第20話 休日プール

 本日、俺と安住はアミューズメントプールに来ている。


 しかも今回は俺から誘った。


 今は安住が着替えてくるのを待っている。



「いやぁ……断られなかったのは良かったけど。緊張してきた……」



 妹以外で女子とプールなんて初めてだ。


 期待と緊張を募らせていると背後から声がした。



「佐伯さん……佐伯さんあのぉ」



 振り返ると安住がいて、のぞき込むように視線を合わせてきた。



「あぁ、すまんぼーっとしてた!」


「それは良いんですけど。その、どうですか……?」



 水着は黒いビキニタイプで、安住の滑らかな白い肌が際立っていた。


 胸元にレースが付いていて、可愛らしい雰囲気もある。



「うん、ええっと。良い……凄いいいと思う」


「ホントですか。なんか地味というか普通じゃないですかね」


「落ち着いた感じではあると思うけど」


「あまり華がなくて、期待に添えてるかなって」


「俺はいいと思う。それに水着にだけ華があっても仕方ないだろ?」


「そ、そ……そうですか。ありがとうございます」


「あ、あぁ」



 なんか変なことを口走った気がする……。


 女子とプールに来ることがないから褒め方も分からない。



「そんなストレートな褒め方をされると、ちょっと困ります」



 顔をそらしながら訴える安住。



「素直にエロい。って連呼してくれればいいんですよ」


「猿か俺は! これ以上ないストレートだろ」


「公共の場では流石に無理ですか」


「公共の場でなくても言わない」



 正直、なぜ俺から誘ったかというと……。


 いつもからかわれてばかりで不公平だと思っていた。


 流石にこいつも水着姿で居続けるのは恥ずかしがるだろう、と


 そう考えて実行したわけだ。



「さっきから目が泳いでますよ」


「そんなことは……」


「目をそらしながら言われても」



 でも何故かこいつは平然としてるし……。


 俺だけが恥ずかしがっているし。


 計算外だ……。



「でも佐伯さんから誘ってくれるのは珍しいですね?」


「え? あぁ、そうだな」


「そんなに私の水着が見たかったんですか?」


「そんなことは……」


 

 実際はめちゃくちゃ見たかった。



「じゃあ私じゃなくて水着の女の子が見放題だから来たんですか?」


「もしそうなら安住を誘う必要ないだろ」


 

「そうですよねぇー」と満足げにニヤつく安住。



「私の水着姿が見たくてティッシュを濡らす夜を過ごしてたんですね」


「そこまでは言ってない。それを言うなら枕だろ」


「あぁ、美少女抱き枕を私に見立てて直接……」


「そういう意味じゃない!」


「まぁ私の水着もみれたことですから、これからは毎晩ティッシュを濡らして下さい」


「それ変わってねぇじゃねえか」



 くすくす笑う安住に呆れつつ移動しようとすると、安住が引き留めてきた。



「入る前に、定番のアレをやらなくていいんですか?」



 そういって手に持った日焼け止めを見せる安住。


 これは……お決まりの?



「体のすみずみまでオイルを塗ってあわよくば挿入するヤツです」


「そこまでするのは初耳だぞ……」


「したくないんですか?」


「それは……っていうか来る途中「家を出る前に塗った」って言ってただろ」


「げっ……むぅ。そうですけど、じゃあ日焼け止め無しバージョンで」


「それはただの変態だろ……」


「佐伯さんがしたいというなら構いませんよ」



 遠慮しておきます……。




***




 とりあえず流れるプールに入ってみることにした。


 幸い、安住も俺も水に苦手意識はなかった。



「おぉ、丁度いい冷たさだ」


「そうですね。気持ちいいです」


「…………」


「そういえば、プールって何するんだ?」



 浮き輪に腰かけたままプカプカ流れる安住に問う。



「自分から誘っておいてそれですか? 私もよく分からないですけど」



 まあ非日常感が楽しいってのは分かるけど。


 普段外で遊んだりしないせいで、これであってるのか……。



「いや……俺も水に入ってから気づいた」



 よく考えたら泳ぐのが目的なのか?

 

 あれ? 何しに来たんだっけ。



「いわゆる水をかけあって「やったなぁ~!?」とか「きゃ~!」ってやり取りをするのがセオリーなんですかね」


「そうかもだけど改めて言われると、恥ずかしくてできそうにない」


「カップルともなればその羞恥心もなくなるんですよきっと」


「は、はぁ……そういうものか?」



 それは……そういう意味で言ってるのか?


 いやそういうってなんだ?



「味気ないようならポロリでもしましょうか」


「絶対やめてくれ……俺のためにも」


「私の水着姿を他の男に見せるのですら佐伯さんはイヤですもんね?」


「そんなことは……」



 うっ……誘ったのは自分なのにあまり否定できない。



「ふふっ。でも安心してください。佐伯さん以外には謎の光で局部が隠れ——」


「ないからな、現実には謎の光も。謎のモヤも」


「それでも大丈夫です。ちゃんと“前貼り”してきましたよ私」


「嘘つけよ! ……グラビアアイドルかお前は」




***




 流れるプールのコースを1周したあたりで、別のエリアに移動。


 せっかくならとウォータースライダーに挑戦することにした。



「これですか……高いですね」



 並んでる途中で気づいたけど、怖いやつだこれ。


 底のある大きい浮き輪に2人で乗って滑り落ちる形式。



「うわぁ、めっちゃ絶叫聞こえてくる。どうする? 俺はいいけど」


「うぅ、怖いですけど……。行きましょうっ」


「よし、分かった」




 お互い覚悟を決めたので、係員の指示に従い定位置の浮き輪に座る。


 すると安住が俺の手首を両手でつかんだ。


 反射的にそうしたんだろうが、可愛らしい仕草に意識してしまう。




「おふたりともぎゅっと寄って下さーい」



 えぇ……!?


 でも指示された通りにするしかないので身を寄せあう。

 

 この時点で十分心臓がバクバクしている。



「それではいきますよー。はい、行ってらっしゃい~」



 係員の一押しでずるっと滑りだす。


 水がコースに流れているから想像よりも加速がヤバい。


 特有の浮遊感が本能的にヒヤッとさせてくる。



「うわあぁぁ!? ちょ……はやっ?!」


 

 横の安住を見ると、掴まるのが手首から俺の腕になっていた。


 それを見た直後に、腕に当たるむにゅっとした柔らかさが脳に届く。



「あ、安住、安住さん!? あの、えぇーっ!?」



 俺は落ちる怖さと安住の行動に脳がついて行かず、


 気づいたら最後まで滑りきっていた。



「はぁ、はぁ。色々疲れた……。大丈夫か? 安住」



 見ると、安住は身を抱きながら背を向けていた。

 


「ちょっと今、あんまり見ないでください……」


「わ、分かった……」



 自らの行動に自分でもびっくりしたんだろうか。


 時間差で恥ずかしさが襲ってきたように思える。



「でも他の女の子を視界に入れるのもだめです」


「注文多いな……まぁ分かったよ」



 その後、落ち着いてから安住がまたスライダーを希望したので、


 それからはパーク内のスライダーを乗りつくした。




——————————————————————————————




余談ですが自分は普段趣味でエロ絵を描いてるんですけど、この小説はその合間に思いついた話をまとめて投稿したものです。



今後はエロ絵を描くのと並行して書いてるので更新が遅れますが、月に1回は更新するのでその時はまた読んで下さい。



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