最終話 悪役貴族、お預けを食らう




 地上で目を覚ましてからの話をしよう。


 アデルシオンによって星が消滅した後、娘のエリーが『再生』した。


 その結果、星はそのまま存続することに。


 俺は魔王城で意識不明のまま倒れていたようで、治療のために魔大陸からアルテナ王国まで運ばれていた。


 それから一ヶ月も昏睡していたようで、目覚めるや否やメリエルに泣かれてしまった。

 パデラやアルロ、その他タマモや友人たちも同様だった。


 王国では英雄の復活と称して大々的なパレードまで開かれたほどだ。


 ……神域での出来事は忘れてしまうはずなのに、エリーの存在や能力を覚えていた理由は分からない。


 もしかしたらタマモの毒みたいに適応したのかも知れないな。


 さて、その後の出来事だが。


 端的に言うと、アルテナ王国が大陸を統一してしまった。


 敏腕女王改めシャルナとその友人、クィーンサキュバスのナサリーが人口減少で成り立たなくなった世界中の国々を吸収したのだ。


 ちなみにアルロは元鞘に収まってアルテナ王国騎士団長となり、二人の世話を焼いている。


 本音を言えばパデラに次ぐ頼れる俺の部下として側に置いておきたかったが、断られてしまったものは仕方ない。


 そして、肝心の俺だが――


 俺は大元帥の地位を返還すると同時に、大公の爵位と広大な領地をもらった。


 そのお陰で海に隣接する地域と港を手に入れ、海路を用いた交易でボロ儲け中だ。

 逞しいことに時々海賊に襲われるが、機関銃や大砲で武装した護衛船も一緒なので滅多に損失を被ることがない。


 もし万が一凶悪な海の魔物に襲われたとしてもリヴァイアがいるのでモーマンタイ。


 その気があるなら建国してもいいとシャルナに言われているが、王様はちょっと大変そうなので一臣下の地位に甘んじている。


 それから……。



「ちちうえ!! おそらがきれいです!!」


「……パデラ。俺の娘、生後一ヶ月で立って歩いて言葉を話すんだが。もしかして天才か?」


「幼い頃のベギル様もそうだったと聞いたことがあります」


「まじかよ。自分が怖いぞ」



 メリエルが娘を出産した。


 彼女と同じ青色の髪が印象的な、俺によく似ている子だ。


 名前はルリエット。


 とても頭がいい子で、簡単な魔法なら全属性扱えるチートっぷり。

 更には爆裂戦鎚を軽々と振り回す怪力で将来どこまで強くなるのか楽しみですらある。



「むふふ、流石はご主人様の娘なのじゃ!!」


「だまれ、へんたいきつね!!」


「んほおっ!! ご主人様に負けず劣らずの尻叩き!! 将来はきっと一流の調教師になるのじゃ!!」



 四つん這いのタマモの背中に乗ってお尻を叩くルリエット。


 俺はタマモの頭を鷲掴みにした。



「タマモ、お前はルリエットの教育に悪いから近づくなと言ったはずだぞ」


「ご主人様よ、これは教育の一環なのじゃ。妾のようなどうしようもない変態と遭遇した時、どう対処すればいいのか学ぶための!!」


「遺言はそれでいいな?」


「……僭越ながらベギル様。ベギル様のそういった言動も教育に悪いかと」


「む」



 横からパデラの正論で殴られ、俺は静かにタマモを解放した。



「タ、タマモ? できるだけ、娘の教育に悪いことをしないでもらいたいなァ?」


「んほおっ♡ 笑顔の奥に見えるご主人様の怒りの眼差しでイクのじゃあっ♡」



 まじでコイツ、ルリエットが見てないところで始末してやろうか。


 と、その時だった。



「ベギルさーん!!」


「大将!!」


「ベギルさま!!」



 エルフのワカバ、ドワーフのガンテツ、男の娘精霊術士のソアレだ。


 ワカバは戦いが終わった後、フラッグシルトで農場管理の仕事をしている。

 フラッグシルトに移住してきたエルフのまとめ役でもある。


 ガンテツはワカバと共にフラッグシルトへ移住して、現在はミスリル鉱山の再開発責任者を務め、同時に鍛治場の経営をしている。


 ソアレは精霊術士としてフラッグシルトの警備隊の隊長に就任した。

 相変わらず美少年で周囲から女の子と間違われているが、ツンデレ精霊のウィンに認められて今や王国有数の実力者である。


 しかし、今ではフラッグシルトの中枢に位置する三人の男たちが何やら慌てている様子。


 何かあったのだろうか。



「もう大変っすよ!!」


「まーた例の死術士が攻めてきたんじゃ。まあ、またお遊びの襲撃みたいじゃが」


「ええと、取り敢えず警備隊を出撃して対応させています」


「またエルーナか」



 俺にアンデッド軍団を譲渡して姿をくらませた死術士『死皇帝』エルーナは定期的にフラッグシルトに攻めてくる。


 しかし、本気の攻撃ではない。


 パデラ曰く『好きな相手にいじわるしたい年頃の少女のアレ』だろうとのこと。


 前みたいに素直に好意を示してくれるならこちらも誠意を以って対応するが、現状だとただの嫌がらせだからな。


 全力で対処する。



「警備隊を下がらせろ。俺のアンデッド軍団を向かわせる」


「分かりました!!」



 三人が各方面に連絡するために走り出す。



「お父様!!」


「ん? おお、エリー!! 女神の仕事は終わったのか?」


「はい!! お父様とルリエットに会いたくてちゃちゃっと終わらせてきたのです!!」



 どこからともなく姿を現したのはもう一人の娘、エリーだった。


 エリーは女神として神域で仕事をしているが、こうして数日に一度の頻度で地上まで遊びにやってくる。


 腹違いとはいえルリエットのことを本気で可愛がっており、姉妹仲は良好だ。


 ……エリュシオンにも見習ってほしい。



「べ、ベギルさまぁ!!」


『旦那ァ!! ちーと助けてくれェ!!』


「ん? メリエル!? どうした!?」



 エリュシオンのことを考えていると、妻のメリエルがボロボロの状態でやってきた。


 彼女の杖、オスカーに何事か訊ねる。



『エリュシオンとアデルシオンが喧嘩してやがんだァ!! メリエルが間に入って止めようとしたらこのザマだぜェ!!』


「……はぁー」


「お、お父様!! エリーが止めてくるのです!!」


「いや、あの二人の間に入るのは危ない。俺が行こう」



 俺はルリエットの世話をパデラとエリーに任せ、エリュシオンとアデルシオンの元へと向かった。


 そこは俺の屋敷の一室。


 普段からエリュシオンが引きこもっている部屋だった。



「ペチャパイはベギルとできるプレイが少なくて大変ですね」


「あら、無駄に脂肪が多いから知らないのね。ベギルはわたしのほどよい大きさの胸で陰茎を擦られると喜ぶのよ」


「何の話してんだお前ら!!」


「おや、ちょうどいいところに。ベギル、私とこのペチャパイの胸、どちらが好みですか?」


「え?」


「もちろんわたしよね? 昨日だってわたしの身体を必死に求めてきたものね?」



 女神たちの圧が凄い。


 ……俺は魔王城での戦いが終わった後、複数人の妻を娶った。


 メリエル、エリュシオン、アデルシオン……。


 一応、妻にしろと迫ってきたのでタマモもその立場だ。


 ただシャルナから『英雄の血筋は可能な限り残したいのでわたくしやナサリー、アルロも抱いてください』と言われている。


 身体だけの関係という、爛れた人間関係になりそうで少し怖い。


 っと、現実逃避はやめておこう。


 そろそろエリュシオンとアデルシオンの喧嘩を止めないと屋敷が吹っ飛びかねない――というところでメリエルが乱入してきた。



「べ、ベギルさまは私のおっぱいで搾り取られるのが一番好きです!!」


「あら、人間のくせに言うわね。気に入ったわ」


「メリエルの成長が私は泣くほど嬉しいです」


「……めちゃくちゃ無表情じゃない」



 メリエルの乱入で更にややこしい事態に。


 ……俺が『ブレイブストーリーズ』の世界を見て回れるのはいつになるだろうか。


 少なくともあと十数年は経ってルリエットが大きくなり、爵位を継げるようになるまではお預けだな。






―――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント小話

サブタイトルの『お預けを食らう』を見てやましいことを考えた人は新作『奈落の底に勇者あり。~追放先が歴代勇者の墓場だったので、全員生き返らせたら規格外の英雄国家が誕生した~』を読みに言って★★★ください。


また本作の書籍化が決定しました。これにて一度完結とさせていただきますが、書籍化決定を記念して番外編を投稿予定です。気が向いたらまた読みに来てください。



「おもしろかった!!」「★★★をくれてやろう!!」「思ったから新作を読みに行く」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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