仮想世界で鉄を打つ ―たたら丸の鍛冶師奮闘記―

ぐりえら

第1話 僕は刀を打ちたい

「刀を打つには五年の修行が要る」


作業場の火床の前で、祖父はいつもそう言っていた。

実際、法律上もそうなっている。日本刀の製作には文化庁の許可と、五年間の鍛錬期間が必要なのだ。


僕、鉄野 鍛太(てつの かんた)。高校二年、小柄で童顔。

中学から祖父の工房で鍛冶の修行をして、今年で四年目になる。

包丁、工具、ナイフ……そういったものは任せてもらえるようになったけれど――


「まだ四年目じゃろ。法律で決まっとる。刀を正式に打つには五年の修行が必要だ。免許も出ん」


「……うん、分かってるよ、じいちゃん」

わかってる。でも――(あと一年……長いなぁ)


そんなある日、兄がVRゴーグルを外して、ソファにどさっと倒れ込んだ。


「……くそ、また壊れた」


「どうしたの?」


「短剣が折れた。さっき修理したばっかだったのに。10回くらいしか戦ってないぞ」


「それ、ちゃんと作ってないからじゃないの?」


「うっせ、職人か。てかお前向いてるかも。《エターナル・リアルム・オンライン》。通称E・R・O」


「ERO、エロ……」


「略称はアレだけど内容はガチ。鍛冶もできるし、戦闘も、農業も、建築も、釣りも!」


兄がリモコンをいじると、空中にホログラムのように映像が現れた。

そこには兄のキャラが、溶鉱炉の前で素材を投入し、簡易メニューを操作している様子が映っていた。


「これが“簡易製作”。素材と型を指定するだけで、すぐに装備が作れる。簡単だけど、性能は……まあ微妙」


「ふむふむ……」


兄は別のウィンドウを開いて、装備ステータスを見せてくれた。


■ アイアンショートソード(簡易製作)

耐久:32/32

攻撃補正:ATK+40

命中補正:DEX+20

追加効果:なし


「これが今使ってたやつ。素材にそこそこ良いやつ使ったから、これくらいにはなるけど……」


「つまり、素材の品質次第で性能がちょっと変わる?」


「うん。簡易製作でも、良素材使えば多少マシにはなる。でも、やっぱり限界がある。店売りと大して変わらない」


もう一つ、今度はNPCショップの画面が表示された。


■ アイアンショートソード(店売り)

耐久:28/28

攻撃補正:ATK+30

命中補正:DEX+15

追加効果:なし


「ほら。正直、簡易製作も店売りも“似たり寄ったり”って感じだな」


「ふーん……じゃあ、本格的に作るとどうなるの?」


「“手動鍛造”なら、火加減や打撃タイミングを調整できるから、補正ががっつりつく。ATK+100とか、命中率アップ、素材によっては状態異常付与なんてのもある」


「え、それって凄くない?」


「すごいけど、むずい。俺には無理。でも、お前みたいなリアル鍛冶スキル持ってるやつならワンチャンあるって」


「うーん……それ、僕がやるしかないじゃん」


「だよな? しかも今、服飾職の職人は育ってきてて、DEX+100の服とかスキル補正付きの帽子とか出回ってるけど、武器はほんとに手薄。全然いいのがない」


「つまり武器は穴場ってことか……」


「ま、それでも折れた装備はお店で修理すれば使えるよ。耐久がゼロになっても完全に壊れるわけじゃない」


「それなら別にいいんじゃ――」


「って思うだろ? 修理は回数重ねると費用がかさんでくるんだよ……! 毎回数千ルクとか取られてたら、マジで金が溶ける」


「素材も金も尽きてくるし、強化も中途半端。だから俺はもう諦める。お前みたいな鍛冶バカに任せたわ」


「そこは“修行中の鍛冶師”に任せてよ、経験積むにも持って来いじゃん。」

(ゲームの中なら――僕でも“刀”が打てるってことだよね)


――――――――――――――――――――――――――――――――

初投稿です。拙い文ですが、温かい目で見守ってくれると幸いです。


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