第3話 何時も通りの放課後…駒野佳奈の場合

 ”Graben Sie tief, wo Sie Ihre Füße hinsetzen”和訳にすると”爾の立てる所を深く掘れ”だ。この言葉が三年前に目に入ったそれはこの学校の東大コースのとされている。私自身、之にしたがう様にずっと続けて来た物事を辞めて来た。新体操、友情、日本一胡散臭くて絶望的に見分けられない双子のお店の手伝い…そして。私にとって其れ等は冗長。根本は…

2015年、ずっと名状しがたい唯一人の存在だった父。精神科医として麒麟児だったが、ISILにより暗殺されたのだ。見せしめとして。眼の前で。麒麟児だった事は其れが発端になってすっかりと斜陽一家となった母から聞いた。

 だからなのか、同じく双子の姉・茉奈と私は新体操で差が着いてしまった。悪く言うと丁寧にな。例えばこんな風だ。

「茉奈は疑いなくウチのエースになるよ。へいらっしゃい。」

「佳奈は禁欲的ストイックなのは良いけれどな。朴念仁だし。要らないよ。」

as a result私は呪縛から解放できる筑波中央と一垓光年先の星からのお告げで決まっていた一方、茉奈は恐らく貴重資源レアメタル見做みなされて苫小牧女学院という道内の大正義に入ってしまった。(茨城でしっくり来るところが無かった分、全国約70校からスカウトされたみたいだ。)

 まぁ、良しとして放課後は何の道行っても自習室しか基本的には足を運ばない。その分、先生に質問し易く、邪魔者は居ない。の筈がもう永久とこしえに顔も見たくはないし、名前も呼びたくない二人組の何方かが私を例の問題集を解いているのにも関わらず、聲を掛ける。(而も小声で。)大抵来るのは兄だ。私は私で内心「陽子と結婚しろ。」と思っているのに「厭だよ。佳奈とが良いよ。頭も良いし、格好良いし、可愛いし…」って。我儘言わないでくれる?弟に対しては「まつりとはどうよ?お似合じゃん。学校でも有名になってるからさぁ。知らんけど。」と思ってるのに反応速度とこたえは流石、双子。

 …恋愛だなんて、分かってる?ウチんとこと貴方達のとこは付き合えないの。分かってるよね?ねえ?コースの境界線はベルリンの壁だの西側物語だのロミジュリラインだなんて…変な名前が付けられてるんだよ。姫路の壁は無事に崩壊したけれど。ソンナノカンケーネって馬も言ってるよ。よしおお兄さんも言ってるのに。何故一般コースの輩は来るんだ。大問題を孕んでるじゃないか。

 もし、やったとしても津島修治のファンだった女生徒が『私は王子様のいないシンデレラ姫』と最後の一文で語っていたけれども、君たちは残念だ。『お姫様のいない王子様』だから。言葉だと辛辣な糸車の針で右手人差指を刺されて百年の眠りに着けばいい。言ってはいけないと決めたけれども三人は逢えないね。逢えませんように。と大学に行ったら多分そのような事を語る日が来るね。私を形代と言った代わりに何億何万倍もラヴァブルな娘に逢えたらいいね。其れをこゝろの奥底で今日も放課後、思っているよ。

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