第2話 イツモ通りの放課後 猫屋敷諒太の場合

 ー祥太はとつい想定してしまう。熱くて何もかもけてしまいそうな2028年の熱波。山も山で最近暑くなったと聴く。日本全国津々浦々の受験戦士は年々燃えつつ在るみたいだ。兎角、県立筑波中央高は偏差値が《《県内屈指》》。なのに高校生クイズではラ・サールだの開成だの灘だの…そこら辺の部類がはずだと僕は認識する。

 クイズ部は第48回を迎える某大会のオンライン予選に僕達、『筑波中央チームアスケラ』は僕だけでは無く、同期の烏兎森まつり、2年の鮫島歩の三人からなる。学校でプチ予選を行ってからの3チーム「アスケラ」「レグルス」「フォーマルハウト」がオンライン予選の出場権を勝ち取った。まァ、自分自身それは「欣喜雀躍」だった。其れだけはたしか。

 なのに、一昨年の過去問はカオスすぎて皆で頭を抱えたもんだよ。特に酷いといえるのは「第一回芥川賞受賞者の名前を答えなさい」だの「夏の甲子園で初めての栃木県勢毎回奪三振完封勝利投手は?」だったりした。普通の人は前者を「太宰治」とか「高見順」とかって誤答するし、後者は「江川卓」とか「今井達也」って答えたんだろうなレベルだった。過去問のド定番の「baseballを野球と訳したのは?」で灘とかそこら辺の高校が「正岡子規」と答えて2ちゃんねるで「正岡民」という言葉が産声を上げた程だった。

 俯き歩く祥太を見た。たまたまだが例の栃木の投手とおなじだったなぁ。と感じてしまった。その時は母が「祥太ー、諒太ーッ。甲子園に二人とも出ているよー。」と。姓は異なるがバッテリーが僕等と仝名前だったけど投手が「入江」で捕手が「山下」だった。その時は中二だったからイマイチ共感はできなかった。六回で例の投手が右脹脛みぎふくらはぎを攣った時、例の捕手は何も出來なかった。

 という事は…佳奈に祥太が氣を向かせようとして、何かしらの失態を犯してしまった。其の時に自分は何も出來ないのと仝である。何か理解らないが山下の氣持が独善的に判るようになっているかも知れない。いや、そうではないかも知れない。

 「猫ちゃーん、ちゃんと問題に向き合ってんのー?」僕はまつりに意識を呼戻された。その問題は「ふたご座の兄のカストルと弟のポルックス。どちらが神様の子供?」という所謂「解けそうで解けない」だった。僕は(直感でいいよね?)とFormに映されたそれに「ポルックス」と回答した。(タッちゃんが普通の子で、カッちゃんが天才少年と言いたいのか?)と大会あるあるの裏を斯く行為をせずに答えた。

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