第20話 都合のいいデート
最近では同じ売り場に新卒生が配属されてきた。私はもう、新しくはない。彼女はヒマワリのように笑う子で、私とは違う。彼女は先輩たちからも上手に好かれて、初めてだという接客だって完璧で、少しおっちょこちょいなところもあるけど、そこがみんなを笑顔にさせて、きっとこんな子がこんな職場に向いているのだろうと考えさせられる。私は二年目にして自分の不向きさに絶望感で一杯になっていた。
弱っている時の女はずるい。
若干、面倒に思っていた早川からの誘いにのって、最近では月に一度くらいは食事へ行っている。
彼はなんにでも早く気が付く人で、感が良いというか、間が良い。私が弱っている時にはちゃんと誘ってくれて、元気な時には音沙汰がない。
だから、
”そう言えば最近、会ってないな・・・”
と思ったときにメールが来るから、最近ではそれを見る顔もほころぶ。
もしかしたら彼は、恋愛上級者なのかもしれない。
彼は最初の日の事を気にしてくれているようで、あれから一度も積極的に口説いてくることは無い。もしかして、今がキスする雰囲気?と思う時ですら
何もしない。
逆に気になる。
もしかして、焦らされている?それとも、既に私は彼の恋愛対象から外れてしまって、ただのお食事仲間のような存在になってしまったのだろうか?
自分の立場に不安を抱く。
今夜も早川とデート。最初に会ったオシャレな洋食店で予約をしてくれている。
現地集合。18時半。私は、早上がりだから、少し早めにお店に着いた。
半個室の角席に案内されると、椅子に腰かける前に彼も店内に入ってきた。
「悠さん、待った?」
私は座りかけた腰をもう一度上げて、
「今来たところです。今日は仕事が早く終わったから、少し早く着いちゃった」
早川はホッとしたような笑顔になる。
私たちは席についた。彼は、何の話でも聞いてくれる。
絶妙な相槌だから、早川の前ではおしゃべりになる。
彼は優しい目でこちらを見つめ、
うんうん。
と同意してくれる。
そして、たまに、本当にたまに自分の意見を言ってくれる。押し付けるわけでもなく、提案のように・・・。それは的確で関心すらする。
ワインのおかわりがテーブルに届いたとき、聞きなれた声で呼ばれる。
「悠ちゃん」
私は呼ばれた方に目をやると。そこには栞。
えっ?栞?
私たちのワインをテーブルに置くと、栞は少し寂しそうな表情で、
「デート?」
小さく言った。
私は状況がよく分からなくて、栞からの質問にはこたえずに、
「アルバイトしてるの?」
そう聞く。彼は小さく頷く。
「悠さん、お知り合い?」
早川の声にドキッとして、彼のほうを向くと、
「ええ、弟の友達で・・・よく知っている子なんです。」
そう言うと、早川は、
「悠さん、弟がいるんだね。会ってみたいな。」
栞は小さく頭を下げてそこから去っていた。
いつからこのテーブルに配膳していたんだろう?何枚もお料理の皿がテーブルに届いた。大きなお店ではないから、そんなにスタッフも人数はいない気がする。もしかしたら、私がおしゃべりに夢中で、栞は声をかけるのにためらっていて、ずっと私を私たちを見ていたのかも・・・。
全然気が付かなかった。
何だろう?この罪悪感。まるで、浮気現場を押さえられたようで・・・。
だけど、栞にはちゃんと彼女もいて、幼馴染の前でも平気でキスなんかして、
そんなことをしているのに、罪悪感はおかしい。
全然、会いに来ない。、待っていても来てくれないし。思わせぶりなことをして、勘違いばかりさせられている。
だから、私が彼(早川)とデートしてても、栞には見せないような甘えた感じで話を聞いてもらっていても、
責められることは無い。
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