第38話 第1回出荷とパリーのお土産

釜の中で出来上がった200リットルの薬液を自然冷却してから錬金術で作った10リットル入りの容器20個に移してそこから10人の職員に、100㏄の小瓶にスポイトを使って移して貰う。勿論作業員の衣服はクリーン魔法でチリを除去して細菌等も消去してある。これを午前中に1回午後に2回行う。

なぜ午前中は1回なのか?

その日1日分の聖水を作ったり、ラベル作り、素材が揃っているか等を確認してから僕が作業開始するからである。

なので作業員には9時半ごろに作業所に入って貰う。

小瓶に移したら隣室でラベル張りをして貰う。

ラベルには薬品名と作成日、開封した後の使用可能年、月、日を記入してある。そして作成者名を明記してある。


別棟の作業所ではサッチャルのチームが僕の方と同じ作業をしている。

なので1日12,000本作る事になる。

100万本作るのに84日かかるが実際には最低週1回の休日が必要だから約96日は必要だ。週休2日で連休などが入ってくると110日は掛かってしまうだろう。

王都の本部ギルドとはその計算で契約してある。でもまあ王族の都合で急に変わる恐れがあることを覚悟しておこう。皆が慣れてきたら少しでも余分に作っておいてラベルを貼らずに時間停止の収納空間に仕舞っておこう。劣化しないからね。


さて、記念すべき初出荷の日である。ちなみに今日はみんなは定休日だ。

念には念を入れて不良品は無いか検査して、自信を持って送り出せるサラサント病の特効薬ポーション12万本を収納して冒険者ギルドへ転移した。

ギルマスのデイザーさんが出迎えてくれた。

「おはよううございます。約束の初回出荷分の12万本持ってきました。確認おねがいします」

「おお、ご苦労さん……うむ確かに12万本受け取った……品質も問題無いな。次回は10日後かなよろしく頼むよ」

「はい、お任せください」


帰りに。顔なじみになった受付嬢のマレーヌさんから受領証を貰って転移で我が家に帰る。

家に帰ると蝙蝠型妖精のパリーがサッチャルと遊んでいた。パリーと会うのも久しぶりだ。パリーは自由に自分好みの木の実を探しに山脈の裾野の森や、小山を探検してまわっていたのだ。


「パリーお帰り。何か美味しい果実でも見つけたかい?」

「うん、結構な収穫が有ったよ。はいこれお土産マジエレの木の実だよ」

「おおこれは伝説の魔素の木の実じゃないか。パリーでかした!」

「えへへ。パリー出来る子?」

「ああ、えらいえらい」


その実はサクランボみたいに2個繋がっているが実の色は赤の実と青の実の2色が茎(軸)で繋がっている。とてもユニーク木の実だ。だが下手に食べてはいけないらしい、人によっては毒になるらしい。だが毒と薬は裏表、ある病に苦しんでいる人にとってはとても有難い特効薬になるらしいのだ。


僕はその実を軸で繋がったまま植木鉢に埋めて僕の時間促進空間に入れて置いた。発芽に必要な温度と水分を調節して、ちょっと成長したら畑に植え替えて時間を早めて35年経った状態にした。

桃栗三年柿八年マジエレの木の実は三十年というではないか

実をつけ始めてから更に5年。木の実は鈴なりになっている。


取り敢えず実は時間停止空間に収納して木のほうは今は通常の時間通過状態にしてある。

きっといつの日か役に立つことが有るだろう。


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