第16話 就寝
ご飯を食べ終わった後私たちはお風呂に入り、歯を磨いて寝る準備を始めた。
私の後にソフィーがお風呂に入ったのだが同じシャンプーとボディーソープを使ったはずなのになんだかソフィーの方がいい香りがしている気がする。
なんだか女子力で完全敗北をしていて、ちょっと悔しい。
「もう寝るの?」
「ええそうね、明日は朝早くから装備の試作がしたいし、早めに寝るとしましょうか」
ソフィーがベッドに入ったので、私はソファーで寝ようと思い向かった。
「ノルン、どこに行くの?」
「どこって、ソファーで寝るだけだけど」
ソフィーが驚いた顔をする。私何か変なこと言ったかなぁ。
「私たちの仲ではあるけれどノルン、貴女今日は私の客人なのよ!?それをソファーなんて、私の名が恥じるわ!」
「いやでも、ベッドは一つしかないみたいだし」
「いいから、ベッドで寝るわよ!」
ソフィーに無理やり引っ張られてベッドに押し込まれる。むぎゅう、狭い、けどいい匂いが隣から来て緊張する~!
私がもんもんとしながら眠れぬ夜を過ごしていると、ソフィーが私の方を振り返った。
「ノルン、まだ起きてたの?」
「ソ、ソフィーこそ、早く寝なくていいの?」
「ええ、お昼に寝ちゃったから、ちょっとね」
な、なんだろうこの空気、すごく甘い。
まるで、恋人みたいな距離で、ってひゃあっ!
ソフィーが私の手を布団の中で握る。なになに、今日のソフィー何か変!
「ちょ、ちょっとどうしたの!?」
「ふふっ、ノルンは、かわいいわね」
ボッと顔が真っ赤になるのを感じる。
あれ、なんかすごいいい空気になってない?まるで、告白でもされるみたいな。
ソフィーが私の方に近づく。ひぇぇ、目と鼻の先にソフィーがいる!顔が良すぎて怖い!
「私ね、今日ずっとノルンに話したかったことがあるの」
「な、ななんでございましょうか」
「ノルンは、いつも私のこと大好きって言ってくれるけど、それってどれぐらい本当なの?」
ソフィーの顔は暗くてよく見えないけど、声の調子や胸の鼓動からわかる、多分とっても緊張している。
何が何だかよくわからないけど、素直に答えた方が良さそうなのは私にもわかる。
「ソフィー、全部本当だよ、私にとってソフィーは支えで、片割れで、相棒で、友達で、誰にも変わることのできない、大好きな人」
「そう、それは、嬉しいわね。でも、その仲に恋愛感情もあるの、かしら」
おそらく頬を真っ赤に染めたソフィーが衝撃的なことを告げる。私が、ソフィーに恋愛感情を......。
多分、あるのだろう。私が今まで目を向けようとしていなかっただけで、最初っからずっと好きだったに違いない。
でも、それを明かしてはならないと思う。
ソフィーの恋人になれる人は世界で一番幸せな人だ。
私だって、ソフィーと付き合えるなら付き合いたい。だけど、今のソフィーは私以外に親しい人がいないから、そう思っているだけで、世界に目を向ければもっと素敵で、ソフィーのことを支えてあげられる人がいるはずで、だから私はこの気持ちには蓋をしなきゃならない。
だってそれがいつかのソフィーの幸せの妨げになっちゃだめだから。
「ソフィー、ごめんね、私は、まだそういうのはわからないし、ないから」
「えっ」
ソフィーは驚いた顔をする。多分きっと私が受け入れてくれると思っていたから。
その考えは間違ってはいない。間違ってはいないけど、私は自分よりもっと立派でいい人がいるということを前世でいやというほど学んできた。
大好きだったゲームだって上には人がたくさんいた。
だから世界で一番の幸せ、ソフィーの恋人という席を手に入れてしまうのが怖い。手に入れた幸せを失うのは、手に入れられないことより怖くて、ずっと嫌だ。
ソフィーは泣くかもしれないけど、いつかその悲しみを支える私よりいい人がみつかるはずだから、許してほしい。
「私、寝るね」
これ以上起きていたら罪悪感できっと泣いてしまう。
ソフィーは私のことを一番知っているからそんな姿を見たら私が何を考えていたのかばれてしまうに違いない。
だから、逃げる。弱い私を、許してほしいと祈りながら。
ソフィーがなにかをいう声が聞こえた気がしたけど、聞こえないふりをして私は眠りについた。
「ノルン...」
「寝たかしら」
ソフィーがノルンの肩を何度かたたく、だが反応はない。ぐっすりと眠っている。
「私、ソフィーがそう答えると思ってたわ。ソフィーは素敵だけど、自分に自信がないものね」
「でもね、いいの。私はそれを知っててそう答えたから」
「ノルン、私あなたが好きよ。きっとこれから先、貴女以上に素敵な人に合うことはないって断言できるぐらい」
「でもあなたは断るのね、優しいけど、それ以上に怖がりだから。いいの、別に、それはわかっていたから。なんだってあなたは私の半身だから」
「それでも許されるのなら、私はあなたを守り続けたい。どんな形の関係でも構わないから、ずっとそばにいさせてほしいの」
「恋人はあきらめるから、ずっと一緒にいましょうね、ノルン」
自分の秘めた思いを隠すことを決めたソフィーは、そっとノルンにキスをして、同じように深い眠りについた。
その顔は、涙で少し濡れていた。
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