第31話 悪役貴族、魔大陸に上陸する




 リヴァイアサンが美女に変身した。


 先が枝分かれした角が頭に二本生えており、青い羽衣をまとった水色の髪の美女だ。


 しかし、何より驚くべきは身長だろう。


 その高さはおよそ三メートル、見上げるくらいデカイ女の人だった。



「……で、お前はリヴァイアサン、なのか?」



 どうやら魔王の洗脳が解けたようで、正気に戻ったらしい。


 人化したリヴァイアサンを連れて旗艦『ベギル』に戻ってきた俺とタマモは、警戒しながら話しかける。



「ああ、我の名はリヴァイアです。そこは間違えないでもらいたい」


「リヴァイアサンの『サン』って『さん』だったのか」


「長いこと海底で眠っていたせいでしょう。昔親しくしていた人間の子孫に間違って伝わったのかも知れません」



 ちょっと面白いぞ、それは。



「改めて謝罪させてください、勇敢なる者たち」


「なーにが『謝罪させてください』じゃ!! お主のせいでご主人様と妾がどれだけの迷惑を被ったか!!」


「やめろ、タマモ」


「んお゛ほっ♡ ご、ご主人様ぁ♡ 乱暴に尻尾引っ張っちゃらめなのじゃあっ♡」



 タマモがリヴァイアに絡みに行こうとしたので尻尾を引っ張って止める。


 尻尾の触り心地、いいな。



「魔王に操られていたとはいえ、勇敢なる者たちに牙を剥いたのは事実。我にできる償いがあれば何でも申し付けいただきたい」


「……何でもって言ったか?」


「え? あ、は、はい。あまり無茶なものは無理ですが……」


「さてはご主人様!! このデカ乳海蛇女をベッドに押し倒して乱暴する気じゃな!! 約束が違うのじゃ!! 妾が先に乱暴してもら――むきゅ!?」


「会話の邪魔だ」



 余計なことを言うタマモの顔面を鷲掴みにし、少し黙らせる。



「リヴァイア、お前に一つ頼みがある」


「何でしょう?」


「実は操られていたお前を倒すために弾薬を使いすぎて、上陸作戦が瓦解した」



 魔大陸の沿岸ではきっと俺たちの上陸を防ぐために魔物たちが防御を固めているはずだ。


 本来の予定では、海上から艦砲射撃を行って防御もろとも魔物たちを殲滅し、そのまま上陸する予定だった。


 しかし、そのための弾薬がなくなったのだ。


 このままでは上陸作戦を諦め、一度アルテナ王国の港に帰還せねばならない。


 それは大きな時間のロスだ。



「というわけで、リヴァイアには沿岸にいるであろう魔物をまとめて相手してほしい」


「……なるほど。そういうことであれば協力しましょう」


「あ、ついでに上陸作戦が終わったら兵站を海上輸送する時に船を護衛してほしい」


「分かりました」


「それからお前の鱗をくれ。新しい武器の素材になりそうだから」


「は、はい、承知しました」



 俺はリヴァイアにあらゆる要求をした。


 リヴァイアもリヴァイアなりに俺たちを襲ったことに罪悪感があるのか、多少無茶な要求も頷いてくれた。


 くっくっくっ。


 リヴァイアの協力があれば上陸作戦とその後の攻勢作戦に必要な兵站線の確保も容易!!


 待っていろ魔王、お前の首までもう少しだ!!



「のぅ、ご主人様♡」


「なんだ?」


「意地悪じゃな♡ 妾との約束を忘れたとは言わせぬぞ♡ 妾が壊れるまで乱暴してほしいのじゃ♡」


「……はあ、分かった」



 いくら非常事態で適当に了承したとはいえ、約束を違えるのはよくない。


 ……というのは言い訳か。


 海に出る前、俺はギリギリまでメリエルに搾り取られた。

 しかし、航海中はそういうことをする相手がいないせいで性欲が溜まりに溜まっている。


 タマモは見た目だけなら可愛らしい少女だ。


 男というのは単純なもので、美少女に迫られると自制が効かない。


 浮気という言葉がちらつくが、この世界では重婚が普通だし、メリエルを蔑ろにするつもりは欠片もないので許してほしい。



「さっさとヤるぞ。部屋まで来い」


「あ、ちと待ってほしいのじゃ。おい、そこのデカ乳海蛇女!! 一緒に来るのじゃ!!」


「わ、我ですか?」



 何の真似か、タマモはリヴァイアも連れて俺の部屋までやってきた。



「おい、デカ乳海蛇女。ご主人様のベッドで仰向けになるのじゃ」


「は、はあ、分かりました。こうですか?」


「タマモ、リヴァイアに何をさせるつもりだ?」



 俺が首を傾げていると、タマモは仰向けでベッドに眠るリヴァイアの豊かな胸に顔を埋める。


 ……ちょっと羨ましいな。



「おほおっ!! これは中々柔らかい乳布団じゃな!! 実は船のベッドはガッチガチで困っておったのじゃ!! お主、妾とご主人様がイチャイチャする間、ベッドになっておれ!!」


「な、こ、これは流石に……」


「なんじゃ、断るのか? さっきの謝罪は何だったのかのぅ?」


「うっ、わ、分かりました」


「というわけでご主人様よっ♡ 早速妾に乱暴してたもぅ♡」



 そう言ってタマモは俺の方にお尻を突き出し、誘うように尻尾をフリフリする。

 俺は普段メリエルには絶対やらないような激しい攻めで乱暴にタマモを抱くのであった。









 それから数日後。


 少し遠くに魔大陸が見えてきたところで船を停泊させた。



「――――――――――ッ!!!!!!」



 竜の姿と化したリヴァイアが咆哮を上げ、巨大な身体をくねらせて大きな波を起こした。


 魔物たちは沿岸部に要塞を築いていたようだが、絶大な水の奔流には抗えず、そのまま押し流されてしまう。


 俺からリヴァイアにお願いしておいて何だが、凄まじい破壊力だ。


 アルロも絶句している。



「あれをオレたちの船にやられていたら……」


「転覆してたかも知れないな」



 リヴァイアは魔王の力で操られていたが、完全なものではなかったらしい。


 態度から分かるが、彼女は人類に対して非常に友好的だ。

 魔王からの船を襲えという洗脳にもギリギリまで抗っていたのかも知れない。



「さて、波が引いたら上陸して簡易拠点を築く。そこを起点に魔物を殲滅しながら魔王城を目指すぞ!!」



 水兵たちから歓声が上がる。


 しかし、この時の俺はちっとも想像していなかったのだ。


 もう魔大陸には魔物がいないことを。


 魔王が邪神の復活を早めるために、配下であるはずの魔物たちを全て殺して生け贄に捧げていたことを。


 俺は知る由もなかった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント小話

リヴァイアはむっつりなのでタマモとベギルの行為をずっとガン見していた。



もっと攻めろよ!! と思った方は★★★ください。



「タマモは変態だけど可愛い」「乳布団で草」「あとがきで笑った」と思ったら、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る