第2話 妹達と授業

 そして、一応は教室に戻って授業に出ることにしたリュウ。だがしかし、内容は一言でまとめれば〝意味不明〟だった。

 余りの悲惨さと可笑しさ、そして先生含め全校生徒全員がブラコン妹になっている状況に身の危険を感じたリュウは、三時間目で学校を抜け出した。

 ここではその意味不明な授業風景を、簡潔に説明していく。


 ・一時間目『英語』・


「はい佐藤さん、それではこの英文を読み上げてください」


 黒板に書かれた文を先生(二十代後半の女性)が指さす。呼ばれた生徒ハッキリと読み上げた。


「I love older brother forever.」


「よくできました。意味は『私は永遠にお兄ちゃんにラブ』だよってことでね。つまり先生はリュウお兄ちゃんのことが一生好きなんだよねっていう事なんだよね~」


「えっ」


 突然名前を呼ばれて驚くリュウ。先生が頬を赤らめリュウに向く。


「そうだよねリュウお兄ちゃん?結婚、しちゃうしね?だってこの前一緒に婚姻届出しに行ったもんね?」


「……え、い、いやいや行ってない行ってない」


 手を横にブンブン振るリュウ。そんな中、クラス中が先生に対し苦情を叫び出す。


「は⁉婚姻届出したってどういう事だよテメぇ!」


「おにぃが俺以外と結婚するわけねえだろ‼」


「純粋に〇ねやクソボケぇ‼」


 罵詈雑言を浴びせられる先生が、バンッと教卓を叩いた。


「は、何よ?私とお兄ちゃんの関係に文句があるっていうの?あ?」


「ありありだわ!」


「兄妹はいいとしても生徒と先生は犯罪だろ!」


「兄さまと結婚出来るのは神か私だけよッ!」


「んな訳ないでしょうがッ‼先生とお兄ちゃんが結婚するのは日本の法律で決まっているじゃないの‼」


「いや決まってねえよ」


 最後にリュウが呟くが、クラスの人々には届かない。更に先生と生徒達の言い争いは加速していく。


「先公が調子こくなや!」「兄貴はアタシと子供いるんだぞ!」「帰れ!」


「クソっ、何だっていうのこのクラスは――――――調子に乗るのもいい加減にしなさい!アンタら同じ……同じ母体から生まれてもない癖にッ‼」


 先生が鬼の形相で叫んだ。


「いやお前もだろうが」


 リュウが呟くが、届かなかった。

 そして、虚言を吐く先生と生徒達の戦いはチャイムが鳴るまで続いた。


 ・二時間目『家庭科』・

 内容はカレーライスを作るというものだった。全校生徒で、体育館で。


「リュウお兄ちゃんに、カレーライスを作りたいかーーーーー‼」


 マイクを片手にステージの上で叫ぶ教頭(60代、大分お腹が出ている)。


「「「「「「「作りたーーーーーーーーい」」」」」」」


 全校生徒が声を合わせて答える。合わさった叫びがデカすぎて体育館全体が揺れる。


「リュウお兄ちゃんに、『ははっ、お前の作るカレーはやっぱり上手いなぁ。いいお嫁さんになるんじゃないか?まあ、俺の嫁だけどな。――――今夜ベット来い☆』って言われたいかーーーーーーー‼」


「「「「「「「言われたーーーーーーーーーい」」」」」」


 さっきよりも食い気味に叫ぶ全校生徒。体育館の端にいる先生達も叫び出す。またもや揺れる体育館。


「何コレ」


 ステージの中央、椅子に座らされたリュウはぽつりと呟いた。

 しかし、全校生徒に『お兄ちゃん、あ~ん』を強要されたので滅茶苦茶疲れた。教頭にもされた。

 カレーライスはぼちぼち美味しかった。


 ・三時間目『体育』・

 内容は鬼ごっこ。体育なのに何故鬼ごっこしてるのかは不明だが、突然先生が、


「鬼ごっこしようほら、昔さ。僕と兄さんで一緒にやってたでしょ?あはは、懐かしいや。………………また、あの頃の様に仲良くしたいなっ、兄さんと」


 とリュウには存在しない記憶を先生が語った後、鬼ごっこは始まった。


「おにいいいいいいいいいちゃあああああん!!!どこおおおおおおおおおおおお!!!!」


「ぐへぇ、お兄様を捕まえてドスケベエッチばいしてやりますわよぐえへへへへへぇぇぇ」


「兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴どこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこ」


 ――――――鬼は、リュウ以外のクラスメイト全員だった。


「…………………………すぅ。あ~、これヤバいわ」


 リュウは身の危険を感じたので、全力校外へと逃げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る