第2話 君が為 春の野に出でて② 4月7日

 遡って四月七日の金曜日。

 

 入学式の翌日。新入生歓迎会と称しつつ、全校生徒が体育館に集められた。

 吹奏楽部の演奏やら生徒会による年間行事の説明やらを受け、締めくくりが上級生による部活動紹介だった。


  「プレイボオオオォオオオイ!」


 野球部がお約束すぎるボケを絶叫で披露し、失笑が飛び交う。

 こんな有様でも、県内の偏差値順では一応五本の指に入る県立高校、だったよね?。

 一応は文武両道を謳い、何らかの部活動への強制加入が課されている。

 どの部活に入るかで、学校生活の方向性は大きく変わっていくだろう。


 中学の時は友達に強烈な誘いを受けてバレー部に入った。本当はバドミントンの方に興味があったけど、断り切れず。

 入ってしまえば三年間それなりに汗を流し、うざ……熱い顧問に叱咤激励を受けて時に涙を流しながらもなんとかやりきって引退した。


 かといって高校に入ってからも続けたいと言う程でもなく、どちらかといえば勉強出来る時間を確保する方が優先順位としては高い。

 文にそこまで自信がないため、武に傾倒するが余り落ちこぼれるのは避けたいのである。


 つまりは、何か楽な部活ないかなーと、漫然と座っていた。

 その点女子バレー部の活動紹介は、私の目を惹くものがあった。


 「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。女子バレーボール部です」

 

 ダラダラと壇上に上がるのは、試合出場要件ギリギリな六人きっかりの生徒。

 身を包むのはユニフォームでも部のオリジナルジャージでもなく、学校指定のジャージ。

 代表でマイクを持つ先輩の、その恵まれた容姿に若干ざわめきが漏れた。

 

 それ以外の面々は爪をいじっていたり、欠伸を噛み殺していたり、満面の笑みで知り合いに手を振っていたりと、チームスポーツとは真逆の統率の無さ。これはひどい。


 「私たちは勉学の面も重視し、週に四日以内かつ短時間練習としています」

 つまりはやる気がありませんと、言外に嫌でも伝わるものがある。

 しかもそのあとに歓迎の意を表す文句を続ける訳でもなく、バラバラに一礼して終わった。これはとてもひどい。 

 

 しかしこのやる気が下方に天元突破してそうな女子バレー部なら。

 中学時代の経験を適度に生かしつつ時間に余裕も出来る。これは渡りに船と、仮入部期間に足を運ぶことを即決したのだった。

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