第39話【神級薬師】免許試験

あれから100日なんとか予定通りに作成を進めて依頼された分の100万本を納品することが出来た。ポーション作成所は解散する訳にも行かないので一般的に流通している薬品とかポーション類を製造販売する会社になっている。

従業員は前のメンバーが残っている。その中でも調薬に興味を持った人達を教育して取り敢えず【初級薬師】の免許をとれるように頑張っているところだ。


鑑定してみたらなんと5人も薬師の素質が有る人材が居た。

うちの強みは実際に実習訓練が出来ることだ。スキルを取得すれば知識は自然と頭に入ってくるが、実際に作ったことが有ると無いとでは実力がつくのに差がついてしまう。

生徒たちはヤル気のある連中で、教え甲斐が有る。

初級ポーションは作れるようになっているので免許を取るのに不安は無い。


かくいう自分は【神級薬師】のスキルを入手するまでは無免許だった。サラサント病の特効薬作って送った際に無免許でああることは伝えてあるが、送ったポーションの効果が【特級薬師】のよりも性能が良く効果が高かったので特別に【特別薬師】としてポーションを作ることを許された。

というよりも王国としては僕に作って貰わないと困ってしまう状況だったのだが……。


でさすがに、今後の為に本当に試験を受けて免許を取って欲しいと王都のギルド本部から要請されたので、サッチャルと王都に行くことにした。僕たちが留守の間は従業員一同には休んで貰うことにした。勿論給金はちゃんと支払う。強制的な有給休暇だ。


試験の日が来た。会場には【神級薬師】3人【特級薬師】3人、が試験監視員として集まっていた。更に王宮医療長と第2王子殿下と第2王女殿下が見学に来ていた。まず筆記試験。僕とサッチャルは離れた席で試験を受けた。これは余裕で回答できた。サッチャルも余裕の表情だ。


【神級薬師】の試験は前代未聞の事なので問題を出す方も相当悩んだらしい。

なので実技試験は【特級】以上のポーション又は薬を作って見せること。そのレシピを書いて提出する事だった。

これは予想の範囲内だったので、予めサッチャルにマジエレの木の実の赤い方を渡しておいた。これで魔力不足で悩んでいる人に安定して魔力を補充出来るポーションが作れる。


一方僕の方はマジエレの木の実の青い実を使って魔力過多で体調不良に陥っている人に通常の魔力量を安定して保持する事が出来るポーションを作れるのだ。

みんなの目が僕たちに注がれる。

「お二人同時に作られては我々の意識が集中出来ないので、テラノさんからお1人ずつ作業開始してください。それと作り方の解説をしながら作って下さい」


僕はガラス製の500ミリリットルのビーカーを用意して洗浄浄化魔法で殺菌消毒する。ビーカーに

聖魔性で作り出した聖水を注ぎ込む。

「うおー、なんという清らかな黄金色の聖水だ!我々が作り出す聖水とは段違いの神々しい聖水ではないか!」

【神級薬師】の1人が感心している。


(えっ、こんなの普通のことなんじゃないの?)


僕は青い実のマジエレの木の実と【星の雫】という希少な薬草の花だけを使って聖水に入れて魔動コンロで加熱する。1度沸騰させた後は75℃を維持して10分間煮出す。これ以上温度を上げると不要な成分が出てしまうので、温度管理は徹底するように説明する。その後火を止めて、魔力過多症が治るように願い、イチゴ味に美味しくなるようにと30秒間魔力を注ぐ。

温度が下がるのを待っていると清らかな水色に輝く薬液が完成した。

王宮医療長が鑑定すると

「おお、これはまさしく【魔力過多症の治療薬です。毒素は一切無し。シリア王女殿下早速これをお飲みください」

(やっぱり王女殿下は【魔力過多症】だったのか、色白というより病的な青白い肌の色からみてそうではないか見当を付けて

作った薬だが。良かった。役に立ちそうだ)


王女殿下がビーカーから直接飲もうとしたので僕は止めた。

「そのお薬はこの銀杯程度の量で充分効果がありますのでこれをお飲みください」

銀杯に5㏄ほど取り分けて勧めた。忽ち顔色が良くなって健康的な桜色の肌になった。こうしてみると輝くような美少女だ。


「あっ長年私を苦しめていた胸の痛みが消えて身体がとっても軽くなりました。ありがとうございます!テラノ様!」


さて次はサッチャルの番だが。第2王子殿下のケイル様が期待に満ちた顔でサッチャルを見ている。

王子殿下は【魔力過少症】のようだ。サッチャルに渡しておいた赤いマジエレの木の実が役に立つだろう。






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