第6話 洞窟の奥にいるもの
そして俺たちは岩場に穿たれた洞窟……ゴブリンの巣の入り口にたどり着いた。
「ここだな。ゴブリンと血の匂いがするぞ」
俺が表情を引き締めると、セレスティアもごくりと唾を飲み、杖を強く握りしめる。
「カズキ様、後ろは任せてください。このセレスティア、命に代えてもあなたをお守りします」
「はは、大げさだな。でも、頼りにしてるよ、セレスティア」
俺の言葉に、彼女は決意を固めたように頷いた。少し重めともいえるセリフだがその瞳には絶対倒すという強い意志を感じられる。やはり聖女である彼女は魔物が許されないのだろう。
洞窟の中は、松明の明かりが揺らめき、ゴブリンたちの甲高い声が反響していた。数は十数匹といったところか。
かつて手にしていた聖剣こそ持っていなかったが、元勇者の身体能力は健在だ。
「まずは小手調べだ!」
「ゴブゴブ!!」
一番近くにいたゴブリンの振り下ろす棍棒をひらりとかわし、がら空きになった胴体に強烈な蹴りを叩き込む。ゴブリンは悲鳴を上げて壁に激突し、動かなくなった。
某ゴブ〇ンスレイヤーさんとは違い、この世界のゴブリンはそこまで厄介な相手ではない。ようは始まりの街に出てくるような魔物だ。俺の敵ではない。
「カズキ様に近寄らせませんよ、穢れた魔物め! セイクリッドアロー!!」
後方から、セレスティアの凛とした声が響く。彼女が杖を掲げると、眩い光の矢が数条放たれ、俺に迫っていたゴブリンたちを正確に貫いた。
「あいかわらずすごい魔法だな、セレスティア! でも、洞窟が崩れそうだから少し手加減してくれよな!」
「も、申し訳ありません! つい、カズキ様に害をなす下等生物が許せなくて……!」
彼女の魔法は、明らかにゴブリン相手にはオーバーキルだった。だが、そのおかげで俺は楽に立ち回ることができた。
だけど、ちょっと攻撃的で口が悪くなっている気がする。
ああ、そうか、貴重な男である俺を守ろうとする気持ちが強いんだな! 頼もしい限りだ。
俺が彼女の気迫をポジティブに解釈している間にも、ゴブリンの群れは面白いように数を減らしていく。
そして、俺とセレスティアは、ゴブリンたちを倒しながらも洞窟の最奥部へとたどり着いた。
だが、そこにいたのはゴブリンの親玉ではなかった。
「くく……やはり来たな」
揺らめく松明の光が照らし出すのは、玉座のように積み上げられた骸骨の上に、優雅に足を組んで座る一人の美青年。銀色の長髪に、血のように赤い瞳。その身にまとう豪奢な貴族服は、この不潔な洞窟にはあまりにも不釣り合いだった。
彼の周囲には、残ったゴブリンたちがひれ伏しており、その傍らには木の檻に囚われた少女が怯えている。
「ようこそ、邪なる願いを抱く元勇者殿。そして、発情せし聖女よ。青い正義を抱える貴公らのことだ。やってくると思ったよ」
青年……その存在が放つ禍々しいオーラは、魔王軍の幹部すらも霞ませるほどに濃密だった。俺の全身が、危険信号を鳴らしている。
「お前、魔族だな」
「ご名答!! 我が名はアスタロト。真実を愛し、偽りを暴く者。魔王はいなくなったが、面白い魂の輝きを感じてな。わざわざ降臨してやったのだ。感謝するがいい」
「この魔力……四天王クラス? ここまで強力な魔族がこんなところにいるなんて!!」
セレスティアが驚くのも無理はない。魔族とは強力な人型の魔物であり強力な力を持つのだ。魔王亡き今、大抵は魔界に引っ込んでおりこんな人里の近い所で会う存在ではないのだ。
下手すると大都市一つを一人で滅ぼせるほどの相手なのである。
「カズキ様、今度こそあなたのことは私が守ります!!」
「くっくっく、威勢がいいな聖女よ。どれ、まずは貴様の真実を見てやろう。高潔そうに見える貴様はどんな秘密を暴いてやるとしよう!! こういう一見まじめそうな女ほどどぎつい性癖をかかえているものだからな!!」
「なっ、私に変な性癖何て……」
「そうだぞ、セレスティアは清楚な聖女様なんだ。いやらしいことなんて考えているはずないだろ!!」
仲間を侮辱された俺が怒鳴りつけるも、アスタロトと名乗る魔族は、愉悦に満ちた笑みを浮かべセレスティアを見つめる。
そして、俺の隣で杖を構えているセレスティアはなぜか俺をチラチラとみて冷や汗をかいているのだった。
★★★
聖女の性癖は暴露されてしまうのか……
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