力を束ねて

 黒き砂漠に閃く刃と刃、シェダもまた戦いに挑み続けカードを切る。


「ツール使用、駿馬の臑当グリーヴ!」


 羽根を持つ臑当グリーヴがディオンの足に装着され、砂煙を巻き上げながらディオンの速さが増して相対する鬼の背後を容易に取ってみせる。

 そこからすかさず魔槍の一撃を放つが紙一重で鬼はその姿を霧のように霧散させ攻撃を避け、そのまま逆にディオンの背後に現れ大斧を振りかざす。


 刹那、ディオンは振り返らず魔槍を回して向きを変え、そのまま背面の鬼へ突きを繰り出し虚をつく形で鬼を狙った。これには流石に反応できなかった為か胸に魔槍を受けるものの、後ろに跳び退かれた為に浅い傷を与えたに留まる。


(手応えはあった。だが同じ手は二度は通じんな……)


 魔槍を構え直しながら鬼を捉えつつディオンがちらりとシェダに視線を送り、その意図を察したシェダもまたカードを引き抜きながら思考を張り巡らせていく。


(ユナイトのカードでメリオダスとタンザの能力をディオンに与える事はできる……どっちにするか……)


 ディオンと向かい合う鬼はすぐに動かず大斧を振り上げ構えるのみ。姿を煙のように変える能力に対し、それを捉えるのが可能なのはメリオダスの持つ透視能力なのは確かだ。

 だが、まだ何かあるような気がしてメリオダスをすぐに、とはシェダは思えなかった。守りを意識するならば毒などに強いタンザの力を与える方が良い。


 と、ここでシェダはある事を閃き、カード入れから二枚のカードを引き抜き、手に持つユナイトのカードとを改めて見直し小さく頷いた。


(この方法ならいけるかもしれねぇ……ディオン、いいか?)


 心を通してシェダが思いついた策を伝えると、ディオンはフッと鼻で笑い静かに魔槍を持つ手と足元に力を入れ鬼を捉え、次の瞬間には砂煙を巻き上げ鬼の懐へと一瞬で潜り込む。

 すかさず鋭い魔槍の突きを繰り出して鬼の頭を狙い、身体をのけぞらせて避けられはしたがその間にシェダが動く。


「いくぜディオン! スペル発動ユナイト! 力を貸してくれ、タンザ!」


 閃光と共に発動されるユナイトのカードでシェダが選ぶのは銀蛇タンザの力をディオンへ与えること。光となったタンザがディオンの腕から魔槍へと絡みつき、消えると共に魔槍に銀の鱗のような装飾が現れる。


 対する鬼がぎろりとディオンを捉えながら大斧を下から上へと振り抜き、これを魔槍を使ってディオンは防ぐが宙空へと飛ばされてしまい、次の瞬間には鬼は煙となってディオンの真上へと姿を見せる。

 咄嗟にシェダがカードを切ろうとするもその前に鬼が力強く腕を振り下ろしてディオンを殴り、そのまま真下へと叩き落とし黒い砂が勢い良く舞い上がった。


黒雷刺突シュバルツ!」


 舞い上がる黒砂を突き破り、黒の衝撃波が螺旋を描き鬼目掛けて向かっていく。当たる直前で鬼は煙となるものの、その煙を巻き込む形でディオンの技は天を穿ち黒雲の一部に穴を空け光を射しこませる。


 次の瞬間、光が射し込んだ場所で鬼の姿が見え、だがすぐに闇に隠れたのをシェダとディオンは見逃さず、そこからおおよその鬼の能力の弱点を見抜く。


「ディオン、あれをやれるか!?」


「雲を晴らすほどとなると俺一人でやるのは無理がある。メリオダスの力も、お前の力も必要だ……時は稼いでやる、迷わずカードを切れ!」


 シェダに応えるディオンが闇より迫る大斧の一閃を魔槍で真っ向から受け止め、凄まじい衝撃が風を巻き起こす。


「スペル発動リバイブスペル! ユナイトのカードをもう一度発動、メリオダス!」


 一度使ってダウン状態のスペルカードを再度使用するリバイブスペルのカードにより、青き光となったメリオダスがディオンに宿り、ディオンの鎧が青みを帯びた。

 それたけでなくディオンは力が増すのを感じて一気に大斧を押し返し、そのまま弾き飛ばすと魔槍を素早く振り抜き切りつけるように鬼の身体に傷を負わせる。


 刹那、ぐっと鬼が頬を膨らませたかと思うと緑色の煙をディオン目掛けて吐きつけ、それが毒とディオンは悟るも構わずに魔槍で鬼を刺し貫きに行く。が、視界も一瞬封じられたのもあって攻撃をわずかに外し、その瞬間に鬼も姿を煙へと変えて消えていた。


(タンザのおかげで毒の影響はないな……シェダの用心深さに助けられたな)


 メリオダスの前にタンザの力を与えられた事で毒を受けつけない状態となっているディオンはフッと笑い、シェダが次なるカードに魔力を込めてるのを確認すると魔槍を掲げ、その先に黒の雷を蓄え始める。


黒雷刺突嵐シュバルツ・ゲウィター……!」


 ぐるりと円を描くように振り抜かれる魔槍からいくつもの黒の雷球が周囲に飛散し、それらが地面に留まりながらバチバチと音を立てて風を呼ぶ。


 そして素早くディオンが魔槍を足元に深く鋭く突き刺すと、彼を中心として黒雷が天に走り呼応するように地に留まる雷球が炸裂し轟音と共に砂漠の砂ごと雲を吹き飛ばし、照りつける太陽浮かぶ青空が姿を見せた。


 闇が消えると共に黒雷も消え、そこに姿を現す鬼は大斧を振り上げた構えで佇み、ディオンも応えるように魔槍を構えて相対し熱を帯び始める空気が張り詰めていく。

 勝負は一瞬で決まる。風が止んだ瞬間に両者共に力強く踏み込んで前へと進むが、ここでディオンは砂に足を取られてしまい姿勢が崩れた。


 すかさず鬼の一撃が襲いかかるも、ディオンの目には諦めはなく魔槍を力強く突き出し両者の影を双方の武器が捉える。

 

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