第2話 いざEROへ

翌日、僕は最新のフルダイブギアを装着してログインした。


「エターナル・リアルム・オンライン 起動」

「意識接続開始。五感フィードバック有効」

「ログインを開始します――」


ふっと意識が浮かび、全身の感覚が一枚ずつはがれるように消えていく。

やがて視界が真っ白に染まり――


「ようこそ、エターナル・リアルム・オンラインへ」

「キャラクター作成を開始してください」


目の前に浮かぶウィンドウ。指を動かせばそのまま触れるようなリアルな感触。

完全に“そこにいる”感覚だ。


▶ 名前: たたら丸

「たたら製鉄」の“たたら”と“~丸”という和風ネームの組み合わせ。

ほんのり可愛さも残した、打ち手らしい名前。


▶ 種族:

選べるのは8種族。ステータス傾向も異なる。

――――――――――――――――――――――

種族   特徴・補正傾向

ヒューマン  (バランス型)

獣人     (STR+2、AGI+1)

魚人     (AGI+2、HP+1、水中補正)

鳥人     (AGI+3、空中補正)

妖精     (INT+2、MP+2、体格小)

エルフ    (DEX+2、INT+1)

ドワーフ   (STR+2、VIT+2、DEX−1)

竜人     (STR+2、HP+2、MP−1)

――――――――――――――――――――――

ステータス

HP / MP / STR / ATK / VIT / DEF / INT / DEX / AGI / LUK

ステータスごとに鍛冶への影響もある。

例:STR=ハンマーを振る腕力

   DEX=打撃の精度

   INT=合金知識や加熱管理

   LUK=素材ドロップ率


僕は種族ごとの説明を見ながら、軽く腕を組んだ。


(クラフト職ならDEXとかINTは高い方が良さそうだけど……)

(素材集めもあるなら、STRやAGIもいるかもしれないな。誰かが届けてくれるわけじゃないし)


正直、ドワーフの鍛冶適性の高さにはちょっと惹かれた。

でも、見た目がちょっとゴツすぎて、今の僕とギャップがある。

結局――


「ヒューマンでいこう」


ステータス補正はないけど、見た目は現実に近くて落ち着くし、何よりバランスがいい。


「ヒューマンを選択しました」

「次に初期スキルを選択してください」

「現在のスキルポイント:10P」


スキルは、戦闘・採集・生産など様々で、レアなスキルほどコストも高い。

レベルアップごとにスキルポイント(SP)が追加される仕組みらしい。

画面をスクロールしていくと、僕の目が止まったのは――

――――――――――――――――――――――――――――――

スキル名    消費P    効果

耐熱皮膚    5P  高温下での火傷・疲労を大幅軽減(PvE火耐性も)

材質鑑定Lv1   3P  素材の純度・性質・加工適性が分かる

作業安定化Lv1 2P  鍛造・工作時の失敗率が小低下

――――――――――――――――――――――――――――――

まずは、火に慣れるための《耐熱皮膚》。実際の鍛冶場でも暑さは地味に体力を削る。

次に《材質鑑定》。素材を見抜けないといい刃は打てない。

そして最後に、失敗を減らす《作業安定化》。始めたばかりの今はきっと役立つはず。


「耐熱皮膚(5P)・材質鑑定Lv1(3P)・作業安定化Lv1(2P)を取得しました」


(よし、これで行こう)


そして最後に現れたのは、初期スタート地点の選択。


【初期エリアを選択してください】


山林都市リベラム:自然豊かな山岳地帯に位置する木造都市。クラフト系職業が多く集う。


海上都市マレティア:水上に築かれた美麗な交易都市。料理人や商人プレイヤーが多い。


機械都市グラート:魔導工学が発達した蒸気機械都市。ガジェット系や錬金術師に人気。


「へぇ……3つもあるんだ。どれにしようかな」


僕の目が止まったのは、《山林都市リベラム》。


木々に囲まれたその街のイメージには、どこか懐かしさがあった。祖父の工房を思い出すような、木の香りが漂ってきそうな景観。


「うん、ここにしよう。クラフト職も多いって書いてあるし、鍛冶にはぴったりだ」


【選択:山林都市リベラム


【キャラ作成完了。ゲームを開始します】


視界が一瞬、白に染まり――ログインが始まる。



「うわ……リアル……」


風の感触、遠くの金床の音、誰かの走る足音――

五感があまりにも自然で、夢と現実の境界が一瞬曖昧になる。


「たたら丸さんですね? 初期ログインを確認しました。どうぞ、こちらを」


近くのNPCがパンフレットのようなUIを渡してきた。

その中に、「ギルド加入のすすめ」の文字があった。


「……鍛冶師ギルド、か」


僕は自然と歩き出していた。

鍛冶場の音が、胸の奥で高鳴っていた。


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