第4話 大人の階段
華のセヴンティーンと人は言う。だが、祥太と諒太にとっては両親が亡き祖父母から受け継いだ日本初の猫カフェ「しゃ・のわーる」というお店の切盛で精一杯。尚且、猫が日本一多い猫カフェでもあるからだ。
猫の名前は是迄を振り返ると
祖父母の代は明確なテーマはなく猫の名前はタマ、シロ、クロ、ミケ、トラ、チビ、タロー、ジローといった在り来りなものからテンポイント、マルゼンスキー、ハイセイコー、タケホープ、シンザン、トウメイ、テスコガビー、エリモジョージ、スピードシンボリ、メジロムサシ、カブラヤオーといった結構昔の馬の名前から、キヨマー、クロマティ、ミスター、ワン、バークレオ、デストラーデ、ナベQ、カリメロ、バースといった此方もかなり昔のプロ野球選手の愛称や名前、ポー、アガサ、ラヴクラフト、キャロル、ボードレール、ランボー、サルトル、ディケンズ、ヘミングウェイといった海外の大文豪たち。中にはポチ、コロ、ゴン、パンチといった途方も無いくらい犬のステレオタイプの名前まで!!
このように呆れ顔に店主の息子。要するに現在の店主がこうなってしまったので「茶の品種」になってしまったという経緯を持つ世にも奇妙な猫カフェでございます。
それぞれの放課後を終えた今日が二人の18歳の誕生日で、互いに自分たちが
「あまり感じないんだ。制服姿の大人だなんて。」
「いや、佳奈も自覚していないよ。とても。」
「いや…私を此のような系統の物の巻添えにしないでくれる?」
「いや…君は20歳のままだと16で結婚できちゃうし、正直言ってエイティーンがいいんだよ。」
祥太がオベンチャラをした途端、看板猫のダージリンが寄って来て、お気に入りのその頭部に乗っかって来たのだ。
「ニャっ」
佳奈は其処を見計らい、学校で配られた東大医学部の無痛分娩に関する論文を読んでいた。毛玉がその胸の中、いや、服の中に未だ人馴れが出来ておらず警戒心の強く彼女にしか懐いていない毛玉…子猫のかなやみどりが入っているのだ。やはり彼女ではないこの二人の人間は匂い、顔、表情、好きな人の特徴、髪型、眼付、歯並び、血液型、虹彩、
かなやみどりはスルリと、サトシ&ピカチュウとはいかないが佳奈の肩に乗っかってから勢いよく二人に襲いかかった。
「うううううううううううううううううううううう、フウううううううううううううう、シャあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「厭だ
「嗚呼…!!」
「御馬鹿あゝ!!」
祥太はかなやみどりを毛玉としか視ておらず、亦、諒太は怪獣としか之が原因で其れとしか視られないのだ。かなやみどりが襲い掛かった途端、祥太はバク転で身を翻し、諒太はバレエ・ダンサーの様な周り方で極力避けた。
佳奈は唯一人、1階の猫カフェ本体部から漏れる良美の『愛がひとりぼっち』が流れた後で、『青春』のイントロを聴きながら父を偲んでいた。
(お父さんは岩崎姉妹だと妹を必ず推していた。)
(あの二人のお父さんは必ず姉を推していた)
(なんであんな時代にそんな歌流すんだろう…)
『青春』が終わって『チェッ!チェッ!チェッ!』の一度覚えたら忘れられないイントロが流れた途端(アールグレイは已にお仕事に戻ったみたいだ。)、人猫喧嘩は静まり、かなやみどりは彼女に近づき「ニャー」と聞こえるように鳴いた。
彼女が其れを触っている間、祥太の天秤は搖らいだ。
天秤が揺らぐのはずっと生きて来て其れが初めてだった。諒太のは未だ揺らぐ様子ですら視ていなかったけれども、茉奈のが揺らいだのは三年前だが闡明に憶えている。新体操での進路決めだった。
其れは令和七年の8月だった。佳奈は東大コースの恩恵で1秒で決まったけれども、茉奈は一筋縄では行かなかった。
「ねぇ、筑波中央の新体操部、失くなるんでしょ?私の近場が千葉とか埼玉になりそうだよ。」
「スカウトは?茨城には来年の今日、居ないよね?」
「多分。静岡、愛知、大阪、兵庫、奈良、福岡、仙台、神奈川、千葉、埼玉、東京、北海道…いっぱいあるの。」
「な…なんて妙々たる
その途端、何時の間にか唇を交わしていた。自分でも自覚は出来ていなかった。自覚を告白していたら彼女は北海道になんては行って無かった筈だ。実際は諒太と二人で旧帝大行きたさに
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