ってるなその制服。アイドルみたいにさまになってて、なんか雑誌の表紙みたいだぜ」
これだ! ちゃんと似合ってるって褒めてやる!
正直俺はスカートでも全然いけるだろうなと予想するのだが、本人が男の制服を着たがっているというのなら、その欲求を心ゆくまで満たしてやるのが、親友としてのアシストってもんだろう!
「えっ? あ、どうも……ありがとう」
ユキはちょっと戸惑った風で、困ったように目線を下げていた。褒められて照れているのだろうか? 軽くうつむき加減になっているな。
「クラス分け見に行こうぜ。おんなじクラスだといいなあ」
うーん、男子の制服とかに憧れてるのは分かったけど、性別はどっちとして扱えばいいんだ?
とりあえず"友達モード"で接しておくか。別に異性でも友達として接するのに何の問題もないわけだし。
「ありゃ、クラスは別だ。俺が1組で、ユキは3組か」
掲示板を確かめると、残念なことに教室まで同じというわけにはいかなかった。俺の隣でユキも寂しそうにしている。
「まあそう落ち込むなよ。放課後とかにいっぱい遊べばいいだろ?」
今でも俺のことを親友として捉えてくれているのだなと理解して、俺は胸が熱くなる。また昔みたいに二人一緒に遊ぼうぜと励ました。
「うん、そうだね」
放課後までしばしのお別れだ。じゃあ校門前で待ち合わせなと約束して、お互いそれぞれの教室へ向かおうとした時だった。
「あ……あのねタケル!」
「ん?」
ユキはもじもじと身をくねらせたかと思うと、自分の胸のあたりに手をあてた。上目遣いにこちらを見つめている。
「ぼ、ボクの胸を見て……何か気づくことはないかい?」
恥じらう乙女の表情でそう聞いてきた。男子用のシャツで覆われた胸部は、今にもボタンが弾け飛ぶのではないかというほどパッツンパッツンになっている。
「気づくこと? そうだなあ……」
…………でっか。
改めて見るとすげえ巨乳だな。全体の体型はむしろスレンダーなのに、胸だけグラビアアイドルみたいに突き出してるぞ……。
メロンやスイカを彷彿とさせるサイズに、俺はごくりと唾を飲んでしまう。完全に一匹のオスとして欲情している状態であった。
でもそのままストレートに「お前おっぱいめちゃくちゃでかいな! AV女優かと思ったわ!」などと言ってしまっては、友情に亀裂が入りかねない……。
なんとかしてごまかさなければ――。俺は足りない頭をフル回転させて、練り上げた窮余の一策をぶつけた。
「すげえ大胸筋だな! なんかスポーツでもやってんのかお前?」
く、苦しい……。でもデリカシーのない目で見てたってバレたら、軽蔑されるかもしれないもんなあ……。
案の定ユキも『な、何ぃ⁉』みたいな顔になって、俺の正気を疑っている。そりゃそうだよな、こんなわがままなおっぱいなんだし……。
「じ、実は筋トレにハマっててね~。ちょっと鍛えすぎちゃったかな~、はは……」
いやなんで乗ってくるんだよ。明らかに硬さとか全然違うじゃんか! 頑なに自分が女だって言わねえなあこいつ……。
「そうなのか。今度俺にもトレーニング方法教えてくれよ」
何のだよ。バストアップの秘訣でも伝授してもらうのか俺は。
「う、うん……。そのうち……覚えてたらね」
「じゃ、また放課後にな~!」
とりあえずここは気持ちのいい笑顔で走り去るしかない。ユキが自らを「女だった」と切り出してこないのは謎だったが、ひとまず撤退だ。
今にして思えば、会った瞬間に俺が言っておけばよかった気もする。でも今からそれを指摘したところで、おっぱい見て気づいたって思われるもんなあ……。
それはつまり、顔とか髪質とか華奢な肩とか……。ほかの要素で女だと気づけなかったと思われるわけで。
それっていうのは女の子のあいつからしたら非常に失礼なことだから、やっぱり今から言うってわけにはいかなくなっちまったな……。
(……どうしよう)
お前女だったのか⁉ って言うタイミング逃した~っ!
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こんな感じでヒロイン・主人公視点交互にやっていくと思います。面白い試みだと思われましたらフォロー・☆☆☆をよろしくお願いします。
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