第18話 『合宿の夜、結衣の焦燥』

 受験強化合宿は、二日目の夜を迎えていた。日中の猛勉強と、慣れない集団生活の疲労は、生徒たちの身体に容赦なくのしかかっていた。消灯時間後、西山和樹は、寝息を立てる同室の男子生徒たちの中で、一人静かに参考書を開いていた。そんな彼の元に、一通のメッセージが届いた。送信者は小林遥。内容は「和樹くん、ちょっとだけ、話したいことがあるの。屋上に来てくれないかな?」というものだった。屋上は通常立ち入り禁止だが、合宿中は夜間の気分転換として、教師の許可を得て限定的に開放されている。人影はまばらで、星空がよく見える場所だ。


 和樹が屋上へ上がると、遥は欄干にもたれかかり、夜空を見上げていた。柔らかな月明かりが、彼女の淡いブラウンの髪を銀色に染め、普段よりも幻想的な雰囲気を醸し出している。彼女は、和樹が用意したTシャツと短パンというラフな格好だった。

 「和樹くん、来てくれてありがとう」

 遥の声は、普段の明るいトーンとは異なり、どこか静かで、少しだけ震えていた。

 「遥、どうしたんだ?こんな時間に」

 和樹が尋ねると、遥は肩をすくめた。

 「んー……なんか、勉強してても集中できなくて。頭が痛いし、体が熱くて、寝付けないの。梨花たちも和樹くんにマッサージしてもらってすごく楽になったって言ってたから……私も、お願いしてもいいかな?」

 遥は、和樹の顔色を窺うように、おずおずと尋ねた。彼女の頬は、夜風に当たっているにもかかわらず、ほんのり赤く上気している。和樹は彼女の身体に触れることで、その内面の熱を鎮めたいと思った。

 「わかった。ここだと少し肌寒いかもしれない。中にしようか」

 和樹は遥を、屋上へと続く階段の踊り場へと誘導した。そこは人の往来が少なく、外からは見えにくい、隠れた空間だった。

 遥は和樹の前に座ると、肩の力を抜いた。彼女の運動着からは、汗と彼女自身の、甘酸っぱいような体臭が微かに漂っていた。


 「どこが特に辛い?」

 和樹が尋ねると、遥は肩を抱え込むようにして答えた。

 「全身だけど……特に、肩と首がガチガチなの。あと、最近、お腹も張ってる気がして……」

 遥はそう言って、Tシャツの裾に手をかけた。

 「このTシャツ、脱いでもいいかな?もっと楽になりたいの」

 遥の言葉に、和樹は再び息を呑んだ。合宿所の踊り場という限られた空間で、彼女が自ら薄着になることを提案するとは。和樹は彼女の勇気と、和樹への深い信頼を感じた。

 「あ、ああ……無理はしなくていいからな。でも、その方がより効果的だと思う」

 和樹が頷くと、遥はゆっくりとTシャツを脱ぎ始めた。するりと頭を抜けると、淡いラベンダー色のブラジャーに包まれた、遥の瑞々しいバストが露わになった。ブラジャーは彼女のバストを優しく包み込み、その丸みを美しく強調している。白い肌に映えるラベンダー色が、和樹の視線を引きつけた。彼女の身体からは、微かに汗ばんだ肌の匂いと、甘いシャンプーの香りが混じり合い、和樹の嗅覚を刺激した。


 和樹は深呼吸をし、緊張した手つきで、直接遥の肌に触れるマッサージを始めた。肩から背中、そして腰へと、指の腹でゆっくりと圧をかけ、リンパの流れを意識するように撫で下ろしていく。遥の肌はきめ細かく、ほんのりと温かい。

 「んんっ……気持ちいい……」

 遥の口から、甘い吐息が漏れる。和樹の指先が、彼女の身体の敏感な部分を探り当てると、遥の身体がビクリと小さく震える。和樹は、ブラジャーのサイドベルトから続く肋骨のラインを辿り、乳房の基部に触れた。

 「遥、お腹が張ってるって言ってたけど、ここも少し張ってるな」

 和樹が問いかけると、遥は少し戸惑いながらも答えた。

 「うん……最近、生理前で、胸も張るし、お腹もなんだか重くて……」

 和樹は、乳房の基部からリンパの流れに沿って、優しく丁寧なメンテナンスマッサージを施した。優しく円を描くように指を滑らせると、遥の身体が小さく身悶え、より深い吐息を漏らした。それは、単なるリラクゼーションを超えた、快感の予兆だった。

 「はぁ……和樹くん……そこ……すごく、気持ちいい……」

 遥の声は、微かに震え、うっとりとした表情で、瞳は潤んでいた。彼女の頬は、ほんのりとピンク色に染まっている。


 次に、和樹は遥の脚の付け根へと手を滑らせた。遥のショートパンツは短く、太ももの付け根までが露わになっている。

 「足もむくんでるって言ってたから、鼠径部のリンパも流していくぞ」

 和樹が鼠径部のリンパ節を優しく刺激するマッサージを始めると、遥の身体は大きく跳ね、甘い喘ぎ声を上げた。

 「あっ……ひぅっ……和樹くん……そこは……!」

 遥の言葉は、途切れ途切れで、理性を失いそうなくらい甘く響く。和樹の指先が、彼女の最も敏感な部分を探り当て、快感の波を次々と引き起こす。遥の身体は、熱を帯びて、和樹の指に吸い付くように反応する。

 「和樹くん……もっと……そこ……お願い……」

 遥の声は、懇願するように和樹に迫った。彼女の肌から漂う、興奮した体臭が、この密閉された空間に満ちていくのを感じた。


 マッサージが進むにつれて、遥は和樹の腕を掴み、その身体を和樹に預けるように身をよじった。

 「和樹くん……私、正直言って、今、すごく不安なの……。受験も、テニスも、全部ちゃんとできるのかって……。でも、和樹くんがこうして触れてくれると、なんだか全部、どうでもよくなっちゃうくらい、楽になるの……」

 遥の言葉には、合宿による精神的なプレッシャーと、和樹への深い依存が混じり合っていた。彼女の身体が熱を帯び、和樹の指先に吸い付くように反応する。

 「和樹くん……こんなに気持ちいいこと、和樹くんしかしてくれない……。ねえ、私、このまま……もっと、和樹くんを近くに感じていたい……」

 遥の瞳は、潤んで、和樹の奥底を見つめていた。その視線は、初体験への具体的な期待と、和樹への強い欲求を明確に示唆していた。和樹は、遥の真剣な眼差しに、抗うことはできなかった。合宿の夜、踊り場のわずかな空間で、二人の間には、これまで以上に濃密な空気が流れていた。

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