第13話:揺れる心、嘘の果てに

夕暮れの薄紅色が空を染め、城の石畳に長い影を落としていた。

その静かな時間の中で、私は自分の内面と向き合わざるを得なかった。


リディア様との言葉が頭を巡る。

「私たち、きっと同じ気持ちよ」——その優しい言葉は、胸の奥に小さな灯火を灯したけれど、同時に新たな不安も呼び起こした。


なぜ私は、あの人を愛しながらも、彼女と同じ気持ちだと言えるのだろうか?

それは痛みの共有なのか、それとも、互いの孤独を認め合うことなのか。


私の心は、まるで揺れる波のように不安定だった。

彼への想いと、リディアへの嫉妬、そして何より自分自身への疑念。


「もし、私が嘘をついていたら?」

そんな考えが頭をよぎる。


“彼は本当に私を愛しているのだろうか?”

“私はただ、彼に愛されたいだけの自己満足なのかもしれない”

“リディアは何を考えているのか、何を望んでいるのか分からない”


部屋の中は静まり返っているのに、心の中は嵐が吹き荒れていた。

窓の外、風が草木を揺らし、遠くから子供たちの笑い声がかすかに聞こえてくる。


その温かな音に、私はぎゅっと胸を締めつけられた。

こんなにも愛を求めているのに、どうして私はこんなにも孤独なのだろう?


突然、窓辺の花瓶が揺れ、ひとつの花びらがひらりと落ちた。

儚くも美しいその瞬間に、私は決意を新たにした。


「嘘に溺れてはいけない。真実を、彼と自分自身に向き合わなければ」


その決意は、まるで冷たい夜風に吹かれた火種のように、私の胸に小さな熱を宿した。


翌日、私はリディア様ともう一度話すことを決めた。

お互いの想いを隠さず、嘘をつかず、ただ真実を見つめるために。


けれど、その道は決して容易くはなかった。

そこには、さらなる試練と苦悩が待ち受けていることを、私はまだ知らなかった。


夕暮れは深まり、城は静けさに包まれていく。

その中で、私の心の闇もまた、少しずつ形を変えながら深く広がっていった。


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