第3話 青春ドラマと本格ミステリのマッチング


 はい。

 この二つがめちゃくちゃ干渉しあいますね‼


 青春ドラマって、人間同士の物語なんですよ。その中でも若年層、社会的にはまだ力がなく、学校の中という狭い空間と環境に強制的に閉じ込められ、その中で自分の身の置き場などをシミュレーションしつつ、マウントを取りあったり、貶めあったり、人を好きになったり、相手にされなくて苦しんだりと、そういうのが青春だと思うんですよ。


 本格ミステリ、そういうのきれーーーにツマにするじゃないですか。

(※ ツマ。刺身の横にある大根のほっそいやつ。つまり添え物)


 ミステリは、情報をちらりほらりと過不足ないように撒いてゆき、最後にそこから推察できる謎をあてるもので、つまり主軸はパズルです。

 文字数の縛りは八万字から十四万字。とにかく少ない、短い。

 この中で真っ当なパズルを組もうとしたら、人間の葛藤だのドラマだのをしっかり書いてる余裕なんかないわけです。


 ここが一番匙加減がきつかった。


 ミトは、青春とは死だと考えます。

 全生命が平等に与えられる、どんなに足掻いても必ず加齢するという運命にのっとって、子供から大人へと身体も思考も変化させなくてはならない。

 与えられる側から、与える側にならなくてはならない。

 その転換とは、つまり子供時代の死です。


 全ての人間は心の中に子供の自分を持っているといいますが、それが現在の自分自身であってはいけません。

 あくまでも、抱えている子供時代の自我とは、過ぎて死したる遺体なのです。

 自分の内面にあれど、大人へと自認が変わりゆく自分から見るそれは、すでに客体であって、失われたものであることが実際健全でしょう。


 そういった観測の眼差しに紙面を割いていると、綿密なパズル的性質がどうしても弱体化するのです。


 だからこそ、ここが本当に難しかった。


 まあ、別に「本格ミステリをくれ」とは書かれていません。

 本格ミステリでもいいよ、でした。


 広く読まれているミステリも、その大半はドラマに包みこまれたものですから、そのあたりの感触を参考に、登場人物たちの心の動きを負いつつ、組みこんだ謎を解明させてゆけばいいのだなと。


 そんなふうに漠然と考えた「前提条件」を持って、一つの青春ミステリを完成させましたが。


 皆さん、青春、書きましたか?


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